79 勝機
【炎珠色法】がラズとソフィリスの【圧波】を受け爆発した。
熱と爆風、砂塵が飛び散り戦場へと凄まじい衝撃波伝えた。
衝撃波は戦場側だけに伝わっていた。壁側には被害は出ていない。それはフォットリンが緻密な魔力制御を行える人物で、相当な実力者だと言える物だった。
事実フォットリンはラズとソフィリスの魔法ですら魔法制御を乱す事は出来ずにいた。
熱波と爆風に煽られながらラズとソフィリスは全力で魔法を行使していた。
ラズとソフィリスの周りには熱波と爆風を防ぐ為の風の防壁が張られている。少しでも気を抜けば壊れてしまいそうな心許無い防壁だ。だけど、それでも、耐えていた。
「なんて威力だ!」
ラズが相手の魔法への感想を吐く。ソフィリスも同感だったが、同意する言葉すら吐けない程にソフィリスは集中していた。もしも、少しでも集中を乱せば防壁は簡単に崩れ去りソフィリス達は熱波により身体を焼かれ、爆風にそこら辺を転がり挽肉なるだろう。そんな想像を容易く思い浮かぶ程の威力がある魔法だった。
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どれ程の時間が経ったか分からない中、ラズがソフィリスへと提案した。
「ソフィリス様。爆風がかなり弱まって来ました。そこで提案なのですが…」
ソフィリスも魔法の威力が弱まっているのに気が付いていた。そして、ソフィリスはラズの提案に興味を持った。
フォットリンの魔法が弱まっている事でソフィリスも喋れるぐらいには余裕が出ていた。
「それで?その提案って何?」
ラズはソフィリスの返事に答えた。
「相手は魔法使いです。そして、魔法の技量は私やソフィリス様より上だと見えます。」
ソフィリスもラズの意見に同意した。ソフィリスから見てもフォットリンはラズやソフィリスよりも格上だとわかっていた。
「ですが、相手は魔法使い。ソフィリス様の様に魔法戦士とは違い近接が苦手と視えます。そこで、左右に別れてこの爆風の中から奇襲を行いましょう。」
ラズの言葉にソフィリスは目を剥く。正気を疑う目だ。だが、ラズは正気だと言わんばかりの目でソフィリスを見つめ返す。
ソフィリスは思案する。威力が弱まっているこの爆風なら歩けるし、熱波も防げる。それがソフィリス1人でも。
だが途中で魔法が消えた場合、ソフィリスとラズの距離が離される事になる。相手は純粋な魔法使いで格上。魔法戦ならラズですら勝てないと思うぐらいには強い。そんな相手から魔法を浴びせられたら1人で防ぐ自信なんて無い。だからと言ってこの儘と言う訳には行かない。
だからソフィリスはラズの提案を呑んだ。呑むしか無かった。