93 ただのおじいちゃん
可愛い双子ちゃんとお勉強をしながら過ごす午後。私の服装にも馴れて来たのかチラチラとした視線が無くなり、双子は勉強に精を出し始めた頃に外から凄まじい轟音が響いて来た。
「「ッ!?」」
「…」
双子が驚き。私は何となく何が起こったのかを察した。
「貴方達は此処で勉強を続けていて、私が様子を見てくるから」
双子は無言でこくこくと首を縦に振り返事をした。素直な双子に微笑み私は外套を羽織り外へと向かう。
流石に下着とシャツだけの格好で外に出る勇気は私にはない。
外套を着て、下は下着とシャツ。露出狂の様な格好をしている様な気がしたが、考えまい。
私と双子が居た建物から少し離れた場所でゴマンが居た。そして…
複数の建物と共に倒れるトルケンの姿も視えた。
ゴマンは拳を振り上げてトルケンへと歩み寄ろうとしていた。トルケンはゴマンの姿を見て怯えながらも必至に言葉を紡いでいた。
「ゴマン様!あれはお嬢からお願いされて仕方無くしたんです!」
「関係あるかっ!貴様がそんな軟弱な魔法を使うとは許せんっ!此処で鍛え治してやるわ!歯を食いしばれ!」
ゴマンは拳を下ろさずにトルケンへと近づく。トルケンはそのゴマンの形相に無理無理と言わんばかりに首を振っていた。
私はトルケンの情けない姿を見兼ねて助ける事にした。
「何をしているのですか?トルケン大爺様」
「ん?ソフィか!この軟弱者を鍛え直すところじゃ!」
「お嬢助けて下さい!俺、殺されますぅ…」
今にも泣きそうな顔でトルケンが助けを求めが、ゴマンはそんなトルケンに更に怒りを爆発させた。
「貴様ッ!魔族のクセに我がひ孫にも助けを求めるかッ!わしの部下としての誇りが無いのか?」
「ひぃッ!」
コントの様なやり取り。
私は助けようとした過去に戻りたい気分になりながらも言葉を吐いた。
「大爺様…トルケンが何をしたんですか?」
「このバカはお前と合魔を使ったと吐きおった!魔族が合魔など許さんッ!合魔は軟弱者の技じゃ!わしの部下にそんな軟弱者は要らん!」
ゴマンは震える拳でトルケン殴ろうとする。だから私は…
「ひぐ、お、大爺様…私の事嫌いに成らないで下さい…」
私は泣いた。正確にはウソ泣きだが。
「なっ、!違うぞソフィ。わしはお前を嫌いに成ってないぞ?」
「でも、さっき。合魔を使う者は要らないって…だから私…」
「いや、違うんじゃ…」
慌てるゴマンに私は内心ほくそ笑んだ。
「でも私合魔使って…」
「嘘じゃ!わしはトルケンと遊んでいただけなのじゃよ!な!」
トルケンに振り向きゴマンは凄まじい眼力を向ける。
「そ、そうですよお嬢!ゴマン様はお嬢にドッキリをしただけです!」
ゴマンの言葉に同意するトルケン。
私は泣き腫らした目でゴマンを上目使いで見た。
「本当ですか?」
「うむ、本当じゃ!」
「合魔使った私やトルケンを嫌いに成ってませんか?」
「ん、そうじゃ!嫌いに成っていない。」
ゴマンはトルケンを見ながらどうにか言葉を絞り出していた。
私は表情を一転させゴマンへと近づき抱きついた。
「よかったぁー!大爺様に嫌われてなくて!」
「わしがソフィを嫌いになぞならん。」
私はゴマンに抱きつき、ゴマンの後ろにいるトルケンへとウィンクをして借りを返した事を伝えた。
トルケンはそれを見て両手を合わせて感謝していた。