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プロローグ

 


  …………唐突過ぎる事が起こると人間はフリーズするって本当なんだな。


  足元には意味深な魔法陣らしき物と石造りの祭壇、目の前にはザ・魔法使いといった出で立ちの人々。


  そして一番理解不能なのは俺の周りで座り込んでる人達。


  一人は背中に龍の様な翼が生え、指先なんかも人間よりもドラゴンとか言った方がしっくりくる角の生えた豪奢なドレスに身を包んだ赤髪の女性。


  一人は魔法使いの定番である三角帽子と黒いマントを羽織った小柄な緑髪の少女。杖に座ってぷかぷか浮いてるから完全にこの人も俺とは違うファンタジー世界の住人だろう。


  一人は液体……というか人の形をした水? 完全に人間じゃないよね。今は周りに人間しか居ないからかぐねぐね体を動かして女の子の姿になってるけど。


  一人は背中がパックリ開いた真っ黒なドレスを着た、近未来ファンタジーとかで出てきそうなガイノイドらしき人。なんで分かるのかって? 両腕が三連装ガトリングになってたのが変形して人の腕になったからだよ。


  そして最後の一人は少し草臥れた旅衣装を着た綺麗な顔をした背の高い金髪のロングヘアーが特徴の女性。この中じゃ一番まともな人っぽいけど視線が絶対零度すぎる。


 

  俺以外が女の人なのは何か法則でもあるのかと思いつつも、こうなった原因に頭を悩ませた。


  その原因と言うのも、俺には幼馴染の女の子が居て、コイツには昔から未来予知能能力の様な直感がある。


  んで、その能力をガンガン使うからかなり危機回避能力が高いんだけど、今回はそのせいで俺が巻き込まれたんだろう。


  一緒に下校してる最中に『ゴメン!! 私だと胃に穴が開くから代わりに行って来て!!』とか言って突き飛ばされたらこうなった。多分自分が呼ばれる未来が見えてたんだなちくしょうめ。


  今の状況が夢なんじゃ無いかと言う一縷の望みにかけて頬を抓ってみたけど、しっかり感覚がある。



  「ゆ、勇者様が六人も!! これでこの世界は救われた!!」



  ギャラリーの一人がそんな事を言って盛り上がってるけど、よーく俺以外の人の目見てみ? 無関心か冷めた目してるよ?


  特に龍のお姉さんはヤバイ。完全に他人を見下した目してるし、明らかにイライラが伝わってきてる。


 

  「毛無しの猿共、此処は何処だ?」


 

  開口一番龍のお姉さんは威圧を込めた声色でそう周囲に問いかける。さっきは気が付かなかったけど尻尾も生えてるらしく、苛立ちを隠さず床へと叩きつけて周りを威嚇しているようだ。


  直接言われた訳でもないのにその威圧感で腰を抜かしそうになったが、俺以上に睨まれてる人達の方がヤバイらしく、真っ青な顔で声が出ていない。



  「妾に二度同じ事を言わせる気か?」



  その態度が気に入らないのか、彼女は口元から炎をチラつかせながら大きく息を吸い込んだが、その瞬間に一発の重い銃声が鳴り響き龍のお姉さんの体がその場から吹っ飛んだ。


 

  「ヘッドショット確認……生命活動有り……次弾装填……戦闘モード起動……対象Unknown」



  ぶっ放したのは俺の横にいたガイノイド、背中からアームの様な物が出ていて、その先端に対物ライフルの様なゴツい重火器が装着されていた。てかそれ人に向けてぶっ放したのかよ!! しかも龍のお姉さん死んで無いの!?


  俺の心配を他所にむくりと立ち上がった龍のお姉さんには傷一つなかったけど、表情が完全に怒り一色。


 

  「自動人形風情が……!!」


  「対象の損傷は軽微……生体スキャン……人類への脅威度をAと指定……排除します」



  その言葉と共にガイノイドの少女の背中が開き、更に四本の円柱型のアームが展開された。


  明らかな敵対行為に対して竜のお姉さんも翼を広げ、右腕に電気を纏った風を巻き付きながら戦闘態勢に入り始め、誰がどう見ても一緒即発。



  「ちょっと待って!! ストップストップ!! ここが何処だか分からないまま暴れたら何が起きたのか分からないままになるよ!?」


 

  そもそも閉鎖的な空間でそんな真似されたら確実に俺は抵抗出来ずに死ぬから喧嘩の仲裁をするしか道は無いんだけど、ガイノイドさんの方はともかく龍のお姉さんの方は眼力がやば過ぎてちびりそう。


  他三人は完全に我関せずって感じでてんで仲裁を手伝ってくれない。



  「気安いな、貴様」


  「す、すいません。でもほら、見るからに自分達の世界じゃないでしょ? 情報収集が先なんじゃないかなぁ……なんて?」



  わぁい、虫ケラを見る目だぁ。誰かー間に入ってこの人を一緒に説得してくれー。


  俺の思いが伝わったのか、杖に座った子がぷかぷか浮きながらこっちへ来てくれた。


 

  「ボクもおにーさんの意見にさんせーかなぁ? まぁキミみたいな火を吐ける程度で威張ってる半爬虫類の低脳には情報の大切さは理解出来ないかもしれないけど」


 

  なんで初手侮辱から入るんだよ!? 説得しに来たんじゃ無いの!? 思わず突っ込みたかったけど、その前に石畳みの床が砕けた音がしたので口を噤んでしまった。ほーら怒っちゃったじゃないか!!



  「ほう、その口の聞き方……死にたいらしいな」


  「アハハハッ、やっぱ低脳じゃないか!! 生死の境を自在に操れる死霊魔術師(ネクロマンサー)を殺せるって本気で思ってんの? さっすが異世界!! バカしか居ないねぇ?」


「だーから喧嘩やめてってばぁ!! せめてあの人達の話聞こう? ね? ね? ね!? 現状俺達は全員がおんなじ境遇なんだからさ!!」



  そんな風に必死で説得と仲裁をした甲斐があったのか、龍のお姉さんは不機嫌ではあるものの、何とか気を取り直してくれた。


  自称死霊魔術師(ネクロマンサー)の子も悪びれもせずにヘラヘラしてるものの、何とか挑発を抑えてくれたんだけど……そのおかげか全員から『お前が代表して話を聞け』みたいな視線を受ける事になってしまった。



  ……俺、これからどうなるんだろう?



 




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