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episode240/自宅訪問、打倒すべき相手ーー決心

(354.)

 翌日、神奈川県とは思えないほど田舎な雰囲気を醸し出した、過疎とまでは言えない程度の田舎の最寄り駅まで到着し、沙鳥と二人きりで祖母の家に着くまで続く、若干辛い坂道までやってきていた。


 道中はほとんど会話の振る内容が思い付かず、ただただ無心で歩いていた。

 しばらく歩くと、市道から逸れた坂道があり、この地味に登るのがつらい坂道を、沙鳥とゆっくり登っていく。


「神奈川県にあるというのに、随分と田舎風景が広がっているんですね?」


 沙鳥は息を切らしながら、私のあとに必死に汗を流しながら登ってくる。


「もうすぐです。ーーあ、ほら祖母の家が見えてきました」

「あの、以前から気になっていたのですが、どうして敬語とため口が混ざっているのでしょうか? 私に限らず」

「あ、えっと……さすがに年上や先輩だと思うと、たまに敬語が出てしまうんです……いや、出てしまうんだよ」

「そういうことですか」


 沙鳥は特別気にしていない様子で歩き続けると、そこそこ大きく並以上に広いがーー見た目は古くさいーーいや年期の入った建物が威風堂々と建っていた。

 私は緊張しながらもチャイムを鳴らす。

 しばらく、いやたった数分だったか?


 やがて玄関が開いた。


「あの……どちら様ですか?」


 玄関を開けた先にいたのは、私の親戚かつ二歳年下の石川渚(いしかわなぎさ)という名の男子中学一年生だった。


「あれ? おばあちゃんに聞いていない?」

「いや、こ、これといって特には……」


 渚は緊張しながらも、こちらの出方を待っている。

 外の奥の廊下から、母方の祖母が顔を出した。


「お主が杉井豊花だね?」


 祖母が言うのを聞いて、渚は「え?」と呟く。


「そう」渚の方を向く。「ほら、私だよ私。いやーー僕だよ僕、豊花」

「ええぇ……」


 半信半疑なのか、渚は未だに受け入れられない様子で、少しの間フリーズする。


 祖母は、「あなたが噂に聞いた豊花の上司の嵐山沙鳥さんだね? 実家だと思ってくださいな」と沙鳥に言う。

「ありがとうございます」


 未だに混乱している渚を他所に、祖母は玄関の隣にある扉を開けて、中に誘導する。

 相変わらずソファーは汚いが、窓際と壁際に置かれたソファーは併せて8人は座れそうになっていた。

 ……前回はもう少し小綺麗なソファーだったが、経年劣化なのか、ボロさが進化している。


 諸行無常なり……。


 私はなるべく目立たないようにソファーの端っこに座った。

 沙鳥も、私の隣に自然と座った。

 渚も気になるのか反対側に座る。


「さて、おばあちゃんから訊きたいことがたくさんあるんだけど、訊いてもいいのかしらね?」


 訊きたいことがたくさん?


「まず、両親の葬儀にどうして出席しなかったの?」


 グサリ!

 ルーナエアウラと特訓をしていて、そんなことに気が回らなかったーーとは口が裂けても言えない!


「お姉ちゃんはちょくちょく顔出ししていたのに、あーた、一回も来なかったでしょう?」


 この話題を筆頭に、愚痴愚痴説教がはじまってしまった。


「おばさま、豊花さんにはのっぴきならない事情がありまして、それに墓参りは定期的に行く予定ですので、どうか容赦してくださると助かります」


 沙鳥はナイスアシストを入れてくれた。


「まあ、ものは言いようだね。まったく」


 それから他愛のない話から、確信に至りそうな話題は避けるために上手く会話を誘導して、時間をひたすら潰したのだった。





「まあ、話し込んでいたから夕方になってしまったわね」

「そ、そうですね。料理の準備に取りかかります」


 渚が率先して料理の用意を用意しはじめた。

 私も手伝ったほうがいいかもしれないと台所に行ったけど、初っぱなから戦力外にしかならず、私はなにかやってますよ~と雰囲気を醸し出して、実質雑用しかしてない自分に絶望を抱いてしまっている。

 風呂の準備ができたので、真に女性である沙鳥から風呂に入ることに。


 沙鳥が風呂から上がると、天然パーマが直毛に変わっており、ピアス? いや、イヤリング? なども外しており、ただでさえ童顔なのに、綺麗な装飾品もはずしているせいで、さらなる童顔が際立っている。


「あらまあ、髪、伸ばしたほうがかわいいわよ?」


 と、祖母に言われてしまった沙鳥であった。

 あれは癖毛なんだけどね……。

 あとは、晩御飯食べてきょうは泊まっていくわよね?ーーという祖母からの提言に憂鬱になりながら夕飯を共に食べた。






 寝る直前、私は澄を打倒する作戦がひとつも見当たらないことを悩んでしまう。


「無理にすみさんを打倒することばかり考えるのはよくありません」

「と、いうと?」

「澄さんは私たちが束になっても勝率はありません。が、澄さんを操っている自称神は必ず最終決戦の場に現れます。ここは澄さんを狙うのではなく、神を狙うのが得策では?」


 たしかに、一利ある。

 しかし、澄をつくった神を果たして倒せるのか?


「倒せます。1/100の確率で……それには、相手の油断を誘って……とにかく、戦闘特化の澄さんよりは勝率があるでしょう」


 そして、ある作戦を話し合った。

 私と沙鳥とフレア、みこ、可能なら瑠奈や舞香を使えば、限りなく勝率を上げられる作戦が立てられた。


「さあ、最終決戦の始まりです」

「あ、はい……」


 勝てるかは不明。

 それでも、やっと、少しだけ、矮小な運頼みレベルで、勝率0を勝率2くらいには上げられるかもしれない。


 このまま全滅をするよりは遥かにマシだ。


 決戦まで、あと少し!

 かつてないほど自信がある!

 いや、自信がなくてはならない。 


 最終的な目標は、神を抹殺し、澄を仲間に引き入れること。

 難しいかもしれない。


 でも、私たちの敵は、澄じゃなくて自称神なんだ!

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