霧ヶ峰蒼太、の11
カラオケ屋で一回目を覚ましたことは記憶している。
しかしそのあと何があったのかは、サッパリ思い出すことができない。
とりあえず一旦、整理しよう。
公園で、何故か僕は、安城シーナに膝枕されている。
どうしてこうなった?
いくら考えても出てくる答えはカケラも無い。
自問する。
答えが思い出せないのだから、いくら真剣に自問しようが何も出てくるはずもない。
こういう時は手っ取り早く、それとなく聞くのが早道だ。
「あの」
「なあに、そうたん」
にっこりと微笑む安城シーナの表情には一切、疑念の気配がない。そのことが、かえって僕を『そうたん』と呼ぶに至るまでの確固たるいきさつがあることを感じさせた。
いったい僕は何をしたんだろう。少なくとも、美人の太腿に頭を預けて然るべき『何か』をしたことに違いはなかった。
そういえば、と周囲に視線を走らせる。鷺たちはどこだ。朝の公園は太陽の光がさしてはいるがうすら寒く、大きな公園のわりに人影はまばらだ。早起きのスズメが何事かをさえずっていて、それがこちらに向けた好奇の声にも思えた。
「ほかの皆は?」
「とっくに解散しましたよ。今ここには、そうたんと、あたしだけ」
安城シーナがまた、今度は意味ありげに、にこりとした。
「単刀直入にお聞きするのですが」
「何ですか?そうたん」
「その、そうたんっていうのは……」
安城シーナは首を捻り、やはり笑顔でこう告げた。
あなたが自分をそう呼ぶように言ったのだけど。
「まさかお忘れではないですよね?」
早朝の空気の冷たさとは異なる、張り詰めた緊張感が発する独特の冷気が、安城シーナを中心に拡がったのを感じた。
「あ、あの」
いわゆる、身の危険、というやつだ。
「ようやく起きてくれたみたいで」
体を少しだけ動かす。
安城シーナの気配が、こちらの動きに合わせて回り込むように滑り込んでくるのがわかった。
「ええと」
「ご遺言があれば、どうぞ今のうちに」
――え?
間を置かず、僕の顔面に安城シーナの細腕から繰り出された鉄拳がめり込んだ。一見華奢に見えた彼女の拳は重く、的確に顔の中心を捉えていた。
激痛。
何で?――。
突然殴られた理由より何より、僕は何故彼女が平手ではなく、拳をこうもしっかり固めていたのか――。
また遠のいていく意識の中、僕はそっちの方がどうにも気になってしまっていた。




