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前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~(旧版)  作者: 砂風(すなかぜ)
第七章/杉井豊花【急】
181/264

Episode173/復讐~生き地獄に代わり行く~

(280.)

 翌日の放課後、私と瑠奈は香織によって特定した主犯格ーー権蔵雅也(ごんぞうまさや)の住んでいる自宅近辺までやってきていた。

 無論、今回の依頼は柊や瑠衣には知らせていない。

 柊は強い相手を熱望しているし、瑠衣なんかに拷問を見せたら、トラウマを負ってしまうかもしれないからだ。


 この場にいるのは、瑠奈と私だけではない。

 拷問で苦しむ様を見たいと頼まれ、依頼者である辻井風紗も同行している。

 見た目は男時代の私と同年代の、どこにでもいそうな顔をした女子高生だ。でも、凌辱からの悔しさ、鬱屈さからか、化粧などもしておらず、髪もボサボサで整っていない。


 風紗を見ていると、昔、陽山月光に怨念を抱いていた月影日氷子をどうしても思い出してしまう。

 だって……その暗い瞳に映り込む憎悪の炎が似ているのだから……。


 寒い空気とやや強く吹く風、ぽつらぽつらと降ってきた雨のなか、相手の自宅を隠れながら様子を見計らっている。

 相手の家は豪勢な一軒家。犯人が出掛けるまえまでは無理やり突入するのは無策というもの。中にどれほどの重役が揃っているかわからないうえ、関係のない一般人も巻き込む恐れがあるからだ。


「許さない許さない許さない許さない……! 私を辱しめただけでなく、暴力も当然のように振るってきて、私の最愛の彼を無惨に殺した挙げ句、法の罪からも逃れるなんて……やつらが死ぬまで私はぜったいに死ねない!」風紗は恨み言を恐ろしい形相で呟く。そして私たちを見る。「お願いします……あいつらが死を懇願するくらい、拷問のかぎりを尽くして恨みを果たしてください……ぐす……お願いします……」


 どれほど相手を憎んでいるのかが、ひしひしと伝わってくる。

 瑠奈も珍しく怒りを表情から醸し出していて、『女の敵はぜったいに許さない!』と静かな怒りを顕にしていた。


 しばらく待っていると、香織から送られてきた情報と一致した姿や顔をしている、見た目がまさにチンピラの男性が自宅から鼻歌まじりに出てきた。

 ひと一人を殺し、好き勝手に女性ーーそれも未成年ーーを幾度も凌辱したとは考えられないくらい能天気な表情をしている。

 それを見た風紗は、怒りのあまりか瞳に涙を滲ませてしまっている。


「大丈夫。あいつはたっぷり痛めたうえ、可能なかぎり苦しめてから殺すから……」瑠奈もピリピリしていた。「さあ、わたしがあいつを拐うから、豊花と風紗もわたしに寄って。空を飛んでタイセイ第二倉庫に連行するから。準備は良い?」

「うん」「はい……」


 二人の返事を確認したあと、少し人気のない道に足を踏み入れた瞬間、権蔵の背後から駆け足で三人で追い付く。

 すぐさま瑠奈は精霊操術を使い、権蔵を風の衣で拘束した。


「な、なんだテメェら!?」

「ゴミの焼却処分をしにきたんだよクソ野郎が! 豊花、風紗! 近寄って!」


 言われるがままに私と風紗は瑠奈に近寄り、直後に飛翔。権蔵を含め四人で空中に逃れた。


「こ、これが異能力……少し怖いです」

「異能力者じゃないよん。精霊操術師の風精のちからだよ。でも慣れたら大丈夫。ささっ、拷問部屋にご案内~」


 身動きできないながらもじたばたしている権蔵を引き連れ、私たちは過去に来たことのあるタイセイ第二倉庫前に降り立った。


「離せ! てめーら! てめーら異能力者ってやつだろ!? こんなことしたら警察やパパが黙っちゃいねーぞ!」


 タイセイ倉庫内の椅子に男を無理やり座らせ、みんなでロープで権蔵の手足を拘束した。恨みが籠っているのか、風紗は涙を流しながらキツく痛いくらいにロープで縛り付けていた。


