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体育祭

運動会って、何月にやってた?


春にやるとこと、秋にやるとこがあるよね。

その学校は秋だったよ。

もうちょっとしたら、また別の学校に転校するって時期だったから、運動苦手なボクとしては、あと少し遅くやってくれてれば参加しなくて済んだのにって、残念な気分にもなったけどね。


勝ったからってどうなんだ、って毎年思っちゃうんだけど、運動会ってだいたい対抗戦になってるよね。クラス別に、一年から三年までの縦割りだったりでさ。赤組だとか青組だとか。

その学校は東西2チームに分かれて勝負してたっけ。

学年ごとに5クラスあって、クラスの数が割り切れないから、クラスの枠をとっぱらって、ごちゃまぜに東と西に振り分けられてた。


田舎だからなのかなぁ、小学校でもないのに、保護者がズラっと見に来てるの。

平日だったんで、うちの親は仕事の都合もあって来られなかったけど。残念、なのかな?


生徒も観客も、競技の結果に一喜一憂で、めっちゃ真剣な雰囲気。

体育苦手で、足を引っ張っりがちな自分としては、やっぱり少し居心地が悪かったなあ。

だって、取り囲んだ観客が一挙手一投足、息を呑んで見守ってるんだから、そりゃ緊張しかないよ。終わったら観客側から両チームに向けて拍手が湧いて、責められてる感じはないにしても。ねえ。ま、ヤジが飛ぶようなことはないから、それもまあ良かったんだけど。


競技自体は、徒競走や障害物競走、玉入れに大縄跳びって感じで、よくある種目が揃ってたかな。

もちろん、競技の合間には応援団の応援もあったよ。普通は応援合戦をやる気もするけど、まあそれ専門に部活してる人たちがいるからね。もしかすると、一日中、応援してたりして。


応援って意味では、競技中は放送も入るよね。放送部がやってるのかな、「現在の合計得点は東軍がリードしてます。西軍の皆さんもがんばってください」みたいなことを途切れることなく抑揚なく淡々とアナウンスするの。

その他にも、400メートル走なんかだと、スタート前に走者の細かな紹介されたりして。練習時の参考タイムだとか、見どころだの、結果予想だとか。そしてゴール後にはご丁寧に名前と着順、それにタイムまでアナウンスしてくれるからね。やめてくれよ、って。

下調べとか大変過ぎでしょ。

そういえば、なんだか聞き覚えのある声だった気もする。どうだろう。


運動会で盛り上がるのは、やっぱりトリの種目だよね。

よくあるのはチーム対抗リレーだったりするけど、ここでは綱引き。

その綱がさ、ものすごく長いの。

校庭で一直線になって、なんて無理だから、何回か折り返しちゃったりするくらい。あんなの、うまく引っ張れてるのかどうか怪しいんだけど。

校舎の屋上から見たら、巨大なムカデみたいになってそう。あー、虫嫌いな人にはつらい喩えだったかな。ごめんね。

そんな感じに校庭いっぱいに広がってて、参加者も結構いるし、自分は頑張らなくてもいいよね、とはならないのが、その場の雰囲気で。みんな必死に引っ張ってるものだから、ボクもそれなりに引っ張ったよ、なんとなく熱気にあおられて。


最後の総合成績発表はどうだったかな、そのときはたしか自分も入ってたチーム、東だったかな、が勝った気がする。

結局勝っても負けても、なんにも変わんないだろうにって思うけど、そんなこと思ってしまうボクはまじめさが足りないのかな。いや、ノリがわるいんだろうね。周りの、落ち込んで座り込んだり、ジャンプして喜んだりする生徒をどこか冷めて見てると、熱意ないな、ってね。


暗くなる頃には、校庭の真ん中で煌々と、大きな炎がゆらめいていた。


観客たちは結果発表が終わって早々にいなくなってた。先生たちもいなかった。職員室にでも戻ったのかな。生徒だけが残っていた。ボクはいつ帰っていいものかタイミングをはかりかねて、なんとなく帰るきっかけがつかめずに、校庭の隅で遠巻きに炎のゆらめきを眺めてた。


だいぶ日が落ちるのも早くなってたからなのか、炎の周りだけが、浮かび上がるように明るかった。

ぱらぱらと、運動会で使われてた小道具やら、燃えそうなものを、周りの生徒達が投げ込んでいるようだった。その度に、少し明るくなり、あるいは黒い煙が立ち昇ったりしていた。

気まぐれな火の粉が、炎を囲んで点々と座ってる生徒たちの陰を一瞬浮かび上がらせ、また暗闇にのまれていく。


そのうちに、さすがにもういいかと腰を上げて帰ったよ。うん、寂しくなるからね。

なんだか、後の祭りって言葉が頭に浮かんでた。

※週イチ更新予定です(プロローグなど含む全11回)。その7。

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