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29.たとえ世界が空から落ちても ④

「――ここ、本当に入っても大丈夫なんでしょうか?」


 少し歩いたところで恐る恐るエレシアが言った。


「やばそう……かも。明らかにこの施設の中心っぽくはあるわね――」


 ダンジョン的に言うと、明らかに"ボス部屋"――だ。

 皆の足が止まり、顔を見合わせた。


「だな。状況もわからないし一旦、他を見てからにするか」


「それが良さそうですね」


 あまりの異様な空間に、まずは他を探索した方が得策かと皆が踵を返して入り口に戻っていく。


 しかし、ヤバそうとは言ったがその実、私は引き返すことができずにいた。


「ユリアーナ、いくぞ」


 おそらく、この先には何かがある。


「おい、ユリアーナ」


「お嬢様?」


 なぜなら、さっきから頭で響く声がうるさいくらいに大きくなって、ずっと語りかけてくるのだ。


 ――私を……。


 ――おねがい。


 ――今も、私はここにいる。


 みんな、この声が聞こえていないのか?


 きっと、この先で、まだ見ぬ何かが私を呼んでいる。

 その呼び声に引かれるように足を踏み出そうとすると、

 ガガガガガッ、と。


「うわっ!」


 地響きと共に空間全体が震え、壁が崩れかける。

 なんだ?と現実に引き戻されたのもつかの間。


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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2

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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2

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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2改

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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2

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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2改

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 汎用型防衛ゴーレム零号-MX2

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 …………

 …………

 …………


 異常な数の敵が表示されていく。何だこれは、ステータス画面が遂にバグったか。

 まぁ元々訳がわからない機能だったし、と一瞬冷静になったその時、


「やばい、逃げるぞ!」


 ミカの大声に一瞬で察知した。あぁ、これはまさか。と後ろを振り返ると、

 あの倒したはずの巨大なゴーレムがまるで蘇ったかのように、数十体が整然と列を成して迫って来ていた。


「やっぱり!」


 私たちは全力で走り出した。


「逃げるぞ! 早く!」


 必死に逃げ場を求め、ガラスの通路を奥へ奥へとひた走っていく。

 振り返る必要はなかった。バキバキと、まるで道そのものが崩壊するかのような盛大な破壊音が背後から私たちを追い詰める。

 そして前方に見えたのは――


「行き止まり……」


「まじか……」


 前方に立ちはだかるのは、高くそびえる壁。


「いけるか、皆?」


「おそらく。……とはいえ、数がね」


 私たちは背水の陣を敷くしかなく、急いで戦闘準備を整えた。一刻の猶予もなく、ゴーレムの大群が目の前に姿を現した。


「やるぞ!」


 ミカが叫び、前線に立った。

 ゴーレムをばっさばっさとなぎ倒していく姿に鼓舞され、力の限り立ち回った。


「くそっ」


 この戦況、なんだかもうよくわからない。あまりにも人口密度が高すぎる。

 この過密な戦場で敵を倒してもなお、後方は無数のゴーレムで埋め尽くされていた。

 倒しても倒しても、次から次へと湧いてくる。それに一体一体がとんでもなく固く重く、押し寄せる波は止まらない。


「まるで無限湧きだな――」


 その体躯からは想像もつかないほどの素早さで動くゴーレムに翻弄される。エンジンか何かでも積んでいるかのようなスピードで猛攻を仕掛けてくる。


「こいつら……敵味方関係なく攻撃してくるぞ!とにかくよけろ!」


 ミカの声が遠くで聞こえる。

 さっきとは違う、何体か黒い色をしたゴーレムも混じっている。あいつらの強化版ってところか。

 そいつらの腹部から放たれた強力な熱線が、他の通常ゴーレムもろとも破壊していく。

 機械特有の動きだ。明らかにこちらしか狙っていない。

 やっぱり、こいつらは何者かにプログラムされている。


「ぐうっ!」


 バキィ、と。

 爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、壁に激しくぶつかった。エレシアが放ったシールドも、もはや間に合わないほどの混戦だ。

 自前の魔力壁も、衝撃の強さにビリビリと震え痛みを感じる。生身でこれを受けていたら、と考えるとぞっとする。


 立ち上がり、すぐに態勢を整え迎撃準備を――。と思った矢先。


 きらきらと、目の前に何かが降り落ちてくる。


「――ガラス?」


「皆さん、見てください!」


 行き止まりと思っていたその壁には、私がぶつかった衝撃で大きなひびが入っていた。

 壁だと思っていたそれは、巨大な液晶。

 壁全体に広がるひび割れから、バキバキと崩れ落ちる液晶の破片が床に散乱し、隠されていたその先の光景が露わになった。


 開けた空間の向こうを指差すエレシアの視線の先にあったものは。


「――女の子?」


 そこには、無数のケーブルに体を繋がれた少女の姿があった。

 台座のようなものの上で、まるで展示されているかのように眠っているその少女は空中から垂れ下がるケーブルに引っ張られるかのように、無数の照明で照らされていた。


「人間の、女の子……いや……」


 その場に呆然と立ち尽くしていたが、ミカの声が現実に引き戻す。


「ボーッとしている場合か!」


 目の前でゴーレムとミカがぶつかり激しい火花を散らす。


 女の子の声がさっきよりも鮮明に聞こえる。


 ――私を、連れていって。


最後まで読んで下さり、ありがとうございます!

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