Episode07/男女の性差(中)
(19.)
それから朝は一人で登校することになっていた。
昼休みには瑠璃に連れられ三人で集まり昼休みを過ごし、放課後は疲れてそのまま帰る。
ーーという流れで学校生活を送っていた。
下着については、あの日、帰り道に買おうとしてすぐに恥ずかしくなり断念してしまい、裕希姉に頼み込んで何着か買ってきてもらった。
その中にはブラジャーも含まれていたけど、それに関しては、まあ、やっぱりというか……着けたままでいるだけで蒸れてきて気になってしまい、相も変わらずノーブラ生活を送っている。
ノーパン生活よりはマシだから大丈夫だろう。
買ってきてくれた裕希姉には使っていないなんて言えないが……。
そして、ついに週末ーー金曜日の朝。
この身体になって初めて休日が訪れる、と感極まりそうになる。
そんなふうに考えながら普段どおり登校して、いつものように終わるーーそう考えていた。
だけど、今日は朝からなにかがおかしい。
「……いったい、何に対する感情なんだろう?」
教室に入り席に着いたあと、僕は理由なきイライラに襲われていた。
べつに、怒りの矛先はどこにも見当たらない。
怒る宛はないのに、無性に腹が立つだけという、勘弁してほしいタイプの感情の波に襲われていた。
「どうした豊花ちゃん。元気なさそうだな?」
「宮下……杉井でいいって言ったのに、みんな呼び始めてきちゃってるからやめてって言ってるだろ?」
「そりゃいい。杉井と呼ばれたいなら杉井に戻ることだな」
宮下は笑いながらそう口にする。
そう。
宮下が僕のことを「豊花ちゃん豊花ちゃん」言いつづけたせいで、その呼称が広まりつつあるのだ。
最初は宮下の友達が影響を受けて使い始めただけだった。
けれど、それを見ていたクラスメートの一部までふざけて言いはじめてしまった。
今なんて、会話もしたことのない女子からさえ、おちょくるように豊花ちゃん豊花ちゃん豊花ちゃん豊花ちゃん……ウンザリだ。
ゲシュタルト崩壊ではないけど、似たような感覚に陥りそうじゃないか。
ーーいや、矛盾していないか?
女の子になりたいと願ったのに、女の子扱いは何故か嫌がってしまう。
むしろ、今まで話しかけられた事のない女子からも声をかけられるようになって、望んだどおりの結果じゃないか?
「そういや今日は制服なんだな?」
「ああ、うん。先生が渡してくれたから着てきた。女子用の制服だけど、もう女物の服を着ること自体には抵抗感がなくなってきてるからね」
昨日の放課後、雪見先生が制服を渡してくれたのだ。
僕でも着れるサイズがあることにも驚きだったけど、丈などを測らず制服を貸してくれるだなんて思いもしなかった。
女子用の制服ではあるものの、既に女の子用のキュートなワンピースやショートパンツ、下着なんかを経験している身の上、制服ごとき、もう着ることに対してなにも動じなくなってきている。
それは素直にありがたかった。
それに、自分ではあるものの自分ではないこの身体は、僕からしたらかなり好きなタイプの容姿をしている。
だからこそ着替えて、鏡で自分を見ているだけでも案外楽しい。
着せ替え人形のような理屈かもしれない。
女子があんなにも化粧や服装、アクセサリーに気をかける理由が少しだけわかった気がした。
この身体の生活に慣れてきたのかもしれない。
とはいえ、未だに女子トイレじゃなく男子トイレに入りそうになったり……自分でパンツを買いに行くのは無理だったりするけ……ど……。
……あれ?
なんだかきょうの朝も眠い。
昨日も眠かったけど、こんなに眠くはなかったはず。
普段どおりの睡眠時間を取っているのに。むしろやや長く寝ているのに。
それに……なんだか体が怠い?
