77 擦り付け
ドンタは私を訝しみのある視線で見てくる。私が魔族軍の将軍のひ孫と聞いてドンタはそれを信じていない様子だ。
「変なハッタリって訳じゃなさそうだな…」
ドンタは私から視線を外し、トルケンとラズへと視線を向けた。トルケンはドンタの言葉に不愉快そうな顔をしている。ラズは真剣な表情でドンタを警戒していた。
「ねぇ?ラズ。ラズならアイツに勝てそう?」
私はラズの近くに寄り、ラズのドンタへの評価を聞いてみた。ラズは少し険しい顔になりながらも、素直な評価を教えてくれた。
「…難しいですね。あの男は魔法への耐性がかなり高い様に視えます。魔法メインの戦士な私が勝てる確率はかなり低いです。足止め程度なら何とかって所です。」
私は「成る程」と頷き。ラズへともう一度質問をした。
「トルケンなら勝てると思う?」
「トルケン様なら勝てると思います。トルケン様は魔法と肉体を両方共を満遍なく鍛えてる戦士です。それに、トルケン様の魔法の適性属性は炎です。炎の魔法は殺傷力が高いですからあの男の魔法耐性を突破できるでしょう。」
ラズの言葉に私は感動した。
私が無理に戦わなくて済むかも知れない可能性に。
今のトルケンは機嫌が悪い。なぜなら、トルケンはドンタに私を馬鹿にされているからだ。それにトルケンが仕える将軍のひ孫が疑われている。この儘私が馬鹿にされ続けられたら、トルケンが怒りドンタを殺してくれるかもしれない。
私は内心ほくそ笑んだ。
「そうよ!私はゴマン・ブラドのひ孫で次期将軍に成る、ソフィリス・ブラドよ!」
私はトルケンが言った事を真実だと言わんばかりに名乗った。これでドンタが私に挑発を挑発してくれば…
「ハッ!テメェがぁ将軍のひ孫だと?冗談も休み休み言えや!それとも将軍の血筋はこんな雑魚でも将軍に成れる程に子宝に恵まれなかったのかぁ?」
ドンタは私の望み通り。いや、それ以上に私を馬鹿にした。それどころか私の家まで馬鹿にしてきたぞ。
少し私もキレそうに成ったが我慢する。
横目でトルケンの顔を盗み見る。
トルケンの顔はいつものヘラヘラした顔が嘘の様に、顔を憤怒の表情に染めていた。
「人族…吐いた言葉は戻せないぞ?将軍様とその一族を馬鹿にした言葉。万死に値する!四肢を切り刻み犬の餌にしてくれる。」
トルケンとドンタが臨戦体勢を取る。
トルケンは腰から折りたたみ式の槍を展開して構える。ドンタは大剣を顔前へと持ち上げた。そんな中…
「先程の話し聞かせて貰ったぞ!」
壁から声がした。私とラズは声の方向へと顔を向ける。そこからは白い髭を三つ編みにした老人が降って来ていた。