「ああ? クソ野郎が。こいつの顔に見覚えねーのかって訊いてんだよクソッタレが!」


 瑠奈の急な罵声に権蔵は一瞬たじろぐが、すぐに首を振ると口を開けた。


「そうか! てめーらそこの肉便器に唆されてやってんだな!? 言っとくがパパに言えばお前らコンクリに詰め込まれて東京湾に沈められるぞ!? いますぐ解放すれば許してやる! そんな雑魚女のために復讐なんて馬鹿げているだろ!? だから早く離しやがれくそやろーーぶっ!?」


 ごちゃごちゃ文句を言う権蔵の頬に向かって、瑠奈は怒りのあまりか全力で拳を殴り付けた。


「ぴーちくぱーちくうるせェんだよああ!? パパーパパーたしゅけてぇ~てか? ざーんねんでーした~べろべろばー。わたしたちは豊かな生活。てめーのクソ親父だろうが警察だろうがわたしらには関係ないね~ああ関係ねェ! 今から死ぬほど拷問するけどどんな気分? ねぇねぇ、嬉しい?」

「ふ、ふざけんじゃねぇ! ぜってーにテメーらはぶち殺す!」

「ぶちころしてやるだってー! けらけらけら! 今から殺されるのにどうやって? 頭のなか幼稚園児でちゅかー?」


 瑠奈はけらけらと悪鬼のような表情で嘲笑しながら煙草に火を点け一服してみせた。


「あんただけは許さない! 許さない! 必ず後悔させてやる……うっうっ! 二人とも、お願いします……」


 風紗は大粒の涙を溢しながら、私たちに全力で懇願してくる。

 その痛みは自分が知るにはあまりにも遠い。でも……どれほどこの男を恨んでいるのかが痛いくらいに伝わってきてしまう。

 相当悲惨な目にあったのだ……当然といえば当然だろう。


「おまえら! 例え俺が死のうと俺の仲間が必ずおまえらをーーな、なにをする気だよ、おい! やめろや!」


 瑠奈は煙草を指に摘まみ、権蔵の眼球に当たるか当たらないかのギリギリの位置まで持ってくる。


「灰皿忘れちゃったからさー。悪いんだけど、その腐った眼孔を灰皿代わりに使わせてもらうね? ほいっと!」


 権蔵の眼球を瑠奈は無理やり指でかっぴらかせながら、そこに火種を思い切り押し当てた。


「ぐがぁぁあああ! 目が! 目がぁああ!」

「雑魚の目玉くらいどうでもよくない? じゃあ次は爪剥ぎね? 楽しいな~クソ野郎さんよぉ!」


 鼻歌まじりに頑強なペンチをどこからか手に取ると、まずは人差し指の爪を容赦なく掴みーー呆気なく、メリメリッと剥がした。


「あぁあああああ! や、やめろ! 金ならいくらでも出すから! 許してくれがぁああああ!」


 瑠奈は怒りと楽しさの混じった奇妙な表情を浮かべながら、軽々しく次々と爪を剥ぎ取っていく。手の先は血塗れだ。段々と見ていられなくなってくる。


「も、もう許してくれぇええ……」

「はあ? まだ序の口なのになんでさ? さてと、次は次は……ジャーン! 指折りゲーム!」


 瑠奈は権蔵の人差し指を握るや否や、意図も容易くメキメキと曲げていき、呆気なく骨折させた。


「てめーらぜってー殺す! ぜってー殺す!!」

「私の彼氏を殴る蹴るしたうえ殺した癖に!」


 風紗は瑠奈と同じように別の指を力強く握りしめると、曲がらない方向にねじ曲げた。めきょーーという気の抜けるような音と共に、指があり得ない方向へと曲がってしまった。

 うう……見ているだけで辛くなってくる。

 次々と指を無造作に折っていく二人を見ていると、物凄い狂気な空間に自分がいるのだと思ってしまってくる。


「やるねー! 風紗ちゃん。次は総入れ歯の時代だ! あ、死ぬんだから別にどうでもいっか? やったね権蔵くんのようなゴミがなくなるんだよ? ほら一緒に、わーい、わーい」


