Do you know Alice?
Do you know Alice?
私、アリス・ハルバードの朝は、一杯のモーニングティーによって始まる。
美しい真紅のドレスに着替えた私の朝ご飯は上品なサワークリームを添えたスコーンと紅茶。
鳥のさえずりを聞きながらの優雅な朝食……。
うーん、最高だわ。
そんな私の元へ、双子の妹と弟がかけてくる。
「ねーさま」
「ねーさま」
「「アリスねーさまぁ!!オハヨー」」
双子の妹と弟のサラとサナ。
二人は綺麗な赤いドレスと赤いスーツを着ている。
因みに、妹のほうがサラで弟のほうがサナ。
二人はとてもそっくりの顔で、私以外は見分けられないほどなの。
「「ねぇねぇアリスねーさま?」」
「なぁに?サラ、サナ」
「「とっても美味しそうな“パンの耳”を食べてるね。私達(僕達)にもちょーだい★」」
な、何を言い出すかと思えばこの子達は……!!
「何を言ってるの?私はスコーンを食べているのよ?」
「「じゃあ、そのドロップ飴を溶かしたジュースを頂戴」」
サラは右手を、サナは左手を差し出す。
「何を言ってるの?私がそんな貧乏臭い物を口にする訳がないじゃない」
私はあからさまに顔をしかめる。
「「でも、ねーさま……」」
「なぁに?」
「「私達(僕達)は、本当に貧乏じゃないか」」
双子のこの言葉により、私にかかっていた魔法は解けた。
真紅のドレスは、すすけた学校の赤い制服に。
鳥のさえずりはカラス達の鳴き声に。
上品な朝食は、サラとサナが言った通り、パンの耳とドロップ飴を溶かした水に成り果てた。
もちろんサラとサナの洋服も継ぎ接ぎだらけのボロい服に。
「「アリスねーさまもさぁ、いい加減現実を見ようよぉ。うちは、ド貧乏なんだよ?セレブなんて夢のまた夢さ」」
双子が深々とため息をつく。
酷いなぁ…。
夢のまた夢だからこそ、その甘い妄想を捨てきれないというのに、この双子は………!!
私は拳をついつい握りしめる。
「「アリスねーさま、私達(僕達)を怒るのはいいけど、学校に遅刻するよー?」」
双子の声で、私は改めて時計を見る。
今は午前9時。
学校に着かなくちゃ行けない時間は、9時5分。
……………。
「遅刻する~!!!!」
私はイスの隣に置いてあったカバンをひっつかむと、急いで家を出た……。
†††††††††††
「見なよ、猫。僕らの次のアリスだよ」
子供っぽい声がし、その声が嬉しそうに笑う。
「今度のアリスはいささか子供っぽいね…。あの人を好きになれるかどうか、いささか疑問だよ」
猫と呼ばれた男が返す。
「な!!!!猫、君は僕らのアリスを侮辱するのかい!?」
「そうとは言ってないだろう?落ち着いて、ネオ」
猫がネオと呼ばれた少年をたしなめる。
「じゃあどういう意味なんだい、猫。言ってごらん?」
「今回のアリスの技量を疑ってるのさ。前回のアリスは、僕らの愛に耐えきれずに死んでしまったろう?だから、アリスを心配してるのさ」
「そうか……。それは心配だよね。僕らの大切な大切なアリスが今回も自殺してしまったら、僕はショックで死んじゃうかも………」
そんなネオの肩を誰かが叩く。
「心配する方がおかしいわ。私達のアリスよ?2人も続けて自殺なんてするはずないじゃない」
その人物は、女性と断定できる甲高い声でそう言った。
「まぁ、今はとにかく、彼女を観察だよ。僕らは15年間、ずぅーっと今日という日を待ってたんだ。失敗は許せないからね」
「分かってるよ、猫。僕らはアリスが第一なんだから」
「私もよ。アリスが一番大切。アリスを一番に考えましょう」
一呼吸おいて、全員が声を合わせる。
「「「全ては、アリスの為に」」」
3人の特徴的な声が、暗闇の中に響いたー…。