80 対策
フォットリンは【炎珠色法】で起こっている爆発を眺めていた。
【炎珠色法】は珠々状に成った炎が代わる代わるに爆発を起こし、長期的で高威力の爆発を続ける魔法である。珠が爆発を終えると別の珠が爆発を起こし、爆発終えた珠が魔力を魔法使いから補充して、また爆発を繰り返す。だが、この魔法にも弱点はあり、珠が魔力補充をして爆発を起こすと、それは前回よりも弱い物になる。何度も繰り返す度に威力は弱まり、魔力に見合った威力が出せなくなる。
フォットリンは【炎珠色法】が威力が目に見えて落ちてる事に気付いていた。
「ふむ、そろそろな筈じゃがな…」
フォットリンの呟きと同時に爆煙の中から魔族が飛び出して来る。まだ幼さが残る顔で顰めっ面を浮かべ、全力でフォットリンへと向かって来ていた。
フォットリンとソフィリスの目が合い、フォットリンが笑った。
次の瞬間。ソフィリスが踏み込む地面が爆発した。
爆発と共に炎の柱が上がりソフィリスを呑み込む。その様子にフォットリンは予想通りと口の端を持ち上げた。
「魔法使いだから近づいたら勝てるとでも思ったのか?ふぉふぉふぉ浅い考えだのぉ。」
フォットリンは対策を立てていた。フォットリンは熟練の魔法使いで歳もそれなりに重ねている。勿論その分実戦経験を重ねている。だから予測出来たのは当然だった。
だが、爆煙からもう1人出てきた時には虚を突かれた。
出てきたのはダークエルフ、ラズだった。
虚を突いた一瞬を狙いラズは折りたたみ式の弓を展開した。フォットリンはラズの弓を見て我に返り魔法で迎撃を試みる。
だが、魔法よりラズの弓に矢を番える方が早かった。矢は全てが鉄で出来た特別製である。普通のエルフなら引く事など出来ない鉄の弦に指を掛ける。ダークエルフだから引ける特別な弦がギギギと音を立てる。
フォットリンは間に合わ無いことを悟り、魔法を攻撃から守りへと変えた。ラズの指が弦を離す。同時、ピュンッと矢とは思えない音が空気を震わせた。その矢には魔法が掛かっていた。風の魔法。
下級魔法【導】
風に乗り矢が必中の能力を手に入れる。
フォットリンは風魔法と弓のシナジーを知っていた。風魔法は投擲物と相性がよい。軽い物なら簡単に誘導できる。それが重い物に変わってもそれなりの魔法使いか人数を揃えたら簡単に誘導、もしくは逸らす事すら容易だ。だからフォットリンはラズの弓を見て直ぐに魔法を発動を急いだ。相手に矢を撃たせない為に。それができないなら、せめて魔法で守りを固める為に。
下級魔法【火壁】
灼熱の炎の壁が矢の進路を防ぐ。
絶妙なタイミングと場所により矢を曲げれない様に調整した魔法。フォットリンだからできる芸当だ。
ラズの放った矢が溶かされてしまう。フォットリンはラズの矢を防いだ事を確認して魔法を放つ。
上級魔法【燕火】
炎が鳥の形を取りラズへと飛翔する。
ラズは矢で鳥を撃ち抜くが、次々と生成され飛翔する鳥に段々と追い詰められる。
そして、
撃ち漏らした鳥がラズの懐へと入り爆発した。その後も何匹物鳥が爆発元へと殺到して、更なる爆発を起こす。
フォットリンはその様子に勝ちを確信した。
「ッんぐ!?」
胸に鋭い痛みと焼ける様な感覚が広がる。フォットリンは視線を落とし、自分の胸へと向ける。
そこには剣の刃が生えていた。