悪役令嬢は真実の愛を手にいれる
最近多い悪役令嬢ものです!
私も大好きです‼︎
私は、幼い頃から王太子妃になることが決まっていて自由がなかった。それでも、王太子殿下であるジルベルト殿下を愛していたから頑張れた。お父様に私の未来の旦那様だと言われ、お母様に私だけの王子様だと言われ、始まりはまるで洗脳のような形であったかもしれない。けれど心から愛しているの。
だから私に貴方の愛をちょうだい?
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「シルヴェーヌ・フォン・アインツベルン、貴女と婚約破棄させていただく。」
卒業パーティーの日に急に言われた。『今日はエスコートできない』と。最近、私ではない女生徒と親密にしていると知っていた。私は貴族令嬢の筆頭であり、王太子殿下の婚約者であるため、1人に近づき過ぎるのはダメだとジルベルト殿下にも声をかけていたし、その女生徒、マリアリエ様にも令嬢の代表として、貴族としてのマナーについて、行き過ぎた行為には注意をしていた。勿論、マリアリエ様に嫉妬をしていたが、それだからといってきつく当たったりなども絶対になかった。しかし、
「貴女はマリアリエに嫉妬しているからといって、きつく当たっていたんだって?私の婚約者でありながら、随分私に恥をかかせてくれたねぇ?どういうつもり?」
マリアリエ様はジルベルト殿下の陰に隠れ、私に怯えるように震えている。それは男性から見たら非常に庇護欲をそそる姿であるのだろう。
「ジルベルト殿下。私はそんなことなどしてはおりません。確かに行き過ぎた行為には注意をしておりましたが、それは当たり前のことを言ったまでです。」
マリアリエ様はジルベルト殿下の陰から少し顔を出し、涙目で睨んできた。
「それは嘘です!確かに注意もありましたけど、呼び出されて大人数で詰め寄られたり、教科書をダメにされたり、わ…たし……ほんとにこわくて………。」
そういうと、マリアリエ様は両手で顔を覆い、嗚咽をかきはじめた。ジルベルト殿下はそれを見て眉を下げ大丈夫、と声をかけていた。
「マリアリエはこう言っているのだがどうなのかな、シルヴィ?」
「そのような事実はございません。第1、証拠はあるのでしょうか?」
私からそういうと、
「証拠はないね。あくまでも証言だけだ。しかし、私はどうでもいいんだよね。」
「どうでもいい?どういうことでしょうか?」
「私は貴方がマリアリエを虐めていようとなかろうとどうでもいいんだ。どちらにせよ、私はシルヴィと婚約を破棄し、マリアリエと婚約する。」
「ジル様……!」
ショックで頭が真っ白になった。私は彼の婚約者になってから今までの9年間、休みなしで毎日勉強してきた。楽しいことなんてあまりなかった。ただ、忙しい日々が次々に過ぎていくだけである。まるで、それはなんの意味もないことだったと言われているような気になった。それに何より私はジルベルト殿下のことを愛していた。彼に愛して欲しくていくら辛いことがあっても、なんでも頑張ってきた。それなのに…。でも!国王陛下は?王妃様は?
「お言葉ですがジルベルト殿下、このことについて、国王陛下や王妃様はご存知なのでしょうか?」
「あぁ、陛下達には伝えてないよ。でも、この私がそんなことも考えてないと思うの?それに、陛下達は恋愛結婚なんだ。この意味、分かるよね?」
それはつまり、国王陛下も王妃様も恋愛結婚を推しているということか。
私はもうダメなの?ジルベルト殿下の愛を頂けないの?そんなのいやっ!私は、私は‼︎
「聞いてくださいジルベルト殿下!私は殿下と婚約破棄なんていやです‼︎ずっとずっと貴方を愛していた‼︎貴方がいたから辛いことも頑張ってきました‼︎これが押し付けだとわかってはいます。でも、それでも貴方を愛していた!貴方のサラサラの金の髪も、ペリドットの様に綺麗な瞳も、理性的で誰にでも平等なところも全部全部大好きなのっ!確かに始まりは、洗脳の様な形だったかもしれない…………。でも!」
シルヴェーヌは拳を握りしめていった。
「本当に………心の底から、愛しているの。」
そういうとジルベルト殿下が近づいてきた。なぜか、マリアリエ様は唖然としている。怖い、絶対に嫌われた。もうやだぁ。そう思って俯いていると頭を………撫でられた?
