猫獣人のお姉さん
スクナビコナのボードを開く。
目の前に何も書かれていない半透明のボードが現れた。
オモイカネの言う通りなら、作りたいものを思えば良いのか。
作りたいもの・・・。
とりあえず偽装の魔道具。
あ!マジックポーチも作りたい!
容量が見た目にそぐわないやつ!
そう思うと目の前のボードに、偽装の魔道具とマジックポーチの表示がされる。これ検索みたいだな。
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偽装の魔道具
ステータスを偽装する事ができる
カメレオンキングの目玉
カメレオンキングの皮
マジックポーチ
中身が10m3の不思議なポーチ
重さを感じない
スライムの核×10
ポーチ×1
マジックポーチ(大)
中身が100m3の不思議なポーチ
重さを感じない
中に入れたものの時間経過を1/100にする
人食い宝箱の核×10
綺麗なポーチ×5
マジックポーチ(極)
中身が1000m3の不思議なポーチ
重さを感じない
中に入れたものの時を止める
キング・オブ・キングの玉袋
最高級の布×10
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出た!
これぞチート道具!最後のやつとか、転生ものあるあるの時を止めるやつじゃん!
俺は表示されたのはものを見て、興奮が抑えきれずに、1人で床を転がり悶えてしまう。
しばらく転がると冷静になってきた。
しかし、カメレオンキングとかキングオブキングとか強そうなのだが・・。
待てよ?スライムは子供でも気を付ければ倒せるはずだよな。
実際記憶の中では、下水タンクの魔道具に魔力を込めるのは住民が当番制でしていて、この前は父さんの番だから一緒に行ったんだよな。
確かそこの近くにスライムがいて、1匹倒した記憶があるぞ。まぁ近くで父さんが見守っていたけど。
あれ?これはスライムの核取れるんじゃね?
俺は勢いよく体を起こし、店へ続くドアを開ける。
店の中では、母さんがお客さんの相手をしていて、父さんはカウンターの中で椅子に腰掛けて、薬草3枚に手を翳している。
見ていると手が光り、薬草を瞬時に粉にしていた。
これは確か、薬師のスキルだったかな。
父さんに近寄り声をかける。
「ねぇ、外に出て良い?」
「ん?何をしに行くんだい?」
父さんが、粉にしたものの横に水が入った小瓶を置く。
これはおそらくポーション作りだったはずだ。気にはなるが、マジックポーチが先だ。
「スライム倒しに行くんだ」
ギョッとした顔で、ポーション作りの手を止めてこちらを見る父さん。
「それは危ないからダメだよ?まだエミリオ1人では行かせられないな」
俺を諭すように優しく言う父さん。
マジか・・。流石に5歳児1人では行かせてくれないか。
聞き分けよく、わかったと頷いて部屋に戻ろうとした時、カウンターの内側に×印が付いたポーションを見つけた。
「父さんこれ何?」
俺が×印ポーションを指差して、尋ねてみる。
「あぁこれは、売れ残って劣化したポーションだよ。回復量が通常の半分になっているから、×を付けているんだ」
「そうなの?ひとつ貰っていい?」
首を傾げながら、あざとく聞いてみる。
「んー。ひとつだけだよ?こういうのは駆け出しのお金がまだ無い冒険者の為に取ってあるものだから」
「わかった。ひとつ貰うね」
父さんが少し困った顔でだが、了承してくれたので、遠慮なく貰うことにする。
ひとつ抱えて、部屋に戻った。
部屋に戻るとベッドの横の床に座って、目の前にポーションを置く。
ふふふ。俺は生産チート持ちだ。実は目に入った瞬間に劣化ポーションだという事がわかっていたのだよ!!名称だけ分かる、簡易鑑定みたいなものだな!
大体の転生ものなら、こういう劣化ポーションを通常ポーションへと復活させる事が出来る!
俺もそういうチートな筈!
早速生産ボードを出して、劣化ポーションを使って出来るものを検索する。
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ポーション(並)
HPを3割回復させる
劣化ポーション×1
薬草×1
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よし!普通のポーションに戻す事ができそうだ!しかも薬草をで出来るとは・・。これは儲けれるんじゃ無いか?