「おーい、豊花ちゃーん、聞いてるかー? おまえ顔色悪いぜ。大丈夫か?」
「う、うん。なんか、風邪ひいたのかも。少しからだが怠い。ちょっと授業始まるまで寝ることにするよ……」
僕は宮下に告げて、いつもの瑠衣みたいに机に顔を伏せた。
やっぱりこの身体、明らかに弱い気がする。
男から女に、しかも“16歳男子高校生”から“14歳小柄の弱々しい女の子”に、“身体だけ”が突如変わったからだよなぁ……きっと。
それに対して精神は変わっていないもんだから、男のときみたく動こうとして身体が悲鳴を上げているのかもしれない。
きっと、それを無視したのが祟ったんだろう。
そう考えながら、ほんの少しのあいだ眠りに落ちていった。
(20.)
昼休みになると、もはや恒例のように瑠璃と共に一年の教室に向かうようになっていた。
僕の教室に瑠璃がやって来ると、最初の言葉が「顔色悪っ!」だった。
「え? そんなに悪い?」
「見ただけで体調悪いのわかるわよ、それ。どうしたの、落ちてる物拾い食いしちゃったの?」
「いやいや……いつもどおり過ごしてるよ。なーんか眠い気がするし、怠いような気もするけど」
そもそも拾い食いなんかしていたら、すぐさまそれが原因だとわかるだけマシかもしれない。
思えば昨日も、ちょっとだけ疲れやすかった気がする。
そうすると、次第に病状が悪化しているのか?
「が、癌とかだったりしないかな?」
「……どうして癌に繋がったのかは訊かないわ。でも、そんなんで一々『癌かもしれない』って言ってたら、なんだって『癌かもしれない』になるんじゃないの?」
癌でがーんとならなくて一安心。
……こんなくだらないオヤジギャグを空想してしまうのは、やっぱりおかしいのかもしれない。
「とりあえず大丈夫。瑠衣ちゃんのとこ行こうよ」
僕は席を立ち上がるーーと、なぜか裕璃が席の近くに居た。
「た、体調が悪いなら、その、教室にいるか、保健室行くかしたほうがさ! いいんじゃないかな?」
裕璃からはなんだか溌剌とした雰囲気がなくなっていた。
言いにくい相手に向かって、頑張って意見具申しているような、そんなぎこちなさを感じてしまう。
そもそも、僕ではなく瑠璃を見ながら言っていた。
それじゃまるで瑠璃に対して言っているみたいじゃないか。
「あなたが裕璃ね?」
あれ、やっぱり瑠璃に言っているの?
二人の会話が始まるのを見るとそのようだ。
「え……そ、そうだけど……でも、どうして私の名前を?」
名前も知らない相手が自分の名前を知っているとは思わなかったのだろう。
裕璃はそれだけで動揺しているのが見てとれた。
「だって、凄いわかりやすいじゃない。彼氏がいるのに、どうして豊花を連れていく私を恨めしそうに睨んでいるの?」
「え、裕璃が睨む?」
睨んでいるようには見えなかったけど、瑠璃からしてみれば違ったらしい。
「違っ、睨んでなんかないよ。そもそもなんで彼氏がいるって……」
ごめん、僕が言っちゃいました……。
心中で懺悔した。
「実は私、動きや表情を見たりするだけで、そのひとがどういう感情を抱いているのかわかったり、軽いテストで、どんな状態かわかったりするの。“バイト”のお陰でね?」
バイトとは、つまり異能力特殊捜査官として働いているから、そういう技術が身に付いたと言っているんだろう。
「特に貴女は本当にわかりやすい。でも、自分ではわかってないんでしょ? もう一度訊くわよ? 彼氏もいるし、ほかの友達もいるのに、どうして豊花が取られそうになるだけでそんなに慌てているの? いいじゃない。彼氏さんや友達と仲良くしてれば」
「う、あ……か、彼氏も友達も大切だし、幼馴染みの豊花だって大切っ! ど、どうして彼氏ができたら豊花と離れなきゃいけないの? 私にはわからないよ」
裕璃は一見、真っ当なことを言い放つ。
だが、瑠璃は毅然としたまま、知らない子供に物事を教えるかのように言葉を口にする。
「それはあなたの考え方でしょ? みんながみんな同じ考え方はしていないの、わかる? 自分の主張を他人にまで強要するのはいけないと思わない? 特に男女の考え方なんてもっと違う。その行為であなたが傷つけているひとがいるって、理解できないの?」
「傷つくひとがいる……?」
「はぁ、言ってももう遅いけど、終わったあとだから教えてあげるわ。その様子じゃ、自分の本心がわかっていないんだろうけど、あなたって豊花が好きなのよね? もちろん、友達としてじゃなくて、異性として」
「……え?」
……は?
