表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/35

第九話「救済ナリ? ならばキサマが地獄ナリ!!!」



※この物語は異端審問を皮肉ったフィクションです。

特定の宗教団体や歴史上の出来事を指してはいません。

すべてはナリ助とリズナがやらかした妄想と暴走の産物です。


「ワガハイは異端審問官ナリ助ナリ!!!!」


今日は、扉ではなく窓から突入した。

ナリ助が焼きごてを片手に、ステンドグラスを突き破って華麗に登場。

教会の床には割れたガラスが散らばり、信者たちは悲鳴を上げる。


「おいコラ!! 誰ナリ!? 誰がワガハイの焼きごてを欲しがってるナリか!?

誰が“神の名の下”にエラそうにしてるナリか!!!」


「おやおや……」


上品な声が響いた。

ステンドグラスの破片の中、まるで何事もなかったかのように、

黒髪の美しき悪魔――リズナが優雅に登場する。


「ナリ助、ずいぶんとご機嫌が悪いようね。」


「今日は特別に虫の居所が最悪ナリ!!!!」


ナリ助が叫び、焼きごてを床に叩きつける。

ジュウウウウウッッ!!と床に焼き焦げた跡が浮かび上がる。


「誰でもいいから、今すぐ異端者を出すナリ!!!」



【異端審問開始】


「……ワタシが“救済の預言者”です。」


そう名乗り出たのは、救世主を気取った詐欺師だった。

法衣に身を包み、口元には薄っすらと笑みを浮かべている。


「ワタシの言葉は神の啓示……

ワタシに触れれば、罪は清められ、魂は救われるのです。」


「……ふぅ〜〜〜ん?」


ナリ助は焼きごてをポンポンと自分の掌で叩いた。


「つまりキサマは、“人に触れるだけ”で救えるナリか?」


「その通りです。」


「ふぅ〜〜〜ん……」


ナリ助は笑った。

だが、ナリ助の笑みは“機嫌が悪い”ときの最凶モードだった。


「じゃあ……」


ナリ助は、焼きごてを詐欺師の腕に突きつける。


「ワガハイがコレを押しつけても、救済できるナリ?」


「な、何をするつもりだ!!!」


「だってナリ? キサマは“救える”って言ったナリ!?」


ナリ助の目がギラギラと輝き、唇が狂気じみた笑みに歪む。


「ワガハイがキサマに焼きごてを押しつける……

そしたらキサマは、“痛み”を救えるナリよね?」


「そ、それは……!」


「もしキサマが苦しんだら、

それはキサマ自身が“救えない”証拠ナリ!!!」


「や、やめろ!!!」


「やめないナリ!!!!!」


ジュウウウウウウウウウッッ!!!!


焼きごてが、詐欺師の腕に押しつけられる。


「ぎゃああああああ!!!!!!!」


「痛いナリか!? ならば叫ぶナリ!!!!

これが“神の愛”ナリ!!!!!」


「た、助け……」


「助け?」


ナリ助が焼きごてをポンポンと叩きながら、顔を近づける。


「キサマがさっき言ったナリよね?

"苦しみの中でこそ、人は救われる”ってナリ?」


「そ、それは……」


「ならばキサマは今、最も救われているナリ!!!」


「う、うわあああああ!!」


「痛みが“救済”なら、もっと救ってやるナリ!!!」




「ちょっと待って。」


そこへ、リズナがスッと現れた。


「ナリ助、焼きごてだけじゃつまらないわ。」


「なんナリ!? これ以上、何をやるナリ!!」


リズナは、焼きごての赤々とした先を指で撫でる。

その目は、冷たくも残酷に光っていた。


「この男、“救済”が商売道具なのよね?」


「そうナリ。 “苦しみが救い”とか言ってるナリ!」


「だったら……」


リズナは微笑んだ。


「“地獄”にしてやればいいじゃない。」


「地獄ナリ?」


「ええ。

苦しみが救いなら、もっと苦しませれば“もっと救われる”わよね?」


ナリ助の目がさらに輝いた。


「……そ、それは面白いナリ!!!」





【地獄審問】


「さあ、ナリ助……」


リズナは教会の床にチョークで円を描き、その中に倒れ込んでいる詐欺師を転がした。


「この円の中を、永遠に歩かせるのよ。」


「おぉぉぉ!??」


「逃げたら焼きごて、止まったら焼きごて。

“永遠の苦しみ”を与えてやればいいわ。」


「それは……」


「“救い”は苦しみの中にあるんでしょう?

だったら……キサマは地獄の中でこそ、完璧に救われるナリ!!!!!」





ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!


「ぎゃああああああ!!!!!」


「止まるなナリ!!!!!」


ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!


「うわああああああ!!!!」


「逃げるなナリ!!!!!」


ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!


「助けてくれええええええ!!!!!」


「これが“救い”ナリ!!!!!」




翌朝、教会の壁には焼きごてで刻まれた文字が残されていた。


「苦しみが救いなら、地獄こそ楽園ナリ」


詐欺師は、皮膚の至るところに焼き印を刻まれ、

目はうつろに、ただ地面に指で円を描き続けていた。


「ナリ助、今日は満足した?」


「うん……今日は楽しかったナリ!!!!」


「よかったわ。」


リズナは笑い、焼きごてを振りかざした。


「次はどんな“救済者”を、アートにしようかしら?」


ナリ助とリズナの狂った審問は、今日も止まらない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