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第21話 魔剣の能力

「よし、じゃあ早速魔剣を使ってみよーう!」

「「おーう…」」


 こんな時だというのに、何故リリスはこんなにも楽しそうなのだろうか。いや、こんな時だからこそ彼女はそう振る舞っているのか。

 魔剣を渡された俺は、早速城の外にある訓練場で試し斬りをすることになった。ついでに葉紀さんも来ている。

 目の前には土で出来た案山子かかしのような物があるが、こういうのを使って兵士たちが訓練しているのをアニメで観たことがある。

 リリスはそれを指差し、俺に指示する。


「じゃあリョータ、とりあえず斬ってみて」

「お、おう…」


 この魔剣を渡されてから初めて抜刀したが、刀身まで赤色になってるんだな…。一応ステータスを確認するか。


名前:魔剣『ヴァーミル』 重量:38 能力:『???』


 一番重要であろう能力の欄が『???』で伏せられている。

(まぁ剣は能力よりも切れ味と耐久性か)

 案山子が横半分になるように剣を振る。


「…お、かなり切れ味が良いな。軽いし使いやすいかも」


『お見事です』と後ろで葉紀さんが、ぱちぱちと拍手する。しかし、この結果に不満があったのか、リリスが問い掛ける。


「えっと……それだけ?魔剣にはそれぞれ個性と言うか、能力みたいなのがあるんだけど…」

「あー、ちょっと俺にはその能力が何なのか分からなくてなぁ…」

「あっ、確かお姉様も同じことを言ってもう一本の魔剣ばっかり使うようになったんだっけ…」

「え、マジかよ。出来損ないの魔剣…?」

(とは言っても、見えないだけでステータスにはちゃんと表示されてるんだよな…。何か能力を解放する条件でもあるのか…?)


 分からないことをあまり深く考える気にもならず、とりあえず思い浮かんだことを試してみる。

 きっさきに親指の腹で軽く触れる。


「ちょっと、リョータ何してるの⁉︎血が出てるよ⁉︎」

「これくらい大丈夫だ」

(この前読んだラノベだと、剣に自分の血を流して能力を解放してたんだよな…)


 一滴の血を刀身に垂らすと、それはまるで吸い込まれていくかのように消えてしまった。これは成功なのだろうか。もう一度ステータスを確認する。


名前:魔剣『ヴァーミル』 重量:38 能力:残留する刃


「残留する刃……」


 次は案山子ではなく、空を斬る。アルファベットのエックスの形になるように剣を振り、鞘に収める。


「どうしたの…?」

「まあ見てろって」


 次はスキル『収納』で風呂敷を取り出し、そこに放り投げる。すると、風呂敷は俺が剣を振った時と同じ形に切り裂かれた。

 突然の出来事にリリスは目を丸くするが、葉紀さんはこれが魔剣の能力だと気付いたようだ。


「なるほど、それが魔剣の能力ですか。斬撃を罠のように仕掛けることが出来るのですね」

「そういうことだな」

「えっ、それってすごく強いんじゃないの⁉︎」


 リリスが目を輝かせる。


「いや、それはどうだろうな…。俺が予め仕掛けておいた斬撃に相手が当たりに来ないと意味が無いから、使える状況がかなり絞られている気がするな」

「そうですね。しかもそれが自分にも効果があるとなった場合、無闇に仕掛けすぎると自爆してしまいます」

「……自分にとって有利な盤面になるように相手を誘導する必要があるんだな」

「そうですね」

「ところで葉紀さんは武器は持ってないのか?」


 わざわざ訓練場にまで来たのにも関わらず、彼女は何も持っていない様子だ。ただ、葉紀さんには武器がいらないってリリスが言っていたな…。


「……武器ならありますよ。たった今、創りましたから」


 そう彼女が掲げたのは、俺が今まで使っていた剣ととても似た物だった。


「つ、創ったってもしかして…それが葉紀さんのスキルなのか⁉︎」

「はい。『武具創造』これが私のもうひとつのスキルです」


 今度は、その剣が槍に形を変えた。

 葉紀さんは、確か相手の感情が何となく分かるスキルと、この『武具創造』があるのか。対して俺は、『収納』と『スタン』……。

(……この人、強すぎじゃね?と言うか、同じ勇者なのに何でこんなにも違うんだ⁉︎)

 あまりのショックで膝から崩れ落ち、リリスが慌てふためく。


「どうしたの、リョータっ!もしかして魔剣の能力を使って具合が悪くなった⁉︎」

「……い、いや、安心してくれ。現実を見て頭が痛くなっただけだから…」

「よく分からないけど、無理しないでね。リョータたちに何かあったら僕は…」


 いつになく深刻そうな表情をするリリスの頭を撫でてやる。


「……もう、また子ども扱いして」


 そうやって不満を溢しつつも、彼女は嬉しそうに何度も尻尾を振っていた。これって、犬と同じように考えても良いものなのか?もしそうなら、心情が分かりやすくて助かるんだがな。


「別に子ども扱いしてる訳じゃないんだがな…。気に食わないならやめるよ」


 リリスの頭から手を離そうとすると、彼女がそれを掴んで止めた。


「……撫でられるのは嫌じゃないから」

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