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Episode234╱江ノ島デート?

(345.)

 今週の土曜日が来る日まで、がらにもなくドキドキした感情が止まらないまま、2月20日の土曜日がついにやってきたのだ。


「おはよー」


 風月荘の玄関のドアをガラガラ開けると、そこには瑠璃が佇んででいた。

「さあ、江ノ島にいくわよ?」

 約束をしていたのを思いだし(いや、わすれていたわけじゃないんだけど)、手早く普段着に着替える。


「電車に乗って江ノ島海岸まで行くわよ!」

「は、はい……」


 幸い、近場にある小田急線の一部の電車に乗れば江ノ島程度ならすぐつくだろう。

 と、ふと疑問を抱いた。


「瑠衣や他の仲間は連れてこなかったの?」


 瑠璃は少し機嫌を悪くしながら。


「デートに余計なちゃちゃいれられたくないじゃない」


 それは……一理ある。

 こんな成りをしているけど、私だって元は男。同じ気持ちは少なからず理解できる。

 長い電車に乗って、瑠璃と雑談を交わし和気あいあいとする。

 瑠璃はどうかは知らないけれど、私からしてみれば初恋の相手かつ二人きりのデートとなると、どうしても胸が高鳴ってしまう。


 ようやく江ノ島につくと、瑠璃は颯爽と島に架かる橋を見つけて素早い速さで駆け寄っていく。


「城ヶ島と比べると人口密度がすごいわね。それに栄えている! わたし個人の意見だと、人混み嫌いだから苦手なんだけど……お腹もすいたし」

「大丈夫大丈夫! ほら、タコ煎餅とか売っているじゃないか。あと城ヶ島は観光スポットじゃなくては、昔の城ヶ島とは違って教育部併設異能力者研究所なんてバカデカイ研究施設を建てたからじゃない?」

「そりゃそうだけど……うっ……ごめん聴いた?」

「うん。ぐぅ~ってお腹の音が」


 私はピリピリし始めた瑠璃に対して、おもむろにタコ煎餅屋に歩きだし、やや大きめのタコ煎餅を2つ受け取った。

 片方を瑠璃に渡して、仲良くパリパリ食べはじめた。


「意外と美味しいかも?」


 名前から勝手に奇抜な商品なのかと勘違いをしていたけど、いざ食べてみると、案外癖になるような香ばしい味わいが口内に広がって美味である。

 瑠璃も同じく、バリバリ素早く食べて、『意外に美味しいじゃない』と絶賛していた。


「でも、せっかくここまで来たんだから、一度は生しらす丼を食べなきゃね。飲食店を探しましょうよ」

「あ、うん」


 デートだというのに、瑠璃に主導権を握らせられてしまっている気がするのは気のせいなのだろうか?

 いや、きっと気のせいなのだろうか。

 だいたい男がリードしなければいけないなんて昭和時代の考え方だ。


 生しらす丼が食べられる飲食店に入り、二人とも同じ生しらすを頼んだ。

 やがて運ばれてきたのは、新鮮なしらすがふんだんに使われたしらす丼だった。

 生涯一度も食べたことのない生しらす丼。

 瑠璃はご満悦そうに味わい、尚且つ食べるのも早い!


 負けじと私も生しらすに箸をつけ、口に頬張った。

 最初はプチプチつぶれ甘いしらすの味がしたかと思えば、急に苦味が口内に広がってきた。苦い物全般が苦手な私としては、なかなか食指が動かない。動きそうにならない。

 しかし残すのはもったいないと考え、ごく稀に吐きそうになりつつも、どうにか生しらす丼を平らげた。


 ………………もう、生しらすを食べるのはやめることにしよう。


「じゃあ腹ごしらえも出来たことだし、神社に並びましょ!」


 うげ~、もう腹一杯で動けないんだけど……。

 しかし、抵抗は虚しく(そもそも愚痴を口に出していないからだろうけど)、瑠璃と共に長い階段を登りつづける。

 周りの参拝者は小銭を賽銭箱に投げ入れようと躍起になっている。


 この場に、現代に生きる魔術師(自称)であるクレイジー魔女っ子、何 美夜さんがいたら、いちいち口を酸っぱくして、ここにいる参拝者に向かって『神社の賽銭はなるべく音を立てないように近場から軽いちからで落とすのが正しいやり方なんだ!』

 とか愚痴愚痴言い出すのが容易に想像がつく。

 美夜さんがいなくて助かった。


 さらに言えば、きっと美夜さんがいたら『参拝の仕方がなっていない! 流派により違うとはいえ、基本的に二礼二拍手一礼からうんぬんかんぬん鳥居は真ん中を通ってはイケない神様の通り道だから云々かんぬん』と、電波を受信するハメになっただろう。

 自称魔女っ子は、いちいち細かなところを突っ込んでくるんだよなぁ……あんなひとにも師匠がいると小耳に挟んだことがあるけど、美夜さん以上の電波なのだろうか?


 たとえば、以前美夜さんと雑談していたときにも、『神社は願望を伝える場所ではなく、私は必ず願望を叶えるので見守っておいてください、と誓いを立てるのが神社の正式な参拝の仕方なんだ』と断言していた。


 まあ、なんだ?

 美夜さんが毒電波を吐き出すのは、死ぬまで治らないのだろう。


「やっと私たちの番ね?」


 瑠璃はお賽銭をポケットから取り出すのを見て、私もいそいそとサイフから小銭を取り出した。

 妄想内で謎の美夜さんが語りかけてきた内容を思い出せず、瑠璃の真似をしてお賽銭をお賽銭箱に勢いよく投擲してしまった。


「なんのお願いしていたの?」

 

 瑠璃は純粋無垢な瞳で、私の目を凝視してくる。


「言いたくないの? まさか酷い内容!?」

「そんなわけないじゃないか。……ただ」

「ただ? 次につづく言葉は?」


 恥ずかしさから、なかなか言いにくい雰囲気が立ち込めてきた。


「み、みんながこれ以上死ぬことはなく、澄を生かしたまま討伐して、元の愛のある我が家との関わりが持続すように。そして、瑠璃ともっと仲良くしたい」

「願い事長いわねー……ん? ……で、でも、そな、最後の一文はなんだか嬉しくなる」


 こういうのは言われたりすると、なんか……なんというか……むしろこちら側が恥ずかしくなるんだけど……。

 



 こうして、たまにの休日、最愛の人と共に江ノ島デートを満喫したのであった。




『ブクマ』『評価』『感想』『いいね』をしてくれているひとたち、本当に愛しています!

ここまでモチベーションが続いたのも、一重に皆様のお陰です!


閑話休題。


最終章(完結)→番外編(愛のある我が家メンバーひとりひとりに視点を与えた、まさしく番外編になる予定(無論、つづきもの)です。


最終章が完結したら物語は終了ですが、主人公は愛のある我が家面々ですが番外編でも主役を張るEpisodeがあります。

主要キャラクターが登場しますので、拙作が完結したら、ぜひ前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~の最終章完結のあとの番外編もご一読いただけると嬉しいです。


是非そちらも御覧してくださると非常にありがたいです!

よろしくお願いします!

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