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1.異世界転生

 ******************************

 スキル「紅焔の加護」を取得しました。

 ******************************


 夢を見た。

 夢の中に現れたのはあの時、病に倒れていたはずの少女だった。

 何も無い海の底のような空間で、彼女は私を抱きしめた。

 額が合うと、彼女は泡のように溶けて消えてしまった。

 彼女が私に笑いかけたような気がした。



 次に目を覚ましたとき、私は自分が砂浜に横たわっていることに気づいた。身体は重く、衣服は塩水でずっしりと重く感じられた。眩しい陽光が目を細めさせ、耳には海の波音が心地よく響いていた。目の前には青い空と広がる海、そして果てしなく続く白い砂浜が広がっていた。


 割れるような頭痛とともに、自分が何故ここにいるのか、その理由を思い出そうとした。

 しかし、記憶は断片的で、唯一鮮明なのは、皆を殺すイアの姿だけだった。

 心情は混乱と不安でいっぱいだった。

 手で砂をつかみ、それを見つめていたが、思考はまだ曖昧で混沌としていた。


(私は……生き延びたのか……)


 逃げるように飛び込んだ荒れ狂う海のイメージが頭をよぎり、その出来事はまるで夢の中で起こったかのようにも感じられた。


 立ち上がろうと試みたが、体は異常なほどに重かった。どうにか体を起こし、岸辺に座り込んで、自分の足に目をやると驚くほどにやせ細っていた。


 腕も細く、病気のように青白く変色していた。そして最も驚くべきことは、()()()()()()()()()()()()()()()()ことだった。

 唯一、母からもらったペンダントだけは首にしっかりと存在していた。


 心情を整理しようとしていると、静かな波の音と一緒に、近くから足音が近づいてくるのが聞こえた。


「お嬢様!」


 振り返ると、駆け寄ってくるのはメイド服を身にまとった同じ年頃の女性だった。

 紫の瞳と黒髪を肩に届くボブ型で整え、カチューシャを付けていた。

 彼女の顔立ちはとても整っていた。


 一瞬困惑した。このメイドの顔に見覚えがなく、自分が誰か別の人間と間違えられているのではないかと思った。


「意識がお戻りになられたのですね! よかった……」


 そのメイドは濡れた体を気にせず、私を抱きしめた。


「しかし、なぜこんなところに……」


「あなたは誰?」と声に出そうとしたが、声がかすれて出なかった。


「あ……」


 言葉にならない声を絞り出した。


 メイドは少し驚いた表情を見せた後、笑顔で言った。


「無理もありません。何年も寝たきりだったのですから。」


「ここではなんですから、さぁこちらへ。海岸から少し歩いた先に館があります。そこで落ち着いて話しましょう。」


 その言葉を聞いてさらに混乱した。

 何年も寝たきり?自分の身に何が起こったのか、一切理解できずにいた。

 このメイドが語る「何年も」の間に何があったのか、切実に知りたいと思った。


 戸惑いながらも、メイドの提案にうなずいた。立ち上がろうとしたが、足がうまく動かない。メイドがひょい、と優しく私を抱きかかえた。


 静かな林を抜け、小道を歩きながら、遠くに見えていた館に近づいていった。

 なぜかその館には親しみを感じた。


「お嬢様、こちらが私たちの住む館です。中でお話ししましょう」


 メイドが言った。私はまだ現実と記憶の狭間に立っていた。


 館の扉を開けて中に入ると、重厚な家具が配置され、暖炉からは温かな光が部屋を照らしていた。その空間は静謐で、そこにいることが不思議に思えたが、同時にどこか安心する感覚もあった。


「お嬢様、こちらにどうぞ」


 メイドが優しく誘導する。彼女に案内され、小さな部屋に入った。

 メイドはそこでクローゼットから服を取り出した。


 ベッドに腰掛け、メイドの手によって服が脱がされる。

 正面の姿見で自分の姿を目にしたときに驚愕した。やせ細った腕と足、青白い肌、くすんだ赤い瞳、そしてぼさぼさの長い銀髪。まるで別人のような自分に違和感を覚えた。


「お嬢様、どうぞおくつろぎください」


 メイドが紅茶を用意し、緊張をほぐした。窓から見える庭園と静寂に包まれた館内は、まさに異世界のようだった。


 メイドが差し出した紅茶の温かい香りが心を和ませた。一口味わうと、その優雅な味わいが私の心を包んだ。


「お嬢様、お気分はいかがですか?」


 メイドの優しい声が、静かな部屋に響いた。彼女の眼差しは心配そうにユリアーナを見つめていた。


 私はまだ混乱していたが、メイドは何も言わず再び力強く私を抱きしめてきた。


「本当によかった……ユリアーナ様……」

 メイドの目には涙が光っていた。私はまだ状況が理解できないでいた。

 ただ、このメイドが悪い人ではなさそう。ということだけはわかった。


 深呼吸をし、かすれた声で聞いた。

「あなたは……誰……?」


 メイドは一瞬言葉を失っていた。彼女の目には驚きが浮かび、深い憂慮の色が見えた。


「お嬢様……記憶が……」

 メイドの声は震えていた。

 彼女は私の顔をじっと見つめ、状態を理解しようとしているようだった。

 短い沈黙の後、メイドは優しく言葉を続けた。


「お嬢様、私はエレシアです。あなたの身の回りのお世話をさせていただいています。」

 彼女がそう言い、私の紅茶を補充している時だった。

 その瞬間、視界の端に突如として()()()()()()()()()()()()()()()()()が展開された。


 ******************************

 エレシア・クライルハート

 ******************************


 画面には彼女の名前が表示されていた。私は言葉を発することができず、ただその現象に驚愕していた。

 その物質は”まるでこの世のものとは思えないような異様な物質"で構成されふわふわと宙に浮いていた。


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