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前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~(旧版)  作者: 砂風(すなかぜ)
第七章/杉井豊花【急】
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Episode178/新規加入者

(266.)

 古くさくて、年代を感じられるアパートの前まで私と瑠奈と香織と新規加入者である霧雨可奈子(きりさめかなこ)、舞香が佇んでいた。

 男子禁制の花園だというのに、建物は時代を感じる古くさい造形をしている。

 霧雨可奈子って誰だと突っ込みたくなるが、さらさらとした綺麗な長髪を目視して、まあ、気にしても仕方ないなと思い至った。 

 古くさい人気の少ない路地に建っているアパート“風月荘”が、これから我々の一部の拠点となる。

 どうしてこうなったのかは、舞香本人に問いただしたい。


「どうして愛のある我が家にいちゃだめなの」と前々から気になっていたことを瑠奈が言った。


「現状、愛のある我が家の面子が、私、朱音さん、鏡子さん ゆきさん、香織さん、瑠奈さん、結愛さん、裕璃さんと正式なメンバーだと愛のある我が家の人口密度が圧迫してきているのよ。そこで空き家でちょうどいい古くさい物件を見つけたの、文句言わない」

 

 もっと築浅の物件を見つけ出せると思うんだけど……うわっ、蜘蛛の巣がかかっていやがる。本当に年期がかかっているのが想像に固くない。


「やることは今までどおりだから安心して。覚醒剤の密売、厄介な客の対処、極悪非道な異能力者や犯罪者の討伐だから、いままでどおりに振る舞っていいわよ?」


 このボロクソの年期を感じる建物でそう言われてもやる気が湧かないんだけど……。

 しかし舞香はお構い無しに玄関の扉を開ける。

 室内には廊下が広がっており、右隣にトイレとお風呂が別々に用意してある。

 ここのみは誉められる配置だけど……。

 共用か~。

 もしも下痢になったら大惨事が起こりそうだ。


 廊下を進むと、各部屋には施錠がしており、扉には奥から『月の間』『花の間』『雪の間』『風の間』『水の間』『火の間』と左右に並んでいる。


「豊花は学業が終わったら花の間に入ってもらうからね。あ、ここから学校に通ってもいいわよ」

「花の間て……それって豊花の名前から取ったの?」


 舞香は一時逡巡したのち、いや違うと答えた。いや違わないはずだ。顔に書いてある。


「いまの空き部屋は月の間は瑠奈の自室の予定だし、雪の間には異能力者である雪さんが暮らしているのよ」それに、と舞香は付け足す。「風の間が豊花のお世話になる部屋になるわね」


 風の間だったら瑠奈が適任な気もするが、本人は自身の瑠奈という名前を大層気に入っているらしく、無理を言って『月の間』を根城にしたらしい。

 そもそも愛のある我が家があるのに、なせなにどうしてボロアパートにすまなければいけないんだ?

 だいたい我が家だってきちんとある。なのにどうして、共用トイレがあるアパートなんかに住まわなきゃいけないんだ。


 あれよあれよと着いてきてしまったが、まさかこんなボコクソの地震で倒壊しそうなアパートに引っ越しにしなければならなければならないのだ。


「毎回同じ拠点にしていると、冷やかしや悪戯たちがひっきりなしに暴走族とかが現れるから、そろそろ引っ越しが必要だと思ってね。まあ、私は愛のある我が家に滞在するけど」

「……なにもこんな年期の入った風月荘を指定してなくてもいいじゃないか」


 疑問に次ぐ疑問。構造マンションにでもすればいいのに。いや、逆に迷惑をかけるかもしれないという舞香の気遣いかもしれない。

 それを舞香に訊いてみると。


「安価でよさそうな物件を見つけ出したーー灯台もと暗しってやつね」

「で? 私は風の間で過ごすことになるの」

「えー、もっと優雅な部屋に住みたい~」


 瑠奈の発言は無視して……。


「瑠奈、まあ築年数うんじゅうまんの建物とは別に美少女に囲まれながら生活も潤うんじゃないか?

