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第十話 パズル無双

帝国暦 738年 春


 む?これは……?


 「次の移動方式は移動部屋型なのね!」


 これまた、有名な移動方法である移動部屋型の御登場。

 だたいが一定の地点に到着すると、部屋の設置個所の柵が下りて、ベルトコンベアとかでモンスターが配置されるのがパターンですね。


 さてさて、目の前に見える移動部屋?に行って、コンソールっぽいあの機械を弄れば部屋が動くってやつか。面倒臭いパズル要素とかが無いと嬉しんだけどな……!


 「パズルとかって私は大好きなのよねっ!」


 ウキウキな駄女神様。

 いちいち、好みの方向性がズレるシャリムと俺である。


 正直、俺は勘弁して欲しいよ。ダンジョンのパズルとかって、画面を眺めるユーザー視点だからこなせるのであって、こうして、中に入り込んでの主人公視点パズルとか、難易度かなり高めよ?

 お願いだからパズル要素は少なめにね。


 「ほら!シャヘルも早く来なさい!ここ、ここ!このコンソールってば色と数字とアルファベットが書いてあるわよ?」

 「どれどれ?……赤黄青に1から4、AからFか……で、ここの周りにはそれっぽい文字があるかな?と!う、うわぁ~~!」


 ぐぃ~んっ。


 動き出す移動部屋。


 「シャリムさん?」


 人が真面目にパズル解読をしようと思ったのに、隣で適当にボタンを押される駄女神様。


 「何よ?こういうのは全当たりで行けば、そのうち正解に辿り着くでしょ?まずは大きい方から適当に入れといたわよ!」


 いるんだよな~、こういうユーザー。

 こっちは解かりやすい形でヒントとかを置いてるんだけど、そんなのを読みも推理もせずに自分脳で進んでいくユーザー。


 「……もういいよ。すべては駄女神様の言う通りにします」

 「何よ……別になんでもいいじゃない。そんなに怒ること?」

 「いや、怒ってるんじゃないけどな。……ってか、パズル好きって言ってなかった?パズルって謎解きだろ?」

 「そうね。パズルはよく暇な時にやっていたわよ?豪華景品が当たるとかって言う雑誌を買ってきては応募してみたもんよ」

 「アレって当たりは無いんだぞ?知ってたか?当選確率ゼロな罠」

 「嘘……そ、そんな……あれだけ大々的にうたっておいて当たりが存在しないの……」

 「ああ、ほとんどそれ系雑誌が公取に注意されているぞ」


 まさか、女神様が応募者だったとは出版社も知りはすまい。

 貴方方が声高にうたった豪華賞品の餌には、なんと女神様も釣られました。ってね。


 「し、信じられない!人間なんか信じられないっ!」


 まさか、パズル雑誌出版社のおかげで一柱の女神が人間不信に陥るとは……恐るべし、懸賞商法。


 「で、パズル雑誌は良いとして、何を押したのかな?シャリム様は?」

 「え、ええ。……いつまでもショックを引きずっては駄目よね。強く生きるのよ!シャリム!」

 「だから、何を……」


 うん。埒が明かないので、実際にパネルを見た方が早いね。

 ……と、青・4・Fね。


 ぎゅ~ん、ぎゅ~ん。


 なんかすごい勢いで上に向かって動いて行く移動部屋……。


 ち~んっ!


 どこからともなくベルの音が鳴り、移動が止まる。


 部屋の一方向が塔の外壁とくっつき、柵が下りて移動できるように……って、向う側はベルトコンベア?


 くきゃ~っ!x4


 モンスターだった……。しかも、飛行型?!


 「おい!シャリム!ちょっと魔法で何とかしてくれ!俺じゃ槍が届かん!」

 「え~っ!ちょっと!……飛べば届くんじゃないの?だってシャヘルってば竜騎士でしょ?」

 「馬鹿!こんな下に堕ちたら洒落にならんような場所でジャンプ攻撃をかませるかっての!」

 「もぅ~しょうがないなぁ~」


 なんだかんだと頼られるのは満更でもないご様子の駄女神様であった。


 ……いいから!早く何とかしてください!


