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幻想神戦 ティアナ  作者: 川端 大夢
第一章 勇者が死んだこの世界で
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プロローグ

 勇者は死んだ


 そんな噂が、まことしやかに大陸中に流れた。




 大陸の南の果てにそびえるバトラウト山に「魔」が降り立った。そのオストマン聖王国の大司教が受け取った神託を重く見た時の王 ペルセス二世の号令の元、王国のみならず、近隣諸国から、各地で名を馳せた冒険者たちが集まり、その中でも選りすぐった、聖王国で剣聖と謳われていた一人の剣士に聖剣と伝わる一振りを与え、これを頭目として各国からの兵も加え、その「魔」を払うために、バトラウト山に派遣して、はや半年。


 世間から「勇者の軍」と言われた者達は、その誰一人として、ペルセス二世の元に吉報を持って帰ることはなかった。代わりに、神託にあった魔が、世に蔓延ることもなかった。


 しかし、これをきっかけに、時代が動き始める。


 半年にもおよんだこの派兵のために、各地から食料などの物資をかき集めたしわ寄せで、生活が疲弊した聖王国辺境では、反乱が頻発。さらに、もともと聖王国と、友好関係がさほど深くなかった国々からは、その責任を問う声までが上がりはじめ、大陸全土に漂うきな臭さが日増しに強くなっていった。


 そうして、ついに聖王国の東、アゼル辺境伯領で、反乱を起こした民衆が辺境伯軍に勝利、聖王国からの離反を宣言し、さらに聖王国内の混乱は加速していく。


 ペルセス二世はこの鎮圧を、アゼル辺境伯に隣接する各諸侯に命じるも、その対応は王の満足にたり得るものではなく、遅々として鎮圧が進まない中、旧アゼル辺境伯領の住民は自治政府を名乗り、隣国 ハン帝国の軍事支援を取り付けてしまう。


 聖王国と帝国は、もともと敵対と言っていい関係にあった。事実、バトラウトの魔の討伐の一件でも、帝国は兵力どころか、一滴の水たりとも聖王国の提供していなかったほど露骨な反意を露わにしていた帝国であったのだが、それでも、大陸一の険しいカフス山脈の山々が両国を隔ていることが、これまでその直接的な対決をいさめていた。


 しかし、旧アゼル領という橋頭堡を帝国が得て、その大自然が作り出していた均衡は一変する。


 辺境ということもあって、手つかずの広大な領地を誇っていた旧アゼル領内に常駐させる兵力を、帝国は着々と増強し、その戦力が各近隣諸侯各個の兵では拮抗できないところまで至って、ついにペルセス二世は帝国との開戦を決断する。


 大陸で一、二を争う大国同士の激突。


 しかし、この歴史的な大戦になると思われた戦争へと舵を切ったペスセス二世が下したこの決断は、のちの人々に最悪の決断と談じられることとなる。


 そもそも肥沃で豊かな穀物を生み出す大陸最大の版図を誇っていたからこそ、聖王国は大陸の盟主と一目を置かれていたわけであって、その国を支える豊かな資源が底をつき始めた最悪の状況下で、それに拮抗する勢力であった最強の敵である帝国と戦端を開いた。難しい戦略や戦術の話ではない。

 この愚に、ついに聖王国内の燻っていた不満が爆発した。


 聖王国の北の大公 ストーリア公爵、西の大公 ルクトール公爵を中心に同盟、ここにさらに、ストーリア公爵領に隣接していた魔法大国 キリル公国の助力を得て、ペルセス二世が親征で留守にした王都を、僅か数日で電撃占領。その事実を知って、兵を帰したペルセス二世軍も、王都からの補給が立たれ、ひと月も保たずに瓦解。帝国との開戦から僅か数ヶ月で、ペルセス二世は王座から引きづり下ろされることになった。


 これを発端に、次々と勃興した国同士、諸侯同士の戦が繰り返され、頭角を現した 3 つの国が大国となり、疲弊しきって大陸全土を分け合うまで五十年の時を要することになる。


 大陸から大きな戦がなくなった大陸では、最初に中立を宣言したキリル公国が、いくつかの辺境諸侯の領土を併合してキリル連合共和国として、そして、ハン帝国でも、皇位の継承による内乱もあったものの、結局、アゼル辺境領を失いながらも存続。残りの旧聖王国領では、アゼル辺境量を取り戻し、帝国の版図拡大を阻止したとして、救国の英雄とされたエレーニア男爵を王に担ぎ上げ、エレーニア王国となり、この三つの国が大陸を分かつこととなった。


 そして、そこからまた五十年。


 結局、バトラウトの山に降り立った「魔」とは何だったのか?それは人々の中に住まう支配欲のことではなかったのか?…あの神託から百年経った今の人たちは、そう語り継いでいた。

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