なにを言い出すのやら。
急に瑠璃が変なことを言い出したぞ?
「バイトで培ったこの技術にかけて断言できるわ」まあ、と瑠璃はつづける。「豊花の心はとっくにあなたから離れてるからね。残念だったわね、早く自覚すればこんな結果にならなかったのに。とはいってもーー告白されて格好いいからってだけで話したことないヤツと付き合う気になるうえ、すぐにセックスできるその軽い頭と股だし、豊花は助かったんじゃない?」
「ぶっ!?」
いきなりの下ネタ発言に、思わず噴き出してしまった。
言いそうだから心中で謝っておく。
それも僕が言っちゃいました……すみません……。
「セッーー!? な、なんで知ってるの!? べ、べつに、格好いいだけじゃなくてやさしく接してくれたし、年齢的にも彼氏がほしかったし、嫌いじゃないから付き合ってみただけであって、その、そんな先輩がどうしてもって、だから、その、え、エッチなことをしたから、軽いわけじゃーー」
「まさしく軽い女を体現してるじゃない。ねえ、少しは頭をつかってよ。よく考えみて? 付き合ったばかりの彼女にセックスしたいと頼み込む歳上の先輩なんて、本当にやさしいって言えるの? 高校生なのに妊娠したらどうするの? 私、そういうこと嫌いだから詳しく知らないけど、避妊具だって絶対じゃないんだからね?」
言い合いが過熱してきた。
「それはその、先輩が大丈夫だって言うから……」
「はぁ……もういい、面倒くさい。仕事でもないのになにやってんだろ、私。とにかく豊花はこれからも連れていくけど、なにか文句あるの? 瑠衣の社会復帰の鍵が貴女なんかのせいで使えなくなっていたらと思うとイライラするのよね。べつにあんたは彼氏とセックス楽しんでいればいいんじゃない?」
「ちょっ、いくらなんでも言いすぎだって!」
言い過ぎだと思い、僕は横から口を挟んだ。
まえから気になっていたけど、やっぱり瑠璃は裕璃に対して敵対心のようなものを抱いているようだ。
それは僕への好意からの発言ではないことは確かだ。
僕や瑠衣と話すときや、他のクラスメートと談笑するときと明らかに違う。
そう。言葉に遠慮が感じられないのだ。
「ーーっ!」
裕璃は顔を赤くして歯を食いしばる。
よく見ると、泣きそうな表情をしていた。
そんな裕璃を見て、瑠璃は後頭部を掻きながらため息を溢す。
「悪いけど、妹の社会復帰を妨害する因子になりかねない貴女は、豊花に近づけたくないの。ごめんなさい。だけどまあ、あなたの人生がお先真っ暗にならないための忠告くらいなら、してあげる」
瑠璃はそう言うとつづけた。
「妊娠検査キットを買って調べるとか、そのくらいしなさいよね。少し聞いてまわれば金沢紅一って男がどんな人間かくらいわかるから調べてみなさい」
「え、裕璃の彼氏が金沢だなんて、さすがに僕も言ってない」
ついつい弁明してしまった。
「あいつは金持ちで一見やさしくみえるけど、過去に二人の女の子を妊娠させてる。堕胎費用は出さないわ責任も取らないわ。相当酷い事しているらしいわ。あの女ーー金沢叶多の弟だけあって性欲に忠実なことね。泣き寝入りしたくなかったら、なにかあるまえにさっさと別れなさい。これ以上はなにも言わないから、よく考えてみて」
瑠璃は言い終えると、僕の腕を掴んで無理やり教室の外へと出るよう促した。
金沢叶多?