っと生産する前に、そもそもスキルを使うのにMPは要らないのだろうか?
教えてオモイカネ!!
俺の目の前にチャットボードが現れる。
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エミリオ
スクナビコナ使う時、MP消費するの?
オモイカネ
お主のスキルではしないのぅ。但し、普通の人は生産系スキルを使うと、MP消費するぞい。
エミリオ
わかった!ありがとう。
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チャットボードを閉じて、目を瞑り少し考える。
俺はまだ年齢が低いからな。あまり目立つのはよろしく無いかもしれない。
ここは自衛手段が整うまでは、控えめに生産して行くか。まぁ自衛できるようになったら自重しないけどな!
ひとりでうんうんと頷いていると、いきなり背中から人の温かさと、控えめな柔らかい感触と共に少しばかりの重みを感じた。
へ?と思う間も無く、次は耳に温かい吐息がかかる。
「うひゃああああ!!」
驚いて動こうとするが、ガッチリと何者かにホールドされており、身動きが取れない。
その間に俺の耳は少しざらついた湿ったものに蹂躙され始めた。
「あっ、や、やめて!」
思わず女の子の様な声を出してしまう。おそらく顔も真っ赤になっているだろう。
その声のせいで逆に火がついたのか。耳を責め立てる勢いが増した。
俺はどうにも抜け出す事ができず、されるがままだ。
「ちょ、だめ!だめだって!」
俺が本気で嫌がってると思ったのだろう。名残惜しそうに湿ったものは俺の耳から遠のいていった。
ホールドされていた力が緩んだところで、後ろを振り向く。
そこには、髪と耳、目、尻尾全てが真っ黒の可愛い顔をした宿屋の娘、猫獣人のモニカがベロをチロチロと動かしながらいた。
「何するんだよ!?モニカお姉ちゃん!」
俺が目の前のモニカを真っ赤な顔をしたまま睨む。
すると、悪びれた様子もなく、モニカがニコニコと返事をする。
「えへへへ。だってエミリーが隙だらけだったんだもん。これはやるしか無いと思ったんだ〜」
モニカは俺の事を愛称でエミリーと呼んでいる。女の子っぽくて嫌なんだけどな。
「自分の家なんだから隙があって当然でしょ!大体どこから入ってきたの?」
「ちゃんとおじさんとおばさんに挨拶して、表から入ってきたよ?」
それを聞いて愕然とする俺。
なんだと!?考え事に集中し過ぎて、全く気付かなかった。今度からは気を付けなければ。そうじゃないと固有スキルが早々にバレてしまうでは無いか!
ニコニコしたまま、尻尾を左右にゆっくりと振るモニカを見ていると、ふと思いついた。
「ねえ。モニカお姉ちゃんってさ冒険者だよね?」
「そだよ〜」
「今日はお休み?」
「うん。お休みだからエミリーに会いに行くついでに、ポーションを買いに来たんだ」
そう言って腰に下げているポーチの中を見せてくれる。中にはポーション小瓶が幾つか入っていた。
「それじゃあさ。さっき耳を舐めたのは許してあげるからさ。今日1日、俺に付き合ってよ」
「ん?それってデートのお誘い!?良いよ!付き合うよ!結婚しよ!」
何をどう勘違いすればそこまで話が飛躍するのだろうか?
モニカは俺の言葉に尻尾をピンっと伸ばして、満面の笑みで再び抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと!抱きつかないでよ!それに結婚なんて俺にはまだ早いでしょ!」
口ではそう言いつつも、身長差があるのと、正面から抱きつかれた事でモニカの柔らかちっぱいの感触を顔全体で堪能する。
ちっぱいだけど柔らかさは変わらんなぁ。
顔をちっぱいに擦り付けたいが、今までそういう事をしてきていない為、今回は自重し、徐々にエロに持っていこう!