顔を上げてみると殿下は今までにないくらい優しく微笑んでいた。
「ごめんね。大丈夫だよ、シルヴィ。ちゃんとわかっているから。こうでもしないとダメだと思って。」
ジルベルト殿下がそういうと私をふわりと優しく抱きしめた。
「シルヴィ、貴女は我慢しすぎだったんだよ。たまには吐き出さないと壊れてしまう。私は貴方に甘えて欲しかったんだ。でも、貴方は何でも溜め込んで頑張ってしまうから………私には、甘えていいんだよ。」
「……!でもっ、王太子殿下の婚約者である私が感情的になってしまったらダメだから。」
「うん、だから私の前だけでは甘えて?ね?」
「…………いい……の、ですか?」
「大丈夫だよ。」
ジルベルト殿下がそういうと私の耳元でそっと、囁いた。
「私も、シルヴィのことを、心から愛しているよ。」
とても嬉しかった。それは幼い頃から何度か言われていた。それも嬉しいと思っていた。しかし、心のどこかでは疑っていたのだ『私のことを本当に愛しているの?』と。でも、今なら信じられる。なぜかはわからない。でも、殿下その切なげな声が私の心に響いた。
「では、婚約破棄は、しなくていいの?」
「そうだよ。もともとは貴女に感情を出して欲しくてしたことだから。」
「よかった…!」
「怒らないの?私は貴女に、とてもひどいことを言ったよ?」
「そうだとしても、それは心からではなかったのですよね?それよりも、ジルベルト殿下、貴方の愛を得られたことが、嬉しくて…!」
殿下が軽く目を見開いた。その後すぐ嬉しそうな顔をした。
「は?どういうこと?」
急に場違いな声が聞こえてきたのでその方向に目をむけてみると、そこにはマリアリエ様がいた。
「ジル様は私を愛してるんです‼︎シルヴェーヌ様!ジル様を離してあげてください‼︎」
マリアリエ様はそう言ってジルベルト殿下に近づくと、無断で殿下の腕を掴んで引いた。
「マリアリエ様!殿下に無断で触れてはなりません!離しなさい‼︎」
そう声をかけると、
「またそうやって睨む!私と殿下が愛し合っているからって意地悪するんだわ‼︎」
またしてもマリアリエ様は私を睨んできた。今のはどう見てもマリアリエ様に非がある。そう思っていると、
「離せ。」
そう、氷の様に冷たく尖った声が聞こえてきた。
「私はお前なんか愛していない。勝手なことは言わないでくれるかなぁ?」
殿下は笑っているけど目が笑っていない。しかし、マリアリエ様は気づかない。
「ジル様!ジル様はシルヴェーヌ様に騙されているんです‼︎早くこっちに来てください‼︎」
「誰か、こいつをここから出しておけ。」
「かしこまりました。」
警備の方がそう言ってマリアリエ様の手を後ろにやり、会場の外に連れ出そうとすると、
「離しなさい!汚い手で触らないで‼︎ジル様!助けてください‼︎」
「早く連れていけ。」
「ジル様‼︎何で!ジル様は私を愛してるはずなのに‼︎意味わかんない!私はヒロインなのに‼︎シルヴェーヌは悪役令嬢なのに虐めてこないし、ジル様は私を睨んでくるし、なんなの?離して!離しなさい‼︎」
そう言ってマリアリエ様は連れていかれた。
「もう大丈夫だよ、シルヴィ。さて、それでは皆の者!パーティーを再開しよう‼︎」
ジルベルト殿下がそういうと固まっていたものがほどけ明るい空気に満ちた。皆が笑顔になり、ダンスを始めた。
「シルヴィ、私達も踊ろうか。」
「はいっ!」
ジルベルト殿下が私の腰を、力強く、それでいてひどく優しく抱き寄せた。それは、いつもと同じはずなのになぜだかとても特別な感じがした。
「シルヴィ、どうしたの?」
「いえ…、なんでもないのです。……ただ、殿下が私を愛してくれていると思うと嬉しいのですが、とても恥ずかしくて、でも、幸せで。どうしたらいいのかわからなくなってしまって。」
思わず緩んでしまう顔もどくどくとなる鼓動も全て心地よくて。
「〜〜〜っ!かわいいことを言ってくれるね。顔、赤くなってる。」
かわいい、なんて!余計に恥ずかしくなってしまうわ。
さらに真っ赤に染まる顔を冷ます様に手の甲を顔に当てた。
「そろそろ曲が終わる。外に出ようか。」
私はジルベルト殿下に腰を抱かれながらバルコニーへ向かった。
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「シルヴィ」
ジルベルト殿下が砂糖菓子のように甘い声で私の名前を呼ぶ。
「はいっ!ジルベルト殿下!」
「ふふっ、緊張しすぎ。もっと力をぬいて。」
そう言うとジルベルト殿下は私の背を撫でた。
「んっ!……殿下、あのっ!」
「ジル」
「殿下?」
「ジルって呼んで。早く貴女の声で私の名前を聞きたい。」
「ジ、ル…さま?」
「もう一回。」
「ジル…さま」
自然と頰が染まる中、顔を少しあげると、ジル様は口元を手で覆っていた。
「ジル様?」
ジル様の男性的で大きな手の隙間から覗く肌は赤く染まっていた。それを見て私も赤くなってしまう。
「シルヴィ、おいで?」
そう言われて近づくとジル様は私を包み込む様に力強く抱きしめた。恥ずかしすぎて思わず目を固く瞑ってしまう。
「その顔、まるでキスをねだっているみたい。」
目をはっ、と見開くとその瞬間、ジル様の顔が目の前に迫っていていつのまにか唇が重なっていた。赤くなって混乱していると、
「ふふっ」
ジル様を見ると子供の様に笑っていたけど、とても照れている様だった。その様子を見ると私まで笑えてきた。
「愛している、シルヴィ。」
「私も愛しています、ジル様。」
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あれから私達は結婚した。仲が良く、深く愛し合っている。最近では…子どもを作ろうという話もしている。
ずっと不安だったけどジル様に甘えられる様になり、前よりもっと安心できるようになった。ジル様も私に甘えてくれて今では一心同体だ。愛おしくて愛おしくてたまらない。
愛おしい人からの愛に飢えていた少女はついに、真実の愛を手にいれたのだった。
読んでくださりありがとうございました!
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しかし作者は豆腐メンタルにつきまして、
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