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Episode239╱召集

(353.)

 皆で揃い、ひとまずは愛のある我が家まで行くことにした。

 みんなの顔色は暗い。

 それは当然だ。余命が七日間と告げられたようなものなのだ。


 でもーー。

 ーーなにかがわかった。


 さきの一戦で、私は幾つもの未来を実際に体験したかのように見て未来を選んで決めた。

 発動条件はわからないが、どうやら私には未来を読み選ぶ力があるらしい。

 愛のある我が家に到着し、みんなでぞろぞろコンビニから入り201号室に向かう。

 その間、無言。重苦しい空気が漂っていた。

 室内に入り、みんながそれぞれの定位置につくと、沙鳥から口を開いた。


「まず、この件を誰に相談するのか決めましょう」

「誰にって?」

「煌季さんは必要でしょうから先ほど帰還まえに伝えておきました。澄さんを倒す勝率を少しでも上げるためですが……」


 沙鳥はそう口にするが、とてもじゃないが人数が増えたとして勝算が上がるとは到底思えない。


 と、そこで私の携帯が空気を読まずに鳴り始めた。

 恐る恐る画面を見ると、そこには杉井キヨという名前が表示されていた。

 出るか否か迷っていたが、沙鳥は手をこちらに向け、暗に通話に出ろと指示してきた。

 こんなタイミングで母方の祖母から連絡が来るとは思ってもおらず、悩んだ末、一応通話に出た。


『もしもし? 豊花かい?』


 懐かしいお祖母ちゃんの声が通話口から聴こえてきた。


「あの……いきなりどうしたの? なにかあった?」

『私の娘が理不尽に亡くなって、豊花は豊花でーーんん? あなた豊花じゃないでしょう?』


 あ、懐かしい。このやり取り……。

 特に田舎(といっても県内だが)に住む祖母や祖父、あちらで暮らす親戚たちには、私が女の子になっているだなんて知らされていないんだ。


「正真正銘、杉井豊花だよ。異能力者になっちゃって。能力の内容が女の子に変貌して戻れなくなるっていうものなんだよ」

『俄には信じられない……とはいえ、女の子になろうがなんだろうが、母親と父親を亡くしたというのに、あんたはまだ我が家に報告もしに来ていないだろう? 明日、少ないながらも親戚も集まるから、あーたもいい加減に顔を出しなさいな』

「いや……いまはそれどころではなくて……」


 そこまで言いながらも、考えてみたら愛のある我が家のメンツに私がいても、役に立つビジョンがまるで見えない。

 それに、もしも来週、本当に、いや確実に世界が滅ぼされるのだとしたら、長い間会っていなかったおばあちゃんやおじいちゃんに人生最後として会っておくのもありかもしれない……。


「豊花さん。今から一週間後には地球滅亡か人類存続のどちらかに未来が決まるのです。親孝行とはいえませんがーーというより豊花さんはもう親孝行はできかねますが、せめて祖母や祖父に顔見せくらいには行ってもいいのではないでしょうか?」

「だけど最後の戦いの直前なんですよ?」


「下手したら世界は終わるでしょう。それに、祖母の自宅でも学べることはあるかもしれません」それに……と沙鳥は付け足した。「来週までの期間に限り、死ぬことを想定して各々やりたいことに専念して結構です。無論、各自自主練と対策を練ることを並行的にやっていただきますが」


 沙鳥は普段とは異なる暗い雰囲気のまま、皆に対してそう告げた。


『で、来てくれるのかい?』

「……」辺りにいる愛のある我が家面々に視線を巡らせ、深いため息をつく。「わかりました。お邪魔させていただきます」


 と、私が言い切った直後に沙鳥が追述をはじめた。

 一応、スピーカーに切り換える。


「はじめまして。豊花さんの所属する組織の代表を務めさせていただいています、嵐山沙鳥と申します」

『あら、嵐山……沙鳥さん?』

「はい。可能ならで構わないのですが、私も豊花さんの付き添いとしてそちらにお邪魔させていただいてもよろしいでしょうか? ご迷惑はお掛け致しません」


 暫しの沈黙……数秒だか数分だか体内時計では計れない、短いような長いような時間が経過した。

 時計を見ると、実際には分も経過していなかった。


『あらあら、豊花の友達ね? ええ、ええ。もちろん歓迎いたしますよ』

「ありがとうございます」

『ではでは。』


 意外とスンナリ沙鳥のことをキヨ婆さんは受け入れてくれた。


 ……?

 ーー?

 ……………………!?


「ちょっと待ってよ!? どうして私の実家に沙鳥まで来る必要があるの!?」


 いきなりのことで頭が混乱してしまい、普段なら突っ込んでしまっているであろう部分もスルーしてしまっていた。


「最終決戦の前に、愛のある我が家の面々は、もしかしたら亡くなる可能性があるからと、各々やり残したことがありませんように、基本的には別々に行動をしているのです」

「例えば?」

「あまり言いたくはありませんが、たとえば舞香さんの例なら、どうせなら死ぬ前に覚醒剤を摂取したいという気持ちがあるかもしれません」


 覚醒剤……たしかに沙鳥がいたら舞香も使いにくいだろう。

 でも、だからといって、せっかくやめていたものに再度手を出すのだろうか?


 瑠奈は蒼井碧やアリーシャといちゃつきたいらしく、ゆきは意気消沈といった面持ちで地面を眺めている。


 他にも各自やりたいことをやりたいといった出で立ちだ。

 


 ーー仕方なく、私は頷き、珍しく沙鳥と二人ででかけることになったのであった。



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