誰だろうそれ?
裕璃のことが気になりつつも、三人で昼休みを過ごす時間がなくなってしまうのはなんだか嫌だ。
そう考え、瑠璃に促されるまま椅子から立ち上がる。
「ねえ、豊花? まだ裕璃に未練があるのか、訊いてみてもいい?」
教室の外へ出ると、瑠璃は質問してきた。
一年の教室に向かいながら、僕は少し考えてから口を開く。
「とりあえず、恋人になりたいとか、そういった未練はもうないかな」
瑠璃がどこまで真実を言い当てられているのかはわからない。
けど、聞いていたかぎりじゃ、裕璃は僕が苦手なタイプの人間にすら思えてきていた。
格好いい先輩に告白されたからと、ほとんど知らない相手と試しに付き合う。
付き合った理由が試しなのに、一週間経たずに身体を許す貞操観念。
……裕璃は、もっときちっとしている印象を抱いていたけど、どうやら思い違いも甚だしかったようだ。
たとえ身体が男に戻ったとしても、好き好んで裕璃と付き合いたいとはもう思えない。
「そう、安心した。豊花には瑠衣もいるんだし、頑張ってね」
「へ? なんで瑠衣?」
なんで瑠衣の名前が、この流れで出てくるんだろう?
そもそも、女の身体の今の僕に対しても、瑠璃とのほうが会話しているのが現状だ。
それを踏まえても、わざわざ瑠衣を名指しで出す意味がまるでわからない。
だいたい、瑠璃とは二人だけで会話が成立するけど、瑠衣と二人だけじゃ会話が途切れてしまいそうだし。
あいだに瑠璃が挟まってくれないとスムーズなやり取りができない。そのていどの仲。
なのに……どうして瑠衣なんだろう?
そういえば、さっき妹のーーつまり、瑠衣の社会復帰を邪魔するな、なんて言っていた気がする。
「瑠衣の友達になってほしいって言ったじゃない」
「え、ああ、そういう意味?」
「もちろん、そうに決まっているじゃない。友達になってほしいの。……高校生になってから最初の友達に」
なんだか凄い重かった。
友達って言葉のなかに、胃もたれしそうななにかが込められていそうな気がした。
だいたい、話があまり合わないし、スイッチが入ると奇妙に笑いはじめるし、まだまだ友達にはなれていないと思う。
「豊花が来てくれるようになってから瑠衣、明るくなったのよ? やっぱり同じ立場だと親しみが湧くみたいね。その調子で、あの子を元気にさせてやってね」
「明るくなったんだ?」
元を知らないからなんとも言えない。
けど……まあ、こうやって毎日昼休みに集まるのは、なんだかつづけたい。
そう思えた。
(21.)
ひとつの机に僕と瑠璃、そして瑠衣の三人が集まって昼休みを過ごすことに段々慣れてきていた。
だけど、その日は調子が優れず、あまり会話に参加できていなかった。
そして、下腹部辺りが痛み出して、少しずつ悲鳴をあげ始めた。
「ーーっ!? な、なんだこれ……味わったことのない感覚がする」
「ちょっと、なにか腐った物でも食べたの?」
あれ、さっき同じことを言われた気がする。
なんて表現するのが正しいんだろう?