 俺は鳥型モンスターが飛ばしてくる石礫を弾くことで手一杯だ。

 ってか、この石礫ってどこから仕入れているのさ?

 魔法かね?


 俺は半身の姿勢を取り、当たりそうな軌道の物だけを槍で弾いて行く。


 「う~んっ!火嵐!!」


 気合が無事に溜ったのか。

 シャリムがそう唱えると、中々のサイズの火嵐……炎で出来た竜巻のようなものが鳥型モンスターに襲い掛かる。


 くきゃ~っ!x4


 けたたましい声を挙げて消滅する鳥さんたち……。

 コレ、飛行系のモンスターばっかりだと、俺の攻撃方法が無くて焦るんですけどね……。

 向うの攻撃を耐えるだけ耐えて、焦れたモンスターが突撃してくるのを待つしかないのかな?嫌だよ?そんな地味な戦い方。俺ってタンクじゃないんだから。


 「ふぅ~っ。一回目の組み合わせは失敗ね。次行くわよ!次よ!」

 「へい、へ~い!」


 3、青、F……次に駄女神様が選ばれた組み合わせだ。


 しゅぃ~んっ!


 今度は静かに下に向かって移動する移動部屋。


 前回よりも少ない移動距離で移動部屋は止まった。


 う~ん。数字は階数とか高さとかかな?

 4の方が3より上の場所に移動したもんね。


 くきゃ~っ!x3


 さっきと同じ、青い鳥型モンスターが御登場である。

 但し、今回は三羽。


 ……

 ……………


 くきゃ~っ!x3


 今回も前回同様、俺が前の方で耐えて、後ろからシャリムが魔法を放つ形で殲滅。

 しかし、攻撃が出来ない敵とか、ストレスたまるわ~!


 「これも外れ!次ね!」

 「あ!ちょっと待て、流石に法則が見えてきて……」


 しゅぃ~んっ!


 またまた下に向かって動き出す移動部屋。


 「だから、シャリムさんや。法則が……数字と色はモンスターの色と数じゃないか?」

 「え?何っ?……そんなことよりも次の場所に着いたわよ!早く槍を構えて!」

 「……だから、法則が……って、わかりましたよ」


 くきゃ~っ!x2


 はい!予想通りに青い鳥型が2羽。


 ……

 ……………


 「だからね、シャリム。数字と色はモンスターの色と数でアルファベットが種類だと思うぞ?だから、変えるべきはアルファベットであってだな……って、人の話を聞きなさぁ~いっ!」

 「え?何っ?……そんなことよりも次の場所に着いたわよ!早く槍を構えて!」


 くっ!

 この駄女神め、実はわかってて嫌がらせでやってるんじゃないか?


 くきゃ~っ!x1


 ……

 ……………


 ぽちぽち。

 容赦なくコンソールを奪って俺が入力する。


 今度はアルファベットを変えて、青・4・Eだ。


 ぎゅ~ん、ぎゅ~ん。


 なんかすごい勢いで上に向かって動いて行く移動部屋……。

 数字はモンスターの数であると同時に階数でもあるわけだ。

 なら、青と4は変えずにアルファベットだけを変えれば、イケるんじゃないかな。


 くんっきゃきゃ~っ!x4


 ん?鳴き声は違うが、結局は青い鳥型のモンスターだな。

 おや??


 「なによ!自信満々だった割にはさっきと同じじゃないの!シャヘル!」

 「ええい、やかましい!けど、よく見てみろ!さっきとは違う鳥型モンスターじゃないか!?」


 外見の違いは判らないけれど、鳴き声と攻撃方法が違う。

 さっきは石礫を放ってきたが、今度は羽を矢の如く飛ばしてくる。


 結局は遠距離攻撃かいぃっ!


