図書室の噂?
学校といえば、七不思議とかさ、みんながひそひそと噂する秘密が定番なわけで。
よくあるのだと、夜に階段が増えたりだとか、トイレの一番奥の個室をノックすると……とかいったのかなあ。
やっぱり、その学校にもその手の話はあったらしい。
昼の放送で聞いたんだけど、そのうちの一つは図書室を舞台にしたものっぽかった。
「らしい」とか、「っぽい」とか、あやしげだね。ちょっと申し訳ない。
なにせ自分が体験したわけでもないし、詳しい説明もなかったからさ。
で、図書室の話。
ボクは文芸部だったし、本を読むのも好きだったから、割と図書室は利用してた方じゃないかな。
たいていは、借りた後、すぐ帰ってたんだけどね。
本は好きだよ。
でも、全然生徒もいなくて、単純に不気味なんだよ。
あいまいな噂のせいで誰も寄り付かなかったのかな?
それとも、場所が醸し出す、居心地悪さ?
学校の図書室にしては、結構な広さがあったと思う。
入口近くには、マンガとか、とっつきやすい系統の本が多かった。
ラブコメとか妖怪とか、他にも学校を舞台にしたものが多そうだった。
あんま興味なかったから手に取ることもなかったけど、結局読まずじまいだったのは勿体なかったかも。
奥の方は、いかにも図書室って感じのスペースになっていて、ハンドルを回して移動させるような棚まであったよ。
本でぎっしりの棚もすっと動かせるようになってて、限られた空間に、なるだけ棚を置けるようになってるアレね。何列くらいあったかなぁ、すぐ分からないくらい。
気になってさ、たまに動かしてはみるのだけど、結構チカラ入れないと回んなかったんだよね。あまり使われてなさそうで、見た目にもサビがちらほら浮いてたから。そりゃあ軋みもするか。
そして、そんな広い部屋でも、窓は少ないんだ。
日光が当たると本が変色するからだと思う。
うちにある漫画もさぁ、窓際の棚に並べてたら端っこがすっかり色変わっちゃって……
あ、どうでもいいよね。
そんなんで、明かりが届かなくて暗がりもあちこちにあってさ。で、誰もいないわけでしょ。そりゃ、奥に入ってくのは、何もなくてもためらうよね。
しん、としてて、古い紙のニオイが漂ってる。
なんだかよく分からない、分厚い本が並んでる。
絶対生徒が読まなさそうなラインナップ。
そもそも、学生からしたら、読めない字で書かれた、何のジャンルかも分からない本に見えるかもね。
ハンドルを回した奥にある、そんなよく分からない本を、なんとなく気分で選んで、手にとる。
古びた表紙には、両腕を広げた男性が線描されている。
難しい字だけど、雰囲気や題名からして宗教関係?
ぱらぱらとめくる。
細かくて難しい字ばっかり。うん、わからん。
パタン
と閉じて、また棚にもどす。
そんなことをひとしきりやって、結局入口近くの、割と新しめの本を借りて帰る。といっても、この図書館って最近の本は全然入れてくれてないのだけど。
それより図書委員も見たことないんだけどね。
そういうボクの図書室ルーティーン。
図書室の何が噂されてたんだろう。
結局、分からず終いのまま。
とにかく、他の生徒を見かけたことはなかったなあ。
少なくとも、ゆかいな噂では、なかったってことだろうね。
※週イチ更新予定です(プロローグなど含む全11回)。その9。