 はじめてかもしれない。

 まさか瑠奈がこのような拷問を嬉々として行うなんて……。

 まあ、誰よりも女の子好きな瑠奈にとっては、この男の犯した罪は到底許されざる者なのかもしれない。


 瑠奈は無理やり権蔵の口をねじ開くと、そこに先ほどのペンチを入れた。

 ……まさか。


「ひゃ、ひゃめろ!」

「結構力いるな。よいしょー」


 バキメキョっとした音が鳴ると、権蔵は口から血をポタポタと流し始めた。


「あぁあああああ! 歯がぁ! 歯がぁ!」

「つづいて行くよ? て、口開けよクソ野郎。もういいや」


 瑠奈はその辺りに落ちていたトンカチを手荷物と……顔の歯のある位置を表面から何度もぶっ叩きはじめた。ガツンガツン、ドコンドコンと、思い切り殴り付けていく。


「あぁあああああ! ひゃめぶっ!? てあ!? ぐだぢゃいいっ!? ぶべー!」


 殴るたびに歯がそこら辺に血と共に飛び散ったり、歯茎の奥に歯が沈んだり、歯茎がボロクソに壊されていく。

 ようやく終わると、権蔵は口から大量の血を吐き出しボタボタとあり得ないほどの流血が地面に流れ落ちていく。


 権蔵の当初の威張り散らかしていた表情はどこかへ成りを潜め、もはや絶望しか瞳に宿していない。

 風紗を見やると、流石に今の拷問はキツかったのか、顔が青ざめている。


「ふ、風紗さん……見るのが辛いんでしたら、外に行っていますか?」


 心配になってきて、念のため風紗に問う。


「だ、大丈夫です……彼の受けた屈辱はこんなものじゃなかった。コイツが苦しむ様を見届ける……それが今、唯一私のしたいことなんです!」


 風紗さんは目を腕で拭い、片時も目線を離さず権蔵を睨み付ける。


「さて。次は次は……なーんと! 不必要な汚物を切断しまーす! 要らないよね? レイプ犯は去勢だ去勢!」

「あぁ……やへてふへ……」


 歯がぐちゃぐちゃになり声を出せない権蔵は、涙を流しながら許しを乞う。

 しかし、それを無視して瑠奈は権蔵のズボンを下着ごとずり下ろした。

 オエッ……見慣れた男性器のはずなのに、肉体に引き摺られて成長したせいか、男性器を見ると汚らわしく感じてしまう。


「触るのも嫌だし、ペンチで引き抜くにしても」権蔵のイチモツをペンチで握り潰し引っ張るが、なかなか取れない。「仕方ない。こんなことに精霊操術を使いたくはなかったんだけど」


 瑠奈は片手の人差し指と中指を立てて揃え、そこに周囲の空気を圧縮し纏わせた。


「はいはーい。切り札その一! せーのっ!」


 瑠奈は指をイチモツに当たるか当たらないかの位置で薙ぐ。

 すると、綺麗に男性器が真横に飛んでいき、ぶちょっ、と呆気なく地面に放り捨てられてしまった。


「ぁぁぁあああああああっ! 許してぐれぇ……もうやめでぐでぇ!」

「ねえ風紗ちゃんはさ、どっちが良い? 生き地獄を死ぬまで味わってもらうか。このまま拷問の末に殺すのか。私的には生き地獄がおすすめかな? ちょっと残酷な見た目になるけど。死にたいって一生懇願するようになるだろうね」

「……わ、わかりました。さすがに殺すのは……私も現場を見に来たら……あと、こんな奴が彼と同じ場所に逝ってほしくない!」


 風紗は涙をたえどなく流しつづけ、流石に拷問の残酷さに良心の呵責が芽生えたのか、はたまた言葉どおり生き地獄を味わってもらいたいのか……どちらにせよ、これで方針は決まった。


