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Episode222╱風vs氷(前)

(332.)

 沙鳥の情報で、私と瑠奈、みこ、朱音は敵対する羽咲が隠れ住むとされるマンションにやってきた。

 沙鳥の読心によるかぎり、このマンションの103号室に羽咲が住んでいるらしい。

 部屋の前に辿り着くと、瑠奈がおもむろに風刃で玄関を切り裂いた。

 そのまま口を開き小声で唱える。


「微風瑠奈の()()いて 風の精霊を喚起(かんき)する 契約(けいやく)(した)がい (いま) 此処(ここ)現界(げんかい)せよ シルフィード シルフ」


 シルフとシルフィードが緑色の光の粒子を纏い姿を現した。


「あらあら乱暴だこと乱暴だこと」


 羽咲が姿を見せた。

 隣に夜鳥もいる。

 私は夜鳥と視線を交えないように羽咲にだけ集中する。


「あなたごときに用はないのだけれど? 私は澄とやらに復讐したいだけ」

「余裕そうだね? その平然とした面、どこまで持つか試してやるよーー風界」

「へえ……」


 空間が、空気がいきなり振動する。

 わかる。目には見えないのに完全に雰囲気が押し潰された。どこからともなくそよ風が吹く。


「うっ……!?」


 夜鳥が急に鼻を抑えてうずくまりだした。


「これは……」

「わたしたちの通説では風は大気とも訳す。いまおまえたちの身の回りの空気を酸素だけにした。知ってる? 空気を構成する成分が酸素だけになったら苦しくなるって。ーーいまこの瞬間にかぎり、地球上の大気はすべてわたしの手の上にあるーー豊花」

「え?」

「火球をあいつらのみに投擲して」


 私はいわれた通り、羽咲と夜鳥に火球を放った。


「ぐつまあああ!?」


 夜鳥が叫ぶ。弱々しい火が羽咲や夜鳥に命中すると、有り得ないくらい全身火だるまになってしまう。


「火を起こすのに必要なのは酸素。おまけにあんたらの回りには酸素という名の猛毒が纏っている。燃やすのに好都合」


 夜鳥は熱さのあまりに衣服を脱ぎ捨て全裸になりフローリングを右往左往する。


「ふふ……少しは楽しめそうね」

 

 一番問題なのは羽咲に相違ない。

 有り得ない、あのコンビネーションをあしらうとか……。


「あなたに本気ははだしたくないのだけど……来なさいフェンリル」


 羽咲の隣には真っ白な毛皮に覆われた巨大な犬とも表せるフェンリルが登場した。


つづけて羽咲は「氷界」と唱えた。


 場の空気が一変する。凍えるような空気が辺り一面を覆い尽くす。

 しかし完全ではない。空気の半分は瑠奈が把握している。


「きたね、切り札。その余裕面崩してやるよ」

「ええ……あなたごときに負けたらゴキブリ以下だったとガックリしてしまいますわ」


 羽咲は手始めに、周囲の地面から氷の氷柱を十本以上出した。

 本人も氷柱を所持している。


「この風はすべてを切り裂く」


 瑠奈は本体を狙っただろうが、なぜか羽咲の隣の氷柱に命中した。


「あなたにはそれが私に見えておられるですね、素敵」


 羽咲が瑠奈を挑発する。


「どうしたんだよ、瑠奈!」


 と、私の問いかけに答えてくれたのは羽咲だった。


「この子たちは私の身代わり人形。つまり私に対する狼藉はすべて影武者で補わさせていただいてますの」つまりーー。「あなたの攻撃は一寸も入らない。残念でしたわね」


 瑠奈はニヤッと頬を緩める。


「なにかしら」

「だったら分身とやらもめちゃくちゃにするまでだ!」


 瑠奈がなにかを呟く。

 室内にぎゃりぎゃりと竜巻ふたつが羽咲に向かう。

 羽咲は当然避けるが、竜巻と竜巻の摩擦により細い稲妻が発生し、羽咲のからだが貫かれた。

 羽咲は一瞬倒れたものの、すぐに優雅に立ち上がる。


「本当に逝き急ぐひとーーいいわ。本気を出してあげる。フェンリルーー同体化」


 すると羽咲の姿が前にも見たことがあるように雪女らしき姿に変貌する。


「ださっ!」


 瑠奈からすれば雪女の姿がコスプレにでも見えるのか、安易に率直な感想を述べる。

 普段の私なら突っ込むだろうが、羽咲の美貌に懐柔させられなにも言えなかった。


「これからの戦いは一方的な虐殺でしてよ。無論、お仲間もみんなにも。さて、澄の居場所を教えなさい?」

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