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Episode236╱対策会議

(347.)

 2月21日。

 日曜日の昼下がり、電車に揺られながら川崎を目指していた。

 隣には瑠奈、みこ、宮田さん、都がいる。ゆらーり……四月一日有紗は愛のある我が家と実質無関係であるためお留守番だ。

 沙鳥に連絡して、愛のある我が家のアジトで緊急会議をすることが決まった。今回の議題は澄に対するもの。数少ない神を討伐するための武器がある宮田さんとみこは、愛のある我が家メンバーではないものの会議に加わることとなった。

 川崎に到着し、いつものコンビニへ向かう。


「澄……明らかに普通じゃなかったね」

「あいつに、神に操られているんだよ」


 瑠奈は言い切る。

 たしかに、あの感じは完全に神の力で操られていたと言っても過言じゃない。


 コンビニに到着すると、タバコの空欄を指名し、カウンターを開けて中に入る。

 スタッフルームにある階段を登り、201号室を瑠奈が解錠する。

 そのまま五人で室内に入った。

 部屋の中には、ソファーに沙鳥、舞香、対面に鏡子、朱音が座っており、床にゆきが座っていた。香織は壁に向かって備え付けられたパソコンの前の椅子に座っていながらも、視線をこちらに向けた。


「あーかね!」


 瑠奈が颯爽と朱音の背後に立ち抱きついた。


「瑠奈……今はそういう雰囲気じゃないだろう」


 朱音は沈痛な雰囲気で瑠奈を離す。


 都がテーブルから少し離れた位置にあぐらをかいて座ると、宮田さんとみこも床に座った。私も床に座る。


「さて、集まりましたね。まずはお話を聞かせてもらいましょうか」


 沙鳥は視線をこちらに向けて言う。


「さっき話したとおりだよ。神と澄は同時に現れてーー神は私の姿をしていたけどーー宣戦布告したあと去った」

「え、わたしの姿だったじゃん」

「いやいや私の姿っすよ」

「え……俺には俺の姿と声だと思いましたが」


 瑠奈も都も宮田さんも、皆が皆、神は自分の見た目と声色だったと主張する。

 つまり、見るひとによって見える姿が違うのだ。


「神は己の中に。鏡の間を抜いたら神になる。つまり、神はそれぞれの人に宿っている。だから自らの姿で現れるのかもしれない」


 朱音は謎の主張をはじめた。

 でも鏡の話はまえに神からも聞いた記憶がある。


「澄……元気だった?」


 ゆきは澄が気になるのか、一見この場で語る必要のないことを問う。


「いや、神様に操られている感じだった。まともに会話すらできない感じだったよ」

「そう……」


 ゆきは悲しそうに目線を下ろす。


「わたしの風の刃もみこの閃光もまるで効いていなかったよ」


 瑠奈の言うとおり、私のフレアの力も、瑠奈の風の力も、みこの力もまるで意味がなかった。常人だったらあの攻撃だけで十回は死んでいるだろう。


「宮田さんの銃や豊花さんの剣はどうでしたか?」

「避けていましたね」

「私は……」


 斬れなかった。

 どちらにせよ当たらなかっただろうが、私は剣を取り出すのを躊躇ってしまった。


「やはり宮田さんの神殺しの弾丸と、豊花さんの神殺しの剣は必須ですね。問題は、私たちの異能力がどこまで通じないかということ。少しまえに私は澄さんの心が読めないときがありました。神に操られ窓から出ていったあの日です。ですが普段は読めました。だから異能力はなにもかも通用しないということではないと思います」

「でも、多分だけど、直接被害を与える異能力は効かないんだと思う」


 今までの澄を見てきたかぎり、この予想は当たっているだろう。

 つまり、都の無限弾による銃撃や、ゆきの威力の上がったパンチなどは無意味だろう。


「そうですね……とはいえ、私の読心、舞香さんの損害を負わせない転移、香織さんの視力強化での相手を監視、鏡子さんの視界を剥奪辺りが効くかどうか」

「……今……澄さんの視界を見ました……真っ暗な空間しか……映っていません……」

「おそらく効いてはいるのでしょう。神によって謎の空間にいると考えた方が正しいと思います。いきなり現れないともかぎりませんので、問題が解決するまでは澄さんの視界を監視しておいてください」

「……はい……」


 鏡子の異能力は間違いなく効く。それは今までが証明している。

 少し考え付いた。


「鏡子の異能力で澄の視界を被せて、その隙に宮田さんの銃を当てるのはどうだろう?」

「いい案かもしれませんが、視界を奪った程度で澄さんが止まるでしょうか? 逆に無差別に暴れ出して被害が大きくなるかもしれません」

「でも、それこそなにかしないとあんな早いのには当てられないんじゃない?」


 澄の早さを見ていた瑠奈はそう言う。


「あの! さっきから倒す話ばかりですが、私はそもそも澄さんを倒すのには反対です! そういう契約で協力することになったはずです!」


 みこは立ち上がり、大きな声で当初からの主張を曲げることなく意見する。


「倒さなければ止まらない……とすれば、もはや手はなくなります。ですが、みこさんの願いを叶えるためにも必ず無力化するーー倒さなければいけません。殺すではなく倒すと言っているのは、つまり殺すのが目的ではないと言っているのです」

「殺すじゃなく倒す……」


 みこは納得したのか、興奮を抑え床に座る。

 でも、殺さず倒すなんてさらに上級技、私たちの力で成し遂げられるのだろうか?


「とにかく、今回の事態は国や世界の問題でもあります。他に有用そうな異能力者を探すためにも異能力者保護団体に手伝ってもらいましょう」

「そうしたほうがいいわね。っていうより、もっと早い段階から探してもらっといてもよかったわ」


 舞香は沙鳥に同意する。

 それには反論はない。


「あとはーー豊花さんの異能力、異能力の世界は豊花さんの異能力を警戒していました。その理由は神に聞いたからだと推測します。神とやらも、豊花さんだけ特別扱いしている気がします」

「それは……たしかにそうだけど。未だに理由がわからないんだ」

「とりあえず豊花さんは、自らの力を考えてみてください。そこになにか手があるかもしれません」

「……」


 私の力……。

 今までも、敵対者などから、私の真のちからは危機察知なんかではないと言われたりした。

 それに記憶を辿ると、明らかに私の異能力ではおかしいと思えるようなちからも発動したこともある。

 たびたびあったが、一番記憶に残っているのは、瑠璃の命の危機を察知し、前以て対策できたこと。

 どうやって発動するのかはわからない。けど、あれは直感なんかではなかった。無論、感覚でも思考でも感情でもない。


 あの力は……いったい……。




 

誤字報告助かります!ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

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