第九話「救済ナリ? ならばキサマが地獄ナリ!!!」
※この物語は異端審問を皮肉ったフィクションです。
特定の宗教団体や歴史上の出来事を指してはいません。
すべてはナリ助とリズナがやらかした妄想と暴走の産物です。
「ワガハイは異端審問官ナリ助ナリ!!!!」
今日は、扉ではなく窓から突入した。
ナリ助が焼きごてを片手に、ステンドグラスを突き破って華麗に登場。
教会の床には割れたガラスが散らばり、信者たちは悲鳴を上げる。
「おいコラ!! 誰ナリ!? 誰がワガハイの焼きごてを欲しがってるナリか!?
誰が“神の名の下”にエラそうにしてるナリか!!!」
「おやおや……」
上品な声が響いた。
ステンドグラスの破片の中、まるで何事もなかったかのように、
黒髪の美しき悪魔――リズナが優雅に登場する。
「ナリ助、ずいぶんとご機嫌が悪いようね。」
「今日は特別に虫の居所が最悪ナリ!!!!」
ナリ助が叫び、焼きごてを床に叩きつける。
ジュウウウウウッッ!!と床に焼き焦げた跡が浮かび上がる。
「誰でもいいから、今すぐ異端者を出すナリ!!!」
【異端審問開始】
「……ワタシが“救済の預言者”です。」
そう名乗り出たのは、救世主を気取った詐欺師だった。
法衣に身を包み、口元には薄っすらと笑みを浮かべている。
「ワタシの言葉は神の啓示……
ワタシに触れれば、罪は清められ、魂は救われるのです。」
「……ふぅ〜〜〜ん?」
ナリ助は焼きごてをポンポンと自分の掌で叩いた。
「つまりキサマは、“人に触れるだけ”で救えるナリか?」
「その通りです。」
「ふぅ〜〜〜ん……」
ナリ助は笑った。
だが、ナリ助の笑みは“機嫌が悪い”ときの最凶モードだった。
「じゃあ……」
ナリ助は、焼きごてを詐欺師の腕に突きつける。
「ワガハイがコレを押しつけても、救済できるナリ?」
「な、何をするつもりだ!!!」
「だってナリ? キサマは“救える”って言ったナリ!?」
ナリ助の目がギラギラと輝き、唇が狂気じみた笑みに歪む。
「ワガハイがキサマに焼きごてを押しつける……
そしたらキサマは、“痛み”を救えるナリよね?」
「そ、それは……!」
「もしキサマが苦しんだら、
それはキサマ自身が“救えない”証拠ナリ!!!」
「や、やめろ!!!」
「やめないナリ!!!!!」
ジュウウウウウウウウウッッ!!!!
焼きごてが、詐欺師の腕に押しつけられる。
「ぎゃああああああ!!!!!!!」
「痛いナリか!? ならば叫ぶナリ!!!!
これが“神の愛”ナリ!!!!!」
「た、助け……」
「助け?」
ナリ助が焼きごてをポンポンと叩きながら、顔を近づける。
「キサマがさっき言ったナリよね?
"苦しみの中でこそ、人は救われる”ってナリ?」
「そ、それは……」
「ならばキサマは今、最も救われているナリ!!!」
「う、うわあああああ!!」
「痛みが“救済”なら、もっと救ってやるナリ!!!」
「ちょっと待って。」
そこへ、リズナがスッと現れた。
「ナリ助、焼きごてだけじゃつまらないわ。」
「なんナリ!? これ以上、何をやるナリ!!」
リズナは、焼きごての赤々とした先を指で撫でる。
その目は、冷たくも残酷に光っていた。
「この男、“救済”が商売道具なのよね?」
「そうナリ。 “苦しみが救い”とか言ってるナリ!」
「だったら……」
リズナは微笑んだ。
「“地獄”にしてやればいいじゃない。」
「地獄ナリ?」
「ええ。
苦しみが救いなら、もっと苦しませれば“もっと救われる”わよね?」
ナリ助の目がさらに輝いた。
「……そ、それは面白いナリ!!!」
【地獄審問】
「さあ、ナリ助……」
リズナは教会の床にチョークで円を描き、その中に倒れ込んでいる詐欺師を転がした。
「この円の中を、永遠に歩かせるのよ。」
「おぉぉぉ!??」
「逃げたら焼きごて、止まったら焼きごて。
“永遠の苦しみ”を与えてやればいいわ。」
「それは……」
「“救い”は苦しみの中にあるんでしょう?
だったら……キサマは地獄の中でこそ、完璧に救われるナリ!!!!!」
ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!
「ぎゃああああああ!!!!!」
「止まるなナリ!!!!!」
ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!
「うわああああああ!!!!」
「逃げるなナリ!!!!!」
ジュウウウウウウウウウウッッ!!!!
「助けてくれええええええ!!!!!」
「これが“救い”ナリ!!!!!」
翌朝、教会の壁には焼きごてで刻まれた文字が残されていた。
「苦しみが救いなら、地獄こそ楽園ナリ」
詐欺師は、皮膚の至るところに焼き印を刻まれ、
目はうつろに、ただ地面に指で円を描き続けていた。
「ナリ助、今日は満足した?」
「うん……今日は楽しかったナリ!!!!」
「よかったわ。」
リズナは笑い、焼きごてを振りかざした。
「次はどんな“救済者”を、アートにしようかしら?」
ナリ助とリズナの狂った審問は、今日も止まらない。