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幻想神戦 ティアナ  作者: 川端 大夢
第一章 勇者が死んだこの世界で

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攻略 (2)

 グーパを出発して半日、アモス峠に入って、初めて視界が開けたところに広い河原が見えた。まだ所々に雪が残る峠道を、馬車五台が連なって進み、思ったより時間はかかったが、日が沈む前に着けたのだから、初日の計画として支障はない。


 河原に降りて、全員で野営の準備を始めた。川が近く水を確保でき、馬車五台の他に馬が六頭、それらを休ませながら、テントを五つ張り、なお大きなたき火がしても、十分な広さがある河原で、ここから本格的に峠が続く道中の入り口で、野営するにはもってこいの場所であった。


「さて一日目、みんなご苦労さん!まずは何事もなかったこと、そして明日からの峠越えに備えて英気を養ってくれ!乾杯!」


 一日目の道程を順調に進んで来られたことを祝した宴が夜遅くまで続いた。


 そして、二日目の朝が来た。まだ日はのぼり立てて薄暗かったが、春の日差しを感じさせる晴天に生気を吹き込まれたかのように、ぼつぼつと人が起き出し、各々身支度をして、二日目の出立の準備に取りかかったときだった。


「う゛ぁおぁぁぁ!」


 雄叫びが聞こえた峠道の方からオーク達が襲いかかってきた。河原へ降りる道から、そのまま崖になっているところを下ってくる者もいる。総勢二十匹と言ったところか?対するこちらは、すでに身支度を始めていた十数人……ではない。


 それに加えて、完全武装した二十名の精鋭騎士が馬車から飛び出してきた。一緒に馬車から降りてきたルーナが祈りを始める。


「正しきことを行わんと誓う我らに祝福を……」


 アンナ司教が王都を出立するときに譲ってもらった錫杖が、シャンと音を立てて地面を突く。瞬間、あたりに満ちていた朝の光より、さらに一段明るくなって、ブレス(祝福)で湧き上がってきた士気が、朝の眠気もけだるさももろとも吹き飛ばす。


「ぎゃぁがぁぁ!」


 崖から降りてきたオークどもからさらなる雄叫び、いやこれは悲鳴か?夜の間に仕掛けられた罠に足を止められたところに、矢を浴びせかけられたオークの断末魔が次々と上がる。


「さすがアカラ兵団御用達の弓矢。そのへんのものとは威力も精度も段違いだな。」


 馬車の屋根の上で、そんな評価を口にしながら、セロは喜々として矢を射る手を休めない。


 一方で河原へ降りてくる二本の道の一方では、馬車から降りて、馬に跨がったカイを先頭に十人ほどの兵が斬りかかる。そこにもう一方の道から、伏兵していた騎馬が十数騎、オークどもを蹴散らしながら河原に降りてくる。


 大勢は決した。そう見るやカイは峠道に駆け上がり、進路の残敵を確実に掃討しながら、引き返していく。それをセロも追う。馬車を引き連れて半日かけてきた道のりを、全力で駆け下り、峠道に入ってすぐにあった砦への分岐点までやって来た。


「オーク相手とは言え、まぁ嵌まったもんだ。」


 遅れて同じく馬に乗って追いついてきたセロは、そうカイに話しかけた。


「まだ終わってない。気を抜くな。行くぞ。」


 方向を転換して、今度は砦への道を駆け上がっていく。


「砦とはいえ、峠道や麓を監視するための望楼があるだけと聞いています。決して生活をするに適した建物ではありません。そんなところに何十匹ものオークが巣くっているからには、奴らにとって都合のいいことがあるはずです。」


 そうアインは言っていた。


 その一つが、あの野営のできる河原まで視界が開けていたこと。おそらくそこに留まった隊商なりを発見すると、夜のうちに獣道を辿って忍び寄り奇襲して、糧を得ていたのだろう。無論、守りに関しても麓から寄ってくる敵を監視もできる。

 セロにグーパに着いてから、あたりの様子を調べさせたときに、あの河原から砦の望楼が見えることを聞いたときにピンときたらしい。


 略奪や狩猟で生計を立てるオーク達のこと、おそらくは戦力の大半を、獲物への奇襲にかけてくる。そこを、罠を張って迎撃し、後詰めの騎馬兵で掃討する。あとは残りの別働隊で、数的に少なくなった砦を押さえればよい。


 実際、カイ達が砦に着いたときには、すでに事は終わって、オーク達の死体の後始末が始まっていた。

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