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ギャルが犯されている

　————人がレイプされそうになっている。その光景をオレの目が捉えた。

「ちょっ……何よあんたたち、えっ」

　そう静かな路地裏で声を上げているのは、見た目がギャルの女子高生。しかし遠目から見ても明らかに酔っているのが分かる。

「うるさいなぁ、嬢ちゃん。おらっ！」

　そしてギャルの女子高生が「えっ」と声を上げたのには理由がある。

　僕は今、物陰に隠れている訳だが、オッサンたちがそのギャルを囲んで、服を脱がせたのである。

　明らかにレイプだろう。いや、ただの金だけ盗るとかのタイプか。

　とりあえず、この修羅場の状況を物陰から見ることにした。

「やっ、やめてよ……！　ふざけんなっ！」

　服を脱がされたギャルは頑張って抵抗する。

　しかし、６０代近いオッサンたちもかなりの人数。手や肩をぎっちりと抑えら

れ、抵抗できずにいる。

「ぐへへへへ」

　オッサンたちそこでついにズボンを脱ぎ始めた。

　ここで、僕は察した。服を脱がせたりして辱めるでもなく、身につけている高級な物を盗る訳でもないということを。

　このオッサンたちは──レイプするのだと、察した。

　オレはここで助けるべきか。

　人気の少ないこの路地裏では、人が通る可能性は少ない。大きな声を出したとしても、聞こえないだろう。それに口を抑えられて終わりだ。

　どうするか、物陰で隠れている僕は考えた結果、まだ姿を出さないことにした。

「なっ、やめてってば！　キモイ！　オッサンキモイ！　触んないで！　イヤ、イヤ、イヤ！」

　頑張って腕や足を暴れ馬のように動かしている。が──オッサンたち、強いっ‼︎　

　よくあんな暴れているのを抑えられるな。

　オレもオッサンになったらあれほど力がつくのか。　まあそんなことより──そろそろまずいな。

　ついにオッサンはギャルのスカートの中に手を伸ばし、パンツにまで手を出している。

　そして──ついにオッサンはパンツを脱がせた。

「うぅ……」

　ギャルの女子高生は泣いている。

　手を抑えられ、身動きがとれない中、１人のオッサンにパンツや下着までも曝け出されている。

　まあ、お酒なんて飲んで酔っ払っていなかったら狙われてもいなかった気がするが。

　ギャルの中にも気を晴らしたい何かがあったのかもしれない。そこに関しては考えても無駄か。　

　そして、等々、ギャルの体に──力が抜けた。

　すでに、M字開脚の状態にまでされて、男は挿入しようとしていた。

　と、ここでオレにミスが出た。

　ギャルのパンツが脱がされているところや、等々、挿入まで行くというところで、男の欲が出てしまったのか、物陰から隠れていたつもりが、オッサンたちから体全体が見えるくらいにまでひょっこりしてしまっていた。

