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天狐さんの優しさ巡り  作者: ユメカタール
17/20

起源の章 村長の娘

 氏神が去った後、志乃の母が顔を上げ畏怖の念を抱きながら白蓮達を見た。


 「あなた方は一体……」


 白蓮は、自分達が人間では無いことを、悟られないように言葉を選びながら答えた。


 「私達は祈祷師を生業として、修行をしながら徳を積む旅をしている者です。今日は貴方達ご家族の絆の強さと、一生懸命に生きる姿に氏神が答えて下さったのです。私達はそのきっかけをつくったに過ぎません」


 志乃の家族を見回しゆっくり頷く白蓮。


 「それより日も迫っています。人柱を食い止める為にも村長(むらおさ)の所に案内して下さい」

 

 何かを感じながらも、その思いを心に仕舞い込み頷く母親。

 

 「分かりました、今から御案内致します」


 白蓮達は見晴らしの良い小高い丘にある家屋に案内された。


 「こちらです。今から村長を呼んで参ります」


 志乃の母が村長の家の中に入って行った。


 しばらくすると、志乃の母と一緒に気難しそうな顔をした村長と思私き初老の男が出て来た。


 「旅の人、私になんの用があるのだ」


 怪訝そうにこちらを見る村長。


 白蓮達は一礼した後、本題に入るべく話し合いに入った。

 

 「私共は加持祈祷を生業とする者でございます。そちらの女性の幼い息子がこの地にある大沼にて人柱に立つとお聞きしたもので、それを食い止める為にやって参りました」


 すると村長は真っ赤な顔をして怒り出した。


 「あんたら、自分で何を言っているのか分かっているのか?この辺りの村の者がみんなで集まって決めた事だ、残念なことに人柱の条件に合うのは、その人の息子の幸吉しか居なかったんだ!それにいきなり来たよそ者が、大沼の龍神をどうやって鎮めるんだ!」


 ここで今まで黙っていた玉藻が、口を開いた。


 「其方、人柱の条件に合う者がその母親の背におぶさっている幸吉だけと申しましたね、私は千里眼が扱える術者です、隠し立てをしても分かるのですよ。其方には娘が居るはずです!人柱の風習のある土地で誰にも知られず隠し通してきた、目の見えぬ病を患って生まれて来た娘が!他人の子は平気で龍神に差し出せるが、自分の子だけは隠し通してでも守りたいのですか?子を大切に思う親の気持ちは皆同じです!だったら自分の子も他人の子も助かる道を探せば良いではないですか!」


 村長の顔が見る見る血の気が引いていった。


 (今まで誰一人として娘のことに気付かれぬよう隠してきたのに…どうして…)


 すると、やり取りを聞いていたのか奥から村長の妻が目の不自由な娘の手を引いて現れた。


 「あんた、この方の言う通りよ。生まれた時から手塩にかけて育ててきたわしが子が可愛いのは皆同じ、それに皆が助かる道があるなら、この子だって、こそこそ隠れなくてもお天道様の下で堂々と歩けるのよ」


 村長はがっくりと肩を落として、しばらくの間沈黙を保った後、妻の方を見た。


 「おまえ……わかった、私が間違っていた。この人の言う通りだ。日も迫っているが、私の一存だけでは決められない、もう一度村の衆に集まってもらおう」


 その時である、大きな光の玉が皆の前に現れ稲荷の姿をした氏神が姿を現した。

 

 「う、氏神様じゃ!ははー」


 慌てて村長は妻と共に氏神の前に平伏した。


 氏神は村長の方を見て目を細めた。


 「清作、お前も人の心が分かる良い村長になったものだ。案ずるな、村の者達にはわしが夢枕に立って伝えておく」


 村長は氏神の顔を見た後再び頭を下げて礼を述べた。


 「私には勿体無いお言葉、ありがとうございます!」

 

 氏神は大きく頷いた後、玉藻の方を見た。


 「志乃に真名を教えたのは其方だったな」


 玉藻は大きく頷いた。


 「はい、私で御座います」


 玉藻の返事を聞いた氏神は、村長夫妻と志乃の家族を見回した。


 「わしはこちらの旅の者達に話がある故、其方達は下がって良いぞ」

 

 「分かりました、私達は家の中に戻ります。ありがとうございました」


 村長夫妻は深々と頭を下げると、家の中に戻っていった。


 「では私達も畑の様子を見てきます。一刻ほど経ったら戻って参ります」


 志乃達も頭を下げて挨拶をするとその場から離れた。


 周りに誰もいなくなったのを確かめて、白蓮が氏神に礼を述べた。


 「お気遣いありがとうございます、私達が人間ではないことが知れてしまいますと、旅をする上で何かと不都合が生じて参りますので助かります」

 

 優しい笑顔で二人を見る氏神。

 

 「やはりそうでしたか、実は稲魂の神様から其方達に伝言の式神が届いております。ご覧になりますか?」


 「いえ、人柱の件が片付いた後にお願い致します」


 自分達のことより先に、志乃達家族のことを気遣う夫の言葉を聞いて、玉藻はそっと腕をとり寄り添った。

 

 


 




 

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