 と思わんでもないが、別モンスターであることは間違いないだろう。


 今回も半身になって槍で弾いて行く……こんなことなら小手と一体型の小型盾とか持って来ればよかったな。

 棒で引っぱたくより、よほど楽に防げるだろ。


 そういえば、一応は俺がシャリムの前に位置して防ぐ形はとっているが……半身だし、結構な数が後ろに行ってるか??


 ちらっ!


 一瞬だけ後ろを振り返る俺。


 あ、ズリっ!

 シャリムさんったら魔法障壁的な物で完全防御している……。


 くんっきゃきゃ~っ!x4


 今回も魔法で消滅するモンスター……。


 「なんだよ!シャリム、そんな便利そうな障壁が作れるなら、俺もその中に入れてくれよ!?」

 「え~~っ。だって、この障壁の中に入ったら、シャヘルったらまったくの役立たずになっちゃうじゃないの?私は嫌よ?そんな無様なお兄様()を見ることになるなんて(笑)」

 「あ?んだよ、その「(笑)」って!」

 「おっと、言わなきゃわからないのかしら?もちろん、お兄様()に対する嘲笑と憐れみを織り交ぜた私の感情ですけど、なにか?(笑)」

 「繰り返すなって言ってるんだ!……そっちこそ、何の推察も行わずに適当にパネル操作しちゃってさ!」

 「あれ?そうですかぁ~?推察されたお兄様()の捜査でも私と同じモンスターが出たじゃないですかぁ~?」


 なんか、むかつく語尾だな。

 だがしかし!


 「いや、さっきとは違ったモンスターだと思うぞ。鳴き方も違ったし、何より攻撃方法が違った」

 「……ソウイエバ?」

 「そう、だから、アルファベットを変えることに問題は無いと思うんだよ。EとFが外れだったから、後は四種類の中に正解があると思うんだ」

 「……お兄様にしては、中々に鋭い考察だと認めてあげましょう。それじゃ、次は青・4・Dでいいの?」

 「そうだな。Dが正解とは思えないけど、それで行こう」


 覚悟を決めてDを選んで、決定!


 しゅぅ~っ!


 今度は上下の動きは無しに、水平方向に移動している。


 よしよし、数字は予想通り。

 ……しかし、色はモンスターの色だけか?お約束的には属性とかだろうけど、青には火がそれなりに聞いていたからな……どういうことだろ?


 同じフロアなだけに、今回の移動は少なめだな。

 さて、どんな相手が出て来ることやら……?


 GYROOOORN!!!x4


 ……ドラゴンかよ……頭文字のDなのね。


 中々に巨大な青いドラゴンさんが四体ほど……。


 「「「「我ら古のブルードラゴン四天王を前にして……」」」」


 ふんっ!

 こんだけ図体がでかければ、ジャンプ攻撃をするのも怖くないわ!高所的に。


 ずしゅっ!


 一体目の首を切断、下に落ちる前に次のドラゴンに取り掛かる。


 ほいっ、ほいっ、ほいっ!っと。


 小さな的でなければざっとこんなもんよ。


 「シャヘル……そこまで圧倒できるなら、最初から働きなさいよね」

 「いや、ドラゴンって図体が大きいから下に落ちる心配しなくて済むやん。けど、鳥さんとか小さすぎるのは足場が無くて、どうにも……」

 「ちっ!……そこまで、ガチの高所恐怖症なのかよっ!つかえねぇヘボ竜騎士だな」


 ……シャリム様~!聞こえてますよ~!あなたの俺への罵詈雑言。


 「ま、まぁ、良いじゃないの。残るはABCの三つだから、サクサク行こうよ!ね?」

 「はいはい」


 ……

 …………


 Cは芋虫型モンスター、Bは蜂型モンスターでした。……正解はA。


 ……んだよ。最初から順にやって行けば良かったんじゃね?っていうね。


 とりあえず、パズルダンジョンはクリアできましたっ!

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