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Episode237╱平行世界から這い出る存在(前)

(348.)

 あとはいくら対策を立てても無意味だと悟りながらも、愛のある我が家面々と雁首並べているだけで、誰も言葉を発しない。


「でも、どうして神が直接天罰を下しに来ないんだろう? さっきだって宣戦布告してきただけで帰っちゃったし」

「ふむ……それはいったん置いておきましょう。敵には違いないのです。やはり用いれられるのは、舞香さんの相手を傷つけない転移と、鏡子さんの目潰し。みこさんも微弱ながら効果はあるかと。宮田さんの神殺しの弾丸と」わたしに顔を向ける。「神殺しの剣を担いつつ、異能力の世界や神から遠回しに警戒していたのを考えると、やっぱり、宮田さんと豊花さんは対決してもらうことになります」


 それは、まあ仕方ない。


「異能力者保護団体の上階にあるスポーツ部屋モドキをお借りして、各自ちからを磨いておいてください。戦闘要因ではない香織さんは、澄さんの居場所のチェックと、念のため情報収集をしておいてください」


 沙鳥の言葉に香織は頷く。


「では、残り時間はあまりありません。今から電話で予約を取ります。横浜に赴いて訓練です」






(349.)

「いらっしゃいませー……なんだ、愛のある我が家か」


 未来さんはぶっきらぼうな返事をする。


「まあまあ。仲良くしましょうよ~」


 近場にいた煌季さんが仲裁をする。


「で、なんの用だ?」

「その……」「上階にある訓練ルームを使わせてほしいんです。ご了承いただけませんか?」


 さすが沙鳥、愛のある我が家リーダだけあって貫禄が違う。


「べつにかまわないが、いったいーーああ! 神造人型人外兵器打倒のための訓練ね。なら好きに使ってやってくれ。あそこは平日は人が少ないんだ」


 それはまあ……端から見たら病院然としており、その真実は異能力者保護団体。

 異能力者の数は一定数しか現れない。減りも増えもしないのだ。さらに1000人1人、いや、こどもの場合にかぎり1000人や2000人にひとりだろうし、精神が成熟しきった大人の異能力者の絶対数はもっと少なくなるのだろう。

 そんな場所なのに、国が早とちりして市役所並み、いや、それ以上に高層の建物

にしてしまった。

 ーーああ、未来さんに最初に来たときに教えてもらった気がする。


「それじゃ、勝手に向かうわね」


 舞香は返事を待たずに通路へ向かった。


「道案内は?」

「大丈夫よ。過去に一度ここで籠城していたくらいだしね」


 舞香は記憶を便りにエレベーターで指定の階のボタンを押す。

 隣には、なぜか煌季さんまできていた。


「さすがにないと思うけどぉ、怪我したら治してあげる必要があるじゃなーい」

「あ、ありがとうございます」


 談話をしながら、エレベーターは指定の階まで昇る。

 到着すると、あのビルにこんな大きな部屋があるのか、と前回よりは弱めに突っ込んだ。脳内で……。


「さて、本題ですがーーまずは攻撃のトレーニングです」


 沙鳥は説明をつづける。


「まずは微風瑠奈さん。傷つけられないように風の防壁を張ってください」

「おっけぃ」


 瑠奈の周りに微風とは名ばかりの狂風が辺りに吹き荒れる。バサバサと皆の衣服がばたつく。


「宮田さんは普通の銃弾で、豊花さんは……」


 私は辺りを見渡し、体育館ーーじゃなかった室内の端にある竹刀を手にした。


「みこさんは弱めのビーム攻撃で応戦。鏡子さんはチャンスが巡ってきたタイミングで相手に赤の他人の視界を被せてみうごきできなくするようにお願いします」


 なるほど。竹刀や単なる銃では当たっても意味がない。しかし、本物を使うと大事な貴重戦力がひとり亡きものになるかもしれないのだ。


 みんなでそれぞれ視線をかわす。

 沙鳥の言いたいことが伝わったのだ。


 つまり、この竹刀は神殺しの剣判定。宮田さんの銃も単なる弾丸だが神殺しの弾丸扱い。みこのビームは一番強烈かもしれないが、澄にはほとんど効いていなかったから、あまり期待はできないかもしれない。


「つまり、この体育館染みた場所で、相手の攻撃に当たらなければいいんだよね?」

「はい。あなたに当たった判定は、風の防壁で武器が吹き飛ばされたらです。四人の攻撃が体表の風の刃に当たらなければ、あなたの勝ちです。逆にすべての武器が通用しないか、瑠奈さんが相手に小突く程度のダメを与えれば、豊花さんたちの勝ちです」


「よーし、やっちゃうぞ!」


 瑠奈だけやけにハイテンションだ。

 まあ、最近は本当に命のやり取りばかりだったしな……。








(??.)

「あの子たちにサービスし過ぎたし、ボクも自分に少しサービスしようかな。ね?」


 謎の空間。澄もいない秘密の場所に、そいつはいた。

 そいつが椅子を回転させ振り返ると、そこにはーー。


「殺したい殺したい殺したい殺したい!」と憎悪を滾らせる14歳の少女。名前は杉井豊花という。


「こっちの世界には、亡くなってしまった……沙鳥が……いるんだよね?」と口走る二十代前半の女性。名を、青海舞香という。


「汚い薄暗いもうやだもうやだ!」と、泣きながら施設をひとりで崩壊せしめた12~3歳くらいの少女。名を霧城ゆきという。



 大丈夫。彼らなら倒してくれるからさ……。



 平行世界を持つボクに、果たしてあの子たちは勝てるだろうか?






 勝って証明してくれ。人はそんなに脆弱ではないと!





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