「あっやべっ」

　そして遅かった。オッサンたちが一斉振り返ったのだ。　そこでオレは頭を働かせ、ある行動に出ることにする。

　──ここでヒーローみたいに登場しよう！

「おい、オッサン。何やってんだ」

「はっ⁉︎」

　オッサンたちは、オレの登場に慌てている。

　ギャルを見ると、地面に寝っ転がるようにして泣いている。力も抜け、もうどうにでもなれといった感じで諦めているようだ。

　何とも可哀想な姿をしているんだか。

「動画は撮った。警察に突き出されたくなければここから去ることだな」

　真っ赤な嘘だけどな。オレはレイプされそうになっている状況に携帯を構えることなく、この目に焼き付けようとしていたからな。オレ結構やばいな。

　まあこう言っておけば逃げるだろう。てか、いいから逃げてくれ。

「な、何だと⁉︎　や、やばい。逃げろぉぉぉ！」

　ほぉ、逃げるんか。レイプする度胸はあるのに、急に現れたオレを襲うことはしないのか。

　こちらもその方が助かるが、このオッサンたちに負けるつもりはなかったのでどちらにしても結果は変わらない。──このギャルは助けられた。

「ん？　あれっ」

　彼女は助けられたと気づいたようだ。

「あ」　

　しかし、僕はあることに気づいたので、そう漏らして後ろに走り出した。

　この状況、他の人に見られたらまずい。ギャルの人も叫んでいたし、聞こえない可能性が高いにしても、通報した人がいるかもしれない。

　それにこの状況はオレがレイプをしているみたいではないか。オレはヒーローみたいに助けたっていうのに。

　だから僕はその場から逃げるようにして走った。

「やばいやばいっと」　

　そうして大きい道路まで逃げてきたのだが……

「しまった……財布落とした」

　あの財布には学生証にお金が１万くらいが入っている。お金はいいのだが、顔つきの学生証はヤバイ。

　おそらくあのギャルに拾われるだろうが……そのままでもいいか？　

　落として困ることはない。戻って警察でも駆けつけていれば問題になるしな。

　よし、ここは１万円と学生証をギャルにあげて家に帰るよしよう。

「飛んだ災難だな、今日は」

＊＊＊

　オレの日常は極平凡だ。　

　八咲《やさき》裕也《ゆうや》という男は、内気な人でもなければ、クラスの中で騒いでいるようなキャラではない。

　オレはただ仲の良い男友達や女友達と話し、学校では生活している。

　いつもうるさくしている人は見ているだけで疲れる。騒ぐのは時々でいい。ずっと騒いでいるもんじゃない。

　が、その平凡と生活しているオレでも、部活には入っている。

　オレたちの学校はとにかくバスケが強い。オレはこの学校に、バスケの推薦で入ったわけだ。

　つまり、このオレはバスケが超絶上手い。全国にもウィンターカップにも出ているこの学校でスタメンの座をとっているし、活躍もしている。

　それに今では高校２年生だが、１年の最初からスタメンをとっていた。

　まあそれは置いといて、この学校の授業はマジでつまらない。

「マジおもんないな」

　オレだけかもしれないが、マジで何を言っているか分からない。

「お前がバカなだけだろ」

　あ、やはりオレだけだったらしい。

　そう、オレはめちゃくちゃバカなのである。頭脳だけはこの学校の中でもワー

スト１０に入るほどだろう。

　前、みんなに言われた。

「まあ、お前はバスケだけやればいいからな」

「そうだったわ。オレもう寝るわー」

　この学校には勉強をするためではなく、バスケをしにきただけ。

　勉強はやらなくていいんだった。寝ることにしよう。

　そんなこんなで学校生活を送っているのだが、今日は寝ることができなかった。

　昨日の出来事を思い出したのだ。

　あのギャルは今頃、酒でも飲んでいるのだろうか。それとも、普通に学校に通

っていているのだろうか。それとも、財布の持ち主を探していたりしてくれてい

たりするのだろうか。

　いつものオレならどうでもよくて気にならないことだが、かなり気分屋のオレ

は、ただ今日だけ気になって仕方なかった。昨日の夜はすぐに寝れたのにな。

　その後の授業、ずっと机に突っ伏していたのだが、眠れなかったのは初めて

だ。

　今日の部活怒られるかもしれないな。

　そうして放課後の部活の時間がやってきたが、眠すぎて良いプレーは少なかっ

たものの、普通に部活は終わりを迎えることができた。

　しかし、部活は終わって、オレの１日が終わるようなものだが、今日だけは違

った。

　その理由は──部活の仲間達と正門に向かって帰路につこうとしたとこでハプ

ニングが起きた。

「あっ、いた」

　1人の金髪ギャルが正門に立っていて、オレを見つけるなり、そう声を出したのだ。

　再び口を開く。

「あんた昨日の人よね。あ、そうだ。まずは……そうね。……昨日はありがとう」

　昨日のギャルはオレの学生証を片手に持ち、顔を上下に動かしながら顔を比較している。

　そして、お礼を言わなきゃと気づいたのか、少し恥ずかしそうに言った。

　まあ、それもそうだろう。彼女からしたらめちゃくちゃ恥ずかしい姿をオレに

晒していた訳だからな。

「ああ、昨日の人か。学生証返してくれ」

　今、オレは気分が良くない。

　部活で良いプレーが少なかったのもあるが、授業で眠れなくてかなり疲れてい

る。

　それは全てこいつのせいだと考えると、気分屋のオレは塩対応で返してしまっ

た。

「そ、そうね。はいっこれ」

　彼女は別に嫌気な顔をすることなく、オレの塩対応に対応した。

　そして、財布と学生証がオレの手に渡る。届けに来てくれたことだけはお礼を

しておこう。

「ありがとな」

「う、うん。助けてくれたし当たり前のことをしただけだわ」

「そうか、じゃっ」

　オレは財布も帰ってきたことだし、話すことはないので驚いている部活仲間達

と帰路につこうとする。

　ギャルの女はオレを手で止めることも、言葉で止めることもなかった。

　しかし──ここで気分が変わった。

　財布が手元に帰ってきたからだろうか。ギャルの女が傷もなく、精神的にもや

られていないことに安心したからだろうか。

　とにかく気分が上がったオレは──

「連絡先くらい交換しないか？」

　そうギャルの元へ戻って提案した。

　彼女は「え」と驚いた声を、表情にも出ていたが、せっせと携帯をポケットか

ら出す。

「いいわよ」

　そうしてオレは何のために交換したのか自分でも理解できていないが、連絡先

だけ交換した。

　次の日の朝、『おはよ』と通知にあったが、朝は気分が悪いので未読した。

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SS（ショートストーリー）

　連絡先を交換した夜。

　あたしはスマホと向き合っていた。

「なんて送ろうかな」

　《《まだ》》住む家があるあたしは、布団の中でうずくまりながらカッコいいアイコンを眺めていた。

「カッコよ！　イケメンすぎない⁉︎」

　何でこいつこんなにイケメンなのよ。センター分けで髪をセットしている裕也は、本当にカッコよくて似合っている。

　センター分けしている人ってイケメンのイメージしかないわ。

　そうしてアイコンの集合写真に写っている裕也を見つめていること数分。

　──寝落ちした。

　『おやすみ』と送りたかったが、気づくと朝だったのであたしはすぐに『おはよ』とだけ送ることにした。

　でも、一向に既読は付かなかった。

「もうブロックされてる感じ？」

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