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文芸系の小説

漫才 @関西のベテラン風漫才

作者: 蜜柑プラム

 チャンカチャンカ♪チャンカチャンカ♪チャンカチャンカ♪・・・


 愉快な出囃子にのって舞台のそでから登場してくるのは、人気漫才コンビ、

 ヒカル&アキラ だ。


 一瞬で舞台が華やかになる。その姿が見えると満員の観客は大きな拍手で彼らを迎えた。

 いつものようにツッコミのヒカルが慣れた手つきでマイクの高さを合わせ、明るい声で観客の声援にこたえる。


「どうもーぉ。どうもですぅ。ありがとうございます、ありがとうございますぅ」


 ボケのアキラも控えめに観客に挨拶をする。


「どうもでぇす」


 押しも押されぬ人気ベテラン漫才師。彼らが登場しただけで、観客は大盛り上がりだ。

 それでは、彼らの磨き上げられた名人芸をじっくりと楽しもうではないか。



「いやぁ、ありがたいことですねぇ、ほんとに。あ、ありがとうございますね奥さん」

「ありがたいねぇ。ほんまありがたいわ」


「ええ、我々もね、もう、この世界入って35年になりますから。――いやっ、いらんいらんそんなん。気つかわんといて。いやいや、ありがとうございます、ほんんんまに」

「えぇえぇ、そうよほんま。ありがたいことでっすわ」


「でも、まだまだ若手には負けてられませんからね。ええ。がんばってかなアカンなぁ、て、言うとるわけですけどもね」

「ほんまやねぇ。これからやねぇ」


「はい。がんばっていきましょ」

「がんばってこ」


「しかしまあ、あれですな、えー、オリンピック」

「はいはい」


「いやあ、こないだの冬季オリンピックは中々、日本の選手たちは頑張ってくれましたね」

「ほんまですねえ。いやほんま、ものすっご感動しましたわ。すごかったですねえ。感動がね、もう本当に、たくさんありましたねえ。ほんまにほんま」


「例えば?」

「え?」


「感動したんやろ? 例えば?」

「そらあ、あれやろ。あのぉ、すごい回転したやつ、やろ?」


「回転て、何のや?」

「回転してたんやろどうせ。回転しとったやつおるやろ? どうせ」


「どうせって。何の競技か言うてみろっちゅうねん」

「え?」


「え?って。見てたんやろ? 感動したんやろ?」

「そうや?」


「ほなその競技言うてみろっちゅうねん」

「ふっ。なんや? そんなことかいな?」


「ほなはよ言えや」

「ああそうか? 競技を言うたらええんか?」


「はよ、言えや!」

「言うたらぁあ! んなもん、なんぼでも言うたるわ! 競技の1つや2つ!」


「おう!」

「んー。カー?」


「ん?」

「カーリ?」


「ん? ん?」

「カーリン、合ってる?」


「合ってる?てなんやねん」

「まちごうてたらイヤやろがい?」


「お前見てたんやろ? めっちゃ回転する競技なんやろ?」

「わかってる、わかってる、うるさいなっ」


「おう。んなはよ言えや」

「ボブス?」


「お前さすがにそれはないわ。ボブスレーやろ? それはないねん。そんな回転せえへんし、日本人活躍しとらへんねん」

「やろ?」


「やろ?ってなんやねん」

「知ってたもぉん。ボブスレーちゃうって知ってたもぉん」


「ムカつくなその言い方。お前さては、オリンピック見てへんのちゃうか?」

「見てたもぉん。オリンピック見てたもぉん。テレビにかじりついてたもぉん」


「ムカつくっちゅうねん。やめろそのしゃべり方。ほなどこの都市でやってたか言うてみろや」

「ふっ。お前、ええ加減にせえよ、ほんまに。さっすがにそれは分かるやろ?」


「おう。ほな言うてみいや」

「ト?」


「ん? ト?」

「トウキ? ョ?」


「トウキ、何て?」

「合ってる?」


「合ってる訳ないやろ! お前さすがにトウキョウはないやろ。一番ないやつやろがい」

「んな。ヨ?」


「ヨ?」

「ヨコハ?」


「ヨコハマもおかしいやろ!」

「ヒントっ」


「ヒント? んー。中国や」

「トット?」


「あほ! トットリなわけないやろ。そんな田舎の県でやるわけないわ。いや俺が怒られるわ! ちゃうやろ、外国の中国やっちゅうねん!」

「シャン?」


「違う」

「ホンコ?」


「違う」

「ピョンヤ?」


「全然違う」

「1文字」


「は?」

「1文字だけ教えて?」


「んー。ペ。や」

「ペ?」


「おう、ペ」

「ぺ、かいな。はっ、めっちゃ簡単やんけ!」


「おうなんや?」

「めっちゃ簡単やんけ」


「おう?」

「簡単やんけ」


「おう!」

「簡単やんけ!」


「おう!!」

「簡単やんけ!!」


「おう!!!」

「簡単やんけ!!!」


「おう!!!」

「簡単やんけ!!!」


「言えや!!」

「んー…………ところでさ?」


「んなんやねん?」

「あの……君がさっきから言うてる、オリンピックってなんなん?」


「知らんかったんかい! もうええわ」

「知らんかってんもぉん!」



 パチパチパチパチー


 さすがの安定感だった。テンポ、キレ、そして何より華がある。笑いっぱなしの時間はあっという間だった。

 大満足の観客はそでへとはけていくヒカル&アキラに惜しみない拍手を送るのであった。


( 完 )


ゲラゲラコンテスト4、とても楽しい賞企画だと思います。主催者様に感謝申し上げます。

お読み下さりまして、どうもありがとうございました。

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