第10話 見せねーつってんだろ
「ず~とつけられてましたよ」
勢いをつけてハイ=ルミナは背後を向く。
「なんで⁉ あなたたちなにしたの⁉」
しかし彼女の目では何者もみつけられない。
「なにかしたのは『ハイ=ルミナ』だが」
「え⁉ ハイは聞いてないよ⁉」
「おや? 記憶の共有は出来ないのかね?」
「『ハイ=ルミナ』がいやがる記憶はね!」
重要な情報だ。ヴォワはきちんと脳にそれをメモしておいた。
「そうか。めんどうだな。
まあいい。てきとうに走り回って家へ行くよ」
「走――って、速いわよ二人とも! 脚もつれそう!」
「でわでわこうしましょう」
「うひゃ⁉」
強くハイ=ルミナの手を引っ張るエアラリス。彼女の足元を払って体を浮かせ、お姫さま抱っこ。
「恥ずかしいんだけど!」
「わたしとてこの二の腕はヴォワさまのためにあるのです! それをガマンしているのだからあなたもガマンしてくださいな!」
「――て言うかハイを見はっているならどうせ家にも警察いるんじゃないの⁉」
「いるだろうね」
あっけらかんと言ってのけられた。だからハイ=ルミナは、
「意味ないじゃない!」
精一杯の大声で反応する。
「いや、私がいるかぎり邪魔をしに家へは入ってこない。込み入った話をしたいからそれでいいのだが、家路の時間も有効に使いたいのでね」
「あ、ヴォワさま、こそこそしてた人たちいなくなりましたよ」
「そうみたいだね」
走るスピードが落ちていく。全速力から人並みになって、徐行状態になり、普通に歩きだした。
「……二人とも、息一つ乱れてないのね」
「いいかね? 速い人間と言うものは二つのタイプに分けられる。
一つ、筋肉バカ。
一つ、賢く体をしならせるもの。
後者が私たちだ。
頭で体を使えばこれくらいの速度は出せるよ」
「マジで? 教えて、教えなさい、ご教授を」
「命令からお願いになったな。
まあまず、エアラリス、おろしていいよ」
「は~い」
パッとハイ=ルミナを抱えていた手をはなす。ハイ=ルミナは落下する――と思われたけれど。
「よ」
予想していたのかエアラリスの首に腕をまきつけてきちんと足から着地した。
「わたしヴォワさま以外に抱きつかれたくないんですけど」
「だったら落とさないでくれる?」
ハイの勝ちね、とドヤ顔。するりと腕をはなして二・三服を叩きしわを伸ばす。
「では、帰るとするか」
「走り方は?」
「交換条件がある」
「交換?」
ヴォワの顔を覗き込むハイ=ルミナ。しかしエアラリスに押し戻された。
「キミの作品の造り方に興味がある。それを見せてくれたら教えるよ」
「じゃあいいや」
今度はヴォワの顔から視線を外す。
「見せたくないんですか?」
「見せたくないの」
自分の秘密――多重人格――をさらすヒントになるから。
「どうして? お弟子さんは?」
と、エアラリス。
「いないわよそんなの。あ、例外が一人いたっけ。それはまあともかく、基本教えない。ハイの造り方は変わってるから誰もまねできないもの」
「だからこそ興味があるのだが」
「見せねーつってんだろ」