あえて男で説明するなら、ゴールデンボールに手のひらを当てて奥のほうに押し込んでいるような痛みがしてきたのだ。
「……っ! 豊花、考えていなかったけど、そういえば女になるってことは、つまり、そういうのも“ある”って意味よね?」
「え?」
お腹を擦りながら耐えようとするが、まったく意味がない。
なんだか股が湿っているような……。
瑠璃が瑠衣の鞄に勝手に手を入れたかと思うと、なにやら可愛らしいポーチを取り出して、その中からさらになにかを抜き取る。
「豊花、急いでトイレに行きなさい」
そう言いながら、瑠璃は瑠衣から奪ったなにかをひとつ投げ渡してきた。
「なにこれ?」
「わからない? ナプキンよ、生理用ナプキン。サイズは諦めなさい。無いよりマシでしょ」
「え、せ、生理……?」
普段、男の僕には関わりのない世界だから気にしていなかった。
けど、そういえば確かに、女性には特有の生理という現象があるのを思い出した。
どんなふうになるのかなんて知らないけど、漠然と大変らしいというイメージはある。
「早くトイレ行って、下着の上に敷いて。今始まったなら、これから酷くなるに連れて出血も増えるから、最悪下着から漏れちゃうのよ、わかる?」
「わ……わかった、行ってくる」
……出血。
そういえば血が出るらしいけど、詳しくは知らなかった。
だけど、これから酷くなるという点には驚きを禁じ得ない。
僕は嫌な予感を抱きつつ女子トイレへと向かい走った。
トイレに入り個室のドアを開け中へと入る。
最初はあれだけ緊張と興奮がさめやまなかったのに、今は女子トイレに入っても気にならなくなっていた。
個室に入ると、パンツを恐る恐る脱いでいく。
そこには……。
「げっ!?」
ーーピンク色のパンツが、赤黒い色のパンツに変わってしまっていた。
こんなに血が出るのかと、思わず意識が遠退きふらっとしてしまう。
どうにか堪えて、瑠璃から貰ったナプキンとやらを開封して取り出した。
くそっ、焦っているせいか敷きかたがわからない。
男時代には学ぶ機会がないことだから仕方ない。
こうか?
いや多分こうだ!
既に血の臭いを充満させている下着にナプキンを広げ、試行錯誤しながら配置しパンツを履きなおす。
なんか間違っている気もするけど、使い方に文句は言っていられない!
血の臭いがしているような気がして、気になって気になってしょうがない。
それと股がナプキンでごわごわしていて気持ち悪い。
いや、それより……。
なんだかこの痛みには慣れる気がしない。
誰かが子宮を鷲掴みにしているような、経験したことのない痛み。とにかく、この痛みから早く逃げたかった。
それと、股が常に血で湿っているというのは、意外にもストレスになってくる。
とはいえ、いつまでもここに閉じ籠っているわけにはいかない。
痛みに耐えつつ、僕は瑠璃たちの知識で助けてもらおうと教室に戻る。
教室に入ると、臭いが漏れていないか気にしながら瑠璃たちの元に向かい椅子に座った。
「どう? やっぱり生理だった?」
「うん、そうみたい……やたらとこの辺りが痛いんだけど、こんなに痛くなるものなの?」
僕はお腹を擦りながら愚痴るように訊いた。
「いや、人によるとしか言えない。だって、私は軽いけど、瑠衣は重いもの。姉妹なのにこんなに違うんだから、他人のなんてもっとわからないわ」
軽いとか重いとかの基準がわからない。
が、とにかく苦しいことだけは間違いない。
あれかな、異能力者だからさらに辛いとか?
女になった代償だったり?
ならいつでも自由に性別変更に異能力を変えてくれ!
「きょうの豊花はちょっとダメそうね。保健室行って鎮痛剤貰って飲んできなさい。そのまま腰を暖めながら帰りまで寝かせてもらったほうがいいわよ?」
鎮痛剤!
その手があった!
「ごめん! 保健室行ってくる!」
「はいはい。行ってらっしゃい」
「豊花、さよなら」
「うん!」
二人に別れを告げ、僕は保健室に向かって走るのだった。
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