なんというか、転生して新しい人生になったからなのか?俺って前よりもエロくなってる気がする。月読の女性モードを見てから変わった気が・・・。まぁいいか。
「まだ早い?そしたらそのうち結婚してくれるの?」
体を少し離しながら、モニカが揶揄うように言う。
「そういう事じゃ無いの!とにかく今日はスライムの核が欲しいんだ」
ちっぱいがサヨナラした事で少し悲しいが、それよりもマジックポーチが先だ。
「なんだ〜残念。でもスライムの核?エミリー1人でもスライムは倒せるんじゃ無い?」
「父さんが1人では行かせられないって言うからさ。だからモニカお姉ちゃんが一緒についてきてよ」
「良いけど、どうしてスライムの核がいるの?もしかして固有スキルでた?」
獣人だから動物的感でも働くのか?妙に鋭いところがあるな。
さて、どうしようかな?
モニカはどう考えても俺の事が好きだろう。
将来的にハーレムを作りたい願望はあるので、ここで結婚の約束をしても大丈夫そうなんだよな。
問題はモニカがハーレムに対してどう思っているかくらいか。
因みに俺としては、猫獣人バッチこい!って感じだ。寧ろめちゃくちゃ嬉しい。
「実は・・。モニカお姉ちゃんの言う通り、固有スキルが出たんだけど、まだ誰にも話してないんだ。なんか凄そうだし」
俺が不安な顔でモニカに訴えかける。
ふふふ。どうだ!?俺の演技力は!可愛らしいショタが自身のスキルで不安になっている様は。
庇護欲がそそられるだろ?
そうであってくれ!
「んー。固有スキルは大体凄いものが多いから、そこまで気にしなくても良いと思うんだけど・・。でも不安なら、お姉ちゃんが守ってあげるよ!」
腰に手をやり胸を張るモニカ。
なんか新鮮だな。前世ではそんな頼りになる人とかいなかったから。ちょっと演技なしに頼れるお姉さんって、良いなって思ってしまった。
そんな良い子を誑かそうとするなんて!
俺って最低!!
まぁ現状では転生したとは説明し難いから、折を見て打ち明けることにしよう。
「ありがとう!それじゃスライム倒しに行こうよ!」
「スキルの説明は?」
「それは後でするからさ」
「わかった。どこのスライムを倒すの?」
「俺、下水処理施設の近くでしか見た事ないから、あそこかな?」
「んー。アタシは鼻が効くから、あそこは辛いんだよね。・・アタシが冒険者だから、街の外に出てから倒す?」
お?街の外か。行ってみたいが、大丈夫か?
俺が少し悩んでいるのを、街の外が怖いと思っていると思ったのか、モニカが俺の頭を撫でる。
「大丈夫だよ?街から出て、近くのところにスライムはいるから。少し歩けば門番の人もいるし、怖い事にはならないよ?」
そんな近場で集めれるなら大丈夫か。
「モニカお姉ちゃんが居れば平気だよね?そこに行こう!」
そう言ってモニカに笑いかける。
モニカはそんな俺をみて、身悶えしていた。
あ、これショタコンだわ。なんとなくだけどそう感じる。
「よし!それじゃ、おじさん達に言ってから行こう」
「うん!」
モニカが手を差し出してきたので、それを取り、手を繋いで店へと続くドアを開ける。
劣化ポーションをポーション(並)へと作り替えたかったが、まぁ後でいいだろう。マジックポーチの方が優先度は高い。
店へと入ると、モニカが2人並んで椅子に座り店番をする両親に声をかける。
「おじさん、おばさん。エミリーが街の外を見てみたいって言ってるから、少しだけ見せてくるね?」
「そうなの?2人で大丈夫かい?」
父さんが不安そうな顔でモニカに聞く。
「あなた、モニカちゃんも冒険者になって1年経つんだから、その辺は大丈夫よ」
一方で母さんの方は、あまり心配していない様だ。
「まぁモニカちゃんは固有スキル持ちだからね。大丈夫だとは思うけど。エミリオ?モニカちゃんの言う事をちゃんと聞くんだよ?」
父さんが俺に言い含める。
「はーい」
「それじゃ、行って来るね」
「気を付けてね〜」
両親が見送る中、俺とモニカは手を繋いだまま外へとでた。