Episode77/神(後)
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目が覚めると、見慣れた天井がそこにはあった。
「宮下くんたちが運んでくれたのよ? だから危ないことに首を突っ込んじゃいけないって言ったでしょ?」
母親は私を嗜めるように言う。
どうやら宮下たちが自宅まで運んでくれたらしい。
ベッドに横たわりながら、さっきの現象を考える。
ーーあれは直観などではない。
「ちょっとお母さんリビングにいるから、なにかあったら呼んでちょうだい」
そう言い残して母親は部屋を出ていった。
その寸刻、私の目の前に私と全く同じ容姿をした人間が現れた。
「え?」
「ああそうさ、私は神だ。私の予言はどうだったかな?」
神と名乗る私の姿をした人間が、私を無視して会話をつづける。
私からすれば、自分の姿をした人間が部屋に現れたのだ。驚き以外のなにものでもない。
「私は神だ。どうだ、弱い心の人間に力を与えれば世界に平穏が訪れると思っていたが、結果はどうだ? 半数は力を使い悪事を働く。失敗だ。これでは平和は訪れない」
「神だって? ドッペルゲンガーじゃないのか?」
「ははは」神は笑う。「笑わせてくれるな。神はそこにいるじゃないか」
神は私の胸を押さえてみせる。
「意味がわからない……」
「鏡のがを抜いてみろ、かがみ、かみ、ほら神だ。我は神、そういう意味さ。神は皆に宿っているのさ」
わけがわからない……。
「どうして私のまえに現れたの?」
気になる質問を投げ掛ける。
「地球の崩壊を見ただろう? このままだと地球は破滅を迎える。君は唯一無二、異霊体と会話できる存在だ」
「会話ができるからって、どうしてそれで地球を救うことになるんだ」
「君の存在意義、レーゾンデートルは地球の破滅を防ぐことだ」
そんなこと言われても、私の力じゃどうにもならない。
「それ、澄が動き出すぞ」
「澄が……なら、神様がどうにかすればいいじゃないか!」
「私は傍観しかできないのだよ。澄を説得して地球の破滅を食い止めて見せたまえ。きみには期待しているよ?」
その後、神は末恐ろしいことを言い出した。
「まあ、地球が滅亡したら新たに作り直すだけだけどさ」
神はつづけた。
「異霊体を入れたのは間違いだった。結局弱い人間は暴れる行為につながる。結局弱い人間も力を手に入れたら暴力を振るう道を選ぶのさ」
「待ってくれ! 話の全貌が掴めない!」
「さあ、澄はいま揺らいでいる。あれは地球破壊装置だ。味方にいる間は心強いが、地球の敵になったらどうなるか、楽しみではあるね」
「ちょっと待ってくれ! 私には澄を止める力なんてない!」
わけのわからぬ事態に混乱してしまう。
「言葉があるじゃないか。きみにはね。では、また会おう。私よ」
そう言うなり、神はスーっと姿を消した。
澄を止めろだって!?
無理に決まっている!
力づくじゃ無理だし、会話も成り立たない。いったいどうすればいいと言うんだ。
とりあえず沙鳥さんに連絡だ。僕一人では手の打ちようがない。
こういうときにかぎって電話にでない!
私は急いで愛のある我が家に向かうのであった。




