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天狐さんの優しさ巡り  作者: ユメカタール
14/20

起源の章 娘御

 …優しさと温もりで満たされた心地良い目覚めが訪れる…


 ゆっくりと目をあけると、目と鼻の先に白蓮の笑顔があった。

 

 「お目覚めですか、玉藻殿。癒しの術は上手く行った様ですね。随分と顔色が良くなって、以前にも増して美しくなられた」


 玉藻は顔を真っ赤に染めて、おもわず白蓮に抱きついた。


 「白蓮様ありがとうございます。身体や心の癒しだけでなく…心の奥底に在った忌わしい過去まで…」

 

 白蓮もまた玉藻を強く抱きしめた。


 「以前に私は、恵まれない環境で育った貴女を救いたいと申し上げた筈です。この様な機会が有れば出来るだけの事をして差し上げたいのです」

 

 二人はしばらくの間見つめ合った後、互いの唇を重ね合わせた。


 …幸せな時間が過ぎ、朝日が二人を照らしだす…


 先に目が覚めた玉藻が明るい声で挨拶をする。


 「おはよう御座います!白蓮様、わたくしは先に起きて身支度を整えて参ります」


 目を擦りながら起き上がる白蓮。


 「おはよう御座います!もうその様な時間ですか、私も急いで用意致さねば。こちらのお寺様には長居させて頂き大変お世話になった、名残惜しいが、もうそろそろ出立致さねばなるまい」


 身支度を終えた二人は庫裡を出ると本堂の方へ向かい、自分達で手厚く葬った無明達の墓標の前で、黙祷を捧げた後 朝日に照らされ輝いている古寺を後にした。


 木々が日差しを遮り、木漏れ日が差す山道を寄り添って歩く二人。


 ふと歩みを止める白蓮。


 「どうなさいましたか、白蓮様」


 白蓮の様子を伺う玉藻。


 「御所での事があって以来、二人で都を離れて幾日も過ぎましたが、帝の命で陰陽寮から私達に追っ手が放たれているやもしれません、そういった事を知る手立てが何かあればと……」


 白蓮は少し考え込むと、稲魂の神の言葉を思い出した。


 「稲荷を祀ってある神社か祠であれば、御神体に頼んでお師匠様に取り次いで頂ける筈。それが叶えば御所の動きを知ることが出来ます。先ずは稲荷を祀ってある所を探すとしましょう」


 「分かりました、仰せの通りに」


  意を汲んで頷く玉藻。

 

 二人が再び歩み始めると、一里ほど進んだところで道が二手に分かれていた。


 どちらに進もうかと互いの顔を見合わせてたときに、玉藻が何かに気づいた。


 「白蓮様、向こうの方から人が歩いてきます」

 

 玉藻が指差す方向に目をやると、歳の頃にすれば十四、五のまだあどけなさが残った少女が目に入った。


 「ほぅ、珍しい。この様な山道を、しかも若い娘が一人で…」


 都を出て以来玉藻と二人だけで過ごして来たので、生身の人に出会うのは久しく感じ、白蓮にとってはほっとする瞬間でもあった。


 すると玉藻が白蓮の着物の袖を少しだけ引っ張って立ち止まった。


 「白蓮様、あの娘ならこの辺りのことを良く知っているかもしれません。近くに稲荷を祀ってある所がないか尋ねてみてはどうでしょう」

 

 白蓮も同意して頷いた。


 「うむ、良い考えだ。早速尋ねてみる事に致しましょう」


 二人は歩みを早め、娘に近づいて行った。


 白蓮達が娘の側まで近づくと、目を逸らしてこちらを避けるよう走り去ろとしたので、白蓮が慌てて呼び止めた。


 「待たれぃ娘御!恐れずとも良い、私たちは旅の者で決して怪しい者ではござらぬ、其方にただ道を尋ねようとしただけだ」


 娘は振り返り、恐る恐る二人の方を見た。

 

 「申し訳ございません!お二人とも立派なお召し物を着てらっしゃるから、きっと身分の高い方々だと思い、私の様な者が近付いてはいけないと思いましたので…どうかお許し下さい」


 娘は深々と頭を下げて謝った。


 「いや、謝らずとも良い。不躾な事をしたのはこちらの方だ、申し訳ない」


 白蓮と玉藻が同時に頭を下げた。


 娘は首を大きく横に振ると、安心したのか屈託のない笑顔を浮かべた。


 「私のことなど気になさらないで下さい。ところでどちらに行かれますか?この辺りでわかる所ならご案内致します」


 白蓮も和んだ表情で答える。


 「私は白蓮と申す旅の者です。この辺りで稲荷を祀ってある所があれば教えて頂きたいのだが」


 少し驚いた表情を浮かべる娘。


 「そうなのですか!奇遇にも私もお稲荷様に向かっている途中なのです。白蓮様、宜しかったらご案内いたしますので着いて来て頂けますか」


 娘からの申し出に謝意を表す白蓮。

 

 「かたじけない!ところで其方は何用でそのよな所行かれるのですか」


 すると娘は急に顔色を曇らせ俯いた。


 玉藻はその様子を見て心配になって声をかけた。


 「どうしたのですか、何があったか よかったら聞かせてもらえませぬか?」


 思いもよらぬ温かい言葉に、娘は(せき)を切ったように溢れる涙を拭いながら、玉藻の胸に飛び込み顔を(うず)めた。


 娘を優しく抱きしめ頭を撫でる玉藻。


 「もう大丈夫、話してごらんなさい」


 

 

  

 


 

 

 

 


 



 

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