「うぐっ……いや、私は風速一筋なんだけど。まあ同性愛も……ヤター!」


 唯一悦んでいるのは瑠奈だけだ。


「扉を開けてみな? 必需品が入っているから」


 私はしぶしぶ『風の間』の扉を開いた。


「せまっ!」


 そこに広がっているのは六畳一間。


「そりゃそうだよ。瑠奈もいるし、大家である私もいるんだし、鏡子だっているんだから、そのくらい余裕でしょ?」


 ゴキブリがカサカサ動いているが、それよりも気になることがあった。


「このさきの業務はなにをやるの? まさかこの家で満足で仕事しなくなったりしない?」

「いやいやいや、業務内容はいつもと変わらないよ。一部仕事ができなくなる部分

。豊かな生活は今までどおり危ない案件に突っ込んでもらって、ゆきも私も舞香もゆきも鏡子も結愛も普段どおり仕事をしていけばいいんだよね」


 新しいパソコンが届くまで新たな調べものもできないじゃないか。


「パソコンマニアの香織にいてみるといいよ」


 するといつもは吃りがちな舞香が早口で捲し立てはじめた。


「パソコンというのは精密機械なんです、グラボやCPUが最新機種じゃないと調べものが捗りません!」


 それだけ早口を言われたら、まるでオタクが趣味の話題を話すときあの二次元キャラクターかよとか言い出そうで怖い。


 最終的には

『花の間』ーー豊花

『風の間』ーー不在

『雪の間』ーー雪

『水の間』ーー香織

『火の間』ーー霧雨可奈子

『月の間』ーー瑠奈


 部屋の割り当てにいざこざがあり、最終的にはこういう風な割り当てになった。


「豊花の部屋はどう? 仲間(ゴキブリ)がいた?」


 瑠奈の問いかけに首を振るった。


「じゃあ豊花は花の部屋かー」

「まだきまっていないけどね……」


 そもそも愛のある我が家の知名度が高すぎて、厄介なファンが押し掛けてくるのを撤退するように、このオンポロアパートで過ごすのにも退屈で仮眠をとることにした。

 ……こんな風月荘みたいなボロを、一瞬でぬけだしたい気持ちに駆られてしまいた。

 路地裏になる年期の経ったぼろアパートに住む敬意はあるが、住みたいとは思えない。


「このまえの事例でダークウェブ上で愛のある我が家が紹介されていたしね。これはまずい、カルト教団に間違われる!」 

「いや、そもそもコンビニから入れない新築も端から見たら「なんだコイツ」と思われてしまう」

「今度そこはサーフィスウェブ、ディープウェブ、ダークウェブでも個人情報を調べて調べて、私たちは引っ掻かないようにしたい」

ダークウェブまで潜るのもいただけません。そこであなた方の協力が必要なんです! おねがいします!

「うーん、沙鳥的にはどうする?」


 そこで新規異能力者が割り込んできた。


「姿が変身できます! 瑠奈さんや豊花さんみたいな美人には変態できませんが、並大抵の人物には変身できます! 私の特技です!」


 そう言い出した。

 なるほど、だから沙鳥がスカウトしたわけだ。


 瞬間、まぶたをまばたいときにーー完全に姿を消し見たこともない少女に変身した。

 ふと、瑠奈は目を疑った。

 いや、この場にいる全員が目を疑った。

 そこには、元々165cmの少女が、140cm代の少女の姿に容姿に変態したのだ。


「残念ですが、我々の異能力者は皆、活躍できるメンバーしかいれていません」

「変装もちからになれるとおもいます!」

「ええ、スパイ活動もでるきということですね。今から嘘発見を真相心理から探り出します」

「あ、ありがとうございます!」

「こうして、愛のある我が家メンバーに正式に加入ができたのがうれしいです!  働き次第ですけどね。サボりません!よろしくおねがいします」


 こうして、愛のある我が家のメンバーは拡大していく。舞香、沙鳥、「享年二」、瑠奈、豊花、香織、鏡子、裕璃、そして、真正メンバーのーー名前(霧雨可奈子(きりさめかなこ))。


「私のメンバーの条件としては、女でありつつ全員異能力者および異能力のメンバーのみの加入、みやみやたらに殺生しない? 顧客に問題を起こさない。細かなルール設定がありますが、本気で入りたいと?」

「もちろんです。私非常識と危機察知能力には自信があります!」


 こうして、愛のある我が家は拡大していく。

 通常のブラウザではページを開いてもページには入れない、ダークウェブを駆使して愛のある我が家を発見したうえに待ち伏せを疑問を交えながら情報の取捨選択をしてきたのにちがいない。

 リサーチ力でここまで辿り着けたのは美山鏡子とタメを張る。

 使えるかもしれない。


 そこまで思慮し、仮でいいなら愛のある我が家の正規メンバー(仮)となったのであった。

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