表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/35

第三話「魔女の罪は“美しさ”ナリ!?」

※この物語は異端審問を皮肉ったフィクションです。

特定の宗教団体や歴史上の出来事を指してはいません。

すべてはナリ助がやらかした妄想と暴走の産物です。

「ワガハイは異端審問官ナリ助ナリ!!!」


審問所の扉が爆風のごとく吹き飛び、ナリ助が現れた。


フリフリの法衣は煤で汚れ、焼きごてからは血のような煙が漂っていた。

その目はギラギラと燃え上がり、口元は凶暴な笑みに引きつっている。


「異端者はどこナリ!?」


村人たちが息を呑む中、ひとりの美しい女が連れ出された。

金の髪は陽光を浴びて輝き、透き通るような白い肌はまるで陶器のよう。


「ふむ……」


ナリ助は目を細め、女の顔をじっくりと眺めた。


「……魔女ナリな。」


「な、何で!? まだ何も言ってないのに!」


「その顔ナリ!!! その目の輝きナリ!! その肌の艶ナリ!!

“美しさ”とは、他人の心を狂わせる毒ナリ!!」


「そんなの嫉妬じゃないですか!」


「嫉妬も立派な正義ナリ!!!!」


バチィィィィン!!!


ナリ助の鞭が床を叩き、石畳が砕け散った。


「キサマのせいで、村の男どもはキサマの顔を求めて群がり、

村の女どもは、鏡の前で涙を流したナリ……

つまり、キサマは罪人ナリ!!!!」


「そ、そんなの無理があるわ!」


「無理じゃないナリ!!!!!」


ナリ助の目がギラリと光り、声が低くなった。

――スイッチが入った。


「……さて、証拠を見せてもらうナリ……」




【翌日】


審問所の広間に、村人たちが集められた。


「さて……」


ナリ助は、観衆を見渡し、静かに告げた。


「今から、ワガハイが“魔女”の正体を暴くナリ……」


ナリ助は、奇妙な人形を掲げた。

その人形の顔は――


「……ワ、ワタシ!?!?!?!」


「そうナリ!!」


ナリ助は鋭く叫んだ。


「この人形に触った者は呪われるナリ!

呪いにかかった者こそが、“魔女”に取り憑かれた証拠ナリ!!」


人形は次々と村人に渡された。

しかし――


「……なんともないぞ」

「普通の人形じゃないか」


だが、最後に人形が渡された瞬間――


「ギャアアアアアアア!!!!」


突如、例の意地悪そうな中年女が転がり、喚き散らした。


「ほ、ほら見ろぉぉ!! これが魔女の呪いよぉぉ!!」


「……」


ナリ助は、静かにその女の元に近づいた。


「……ふむ……」


「な、何よ……?」


ナリ助の口元が裂けるように歪む。


「キサマが黒幕ナリ……」


「な、何を言うのよ!? ワタシは正義の告発者よ!!」


「……違うナリ。」


ナリ助は人形を引き裂いた。

中から、くしゃくしゃになった手紙が落ちる。


「男どもがあの女に夢中だ。あの女を魔女に仕立て上げて追い出してやる」


「……あれれ〜〜?」


ナリ助は不気味に笑いながら、紙をひらひらと掲げた。


「キサマの“正義”とは……

“無様なプライド”の別名ナリ!!!!!」


「ち、違う! あの女が美人だから……!」


「ほう……」


ナリ助は焼きごてを掲げ、静かに笑った。


「ならば問うナリ……」


声は冷え切り、ナリ助の目は狂気に燃えていた。


「“美しい”とは何ナリ?

キサマの言う“美しさ”が罪なら……

醜さは正義ナリか!?」


「そ、そんな理屈が……!」


「ならば言おうナリ!」


ナリ助の声が広間に響く。


「“美しさ”とは何ナリか!?

目に見えるものナリか!? ならば、目が見えない者は罪から免れるナリか!?


“美しい”とは感じるものナリか!? ならば、感じる心を持つ者が罪人ナリか!?


ならば、この世界は“罪”に溢れた地獄ナリ!!!」


「や、やめてぇぇぇぇぇ!!!」


「キサマの言う“正義”とは、自分の憎しみを飾るための衣装ナリ!!!」


ジュウウウウウウウウ!!!


焼きごてが床に押しつけられ、焦げた文字が浮かび上がった。


「嫉妬こそが魔女ナリ」


ナリ助は焼きごてを肩に乗せ、村人たちを見渡した。


「聞けナリ……

“異端”とは、信じられぬものではなく、理解できぬものナリ!!」




翌朝、村の壁には焼きごてで刻まれた文字が残されていた。


「正義を信じるバカは焼き尽くすナリ」


ナリ助の狂った審問は、今日も止まらない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