90 適正内魔法
ぽかぽかと温かいお湯に浸かりながら私は入浴の気持ち良さに目を細めていた。
現在私はファルセット王国の首都の一部にある空き家で入浴を楽しんでいた。
空き家と言ってるが、本当の空き家とは言えないだろう。戦争が始まり、首都が侵攻対象に選ばれた為、壁近くの人族は首都の中心へと集められているのだとか。
何故私がそんな情報を知っているのか、それはゴマンの部下に千里の魔眼を持った者が居たからである。
千里の魔眼はその名の通り、千里眼を扱える様になる魔眼だ。本人曰く、上から見渡す事が出来て壁などの障害物など意味を成さない。との事。森や家の中に居る物を覗く事は出来ないらしい。
そんな魔眼持ちが居たお陰で、私達魔族軍はファルセット国民の行くへを知ることが出来ていた。
入浴を楽しみ綺麗に成った身体を見る。
魔法がある世界だから戦時中でも入浴できると思ったが、そうはいかない。
魔法使いに頼んだら水や火は幾らでも出るだろう。だが、お風呂に必要なのは水、火、浴槽を作る為の土がいる。
この世界の魔法使いは属性を一つしか使えない。もっと詳しく言うと、ショボい魔法なら適正外の魔法でも使えるが。戦闘や便利な魔法は適正内の魔法でしか使えない。それがこの世界の魔法のルールである。
適正内魔法を使うと、何故か適正外魔法が使えなく成って行くのだ。
話は入浴問題に戻るのだが、もしも野外で入浴をしようとすると。3人の魔法使いが必要と成る。
例外として2属性以上の魔法を使える者もいるが、かなりレアケースである。
そんなこんなで戦時は入浴が難しく、平和な時代に暮らしていた前世を持つ私としては、かなり耐え難い日々を過ごしていた訳である。