「でも……瑠奈、生き地獄ってどうするわけ?」

「ん? もう人間として生きていけないように魔改造を施して病院前に放置するつもり」


 病院前に放置……やさしいところもあるんだなぁ。

 だが、そんな考えは次の瞬間跡形もなく吹き飛んだ。

 ーー瑠奈の言葉の予想より遥かに残酷な現実が起こってしまうとは思わなかった。


「さてと……まずは両手足を切断!」

「ひぃぃ!」

「安心して。私の風刃はスッパリと切断できるから無駄に流血しない。だから死なないで済むよ?」


 瑠奈は周囲の空気を自身の周りに集め風に変えたあと、それを圧縮し空気の塊にしたあとーー容赦なく権蔵の右腕を切断した。切断してしまった。

 たしかに予想よりも出血していない。


「うっ……」


 吐きそうになるが堪える。

 瑠奈は流れるようにーー慣れた手つきで左腕、右足、左足を綺麗にスッパリ切断してしまった。もはや権蔵は陰部をなくし手足もなくなった。まるで達磨のような姿へと変貌してしまった。


 その姿を見ていた風紗は、堪えきれずに地面に嘔吐した。

 まさかここまで酷いことをするとは思ってもいなかったのだろう。

 権蔵も、そんなになってしまった体では、もはや二度と悪事などできないだろう。


「さて、仕上げだね」

「まだやるのー!?」


 瑠奈のとことん容赦のない拷問はまだまだつづく。

 いまので人体なんてほとんど欠損してしまっているのに、これ以上なにをやる気なんだ……。


「通報されたら面倒だし、外部との連絡を遮断させてもらうんだよん」


 瑠奈はポケットから場違いなスプーンを取り出した。

 それをーー。


「ばぁあああああああああっっっ!!」


 もはや息も絶え絶えなはずの権蔵は、最後に残されたちからを振り絞るように雄叫びをあげた。

 ……瑠奈はスプーンを力強く眼孔に突っ込み、目玉を抉り出したからだ。

 権蔵が痛みのあまり叫ぶのもまったく聞こえていないのか、もう片目にスプーンを突っ込み……抉り出した。


「人工盲目の完成だね! さてさて、次は……」


 瑠奈は男の喉に細くした風刃を突き刺した。

 声帯をぐちゃぐちゃにし、なにも声を発することが不可能になってしまった。

 お次に瑠奈は、近場を探してボールペンを見つけると、両耳に突き刺し思い切り抉るように突き立てた。何度も……何度も……。


「これで警察に訊かれても、耳は聞こえないから反応できないし、声も出せないから誰にも仲間にも訴えることができない。目も見えないからアイコンタクトも不可能。腕も手も両方ないから筆談もできないしジェスチャーや手話もできない。両足もないから復讐に向かうことすら不可能。おまけに陰部は潰したから遺伝子も残せないし、二度とセックスできないよ。ざーんねんでーしたー!」


 体が自然と震えてくる。

 今までも瑠奈は普通ではないことはわかっていたけど、こんなに楽しそうに拷問……むしろ破壊活動だ。それを嬉々として表情を変えずに遂行するとは思えなかった。


「そんじゃ、わたしは一足さきにコイツを最寄りの病院前まで送り届けてくるね」


 瑠奈はそう言い、もはや生きているだけでなにもかもができなくなった男を運び、外に出て上空へと飛翔していった。


「……」

「風紗さん……これで、気は収まりましたか?」

「……うっ……だ、大丈夫です。これで、あの方も浮かばれるでしょう」


 いまにも吐きそうなほど顔色を悪くした風紗と並び、私たちは現場を後にしたのであった。



 これから、瑠奈に対する見方が変わりそうで怖い。

 いくら相手が極悪人だからって、そこまでするのも、嬉々としてやるのも、私には到底理解できなかったのだから……。

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