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前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~(旧版)  作者: 砂風(すなかぜ)
第七章/杉井豊花【急】
176/264

Episode168/殺人鬼①

(243.)

 仕方なく私は覚醒剤や注射器を自宅まで運搬して、碧と三島に取りに来るように連絡した。

 これからの内容が激しくなること、また、協力者とも初対面になるかもしれないことから、柊や瑠衣にも来るように伝えた。

 また、新たなメンバーとして新規に参入する瑠奈も、顔合わせのために自身の仕事が終わったら顔を出してくれるらしい。なんともありがたい話だ。


「お邪魔します」

「豊花、来たよ?」


 まずは碧と瑠衣がやってきた。


「とりあえず部屋にさきに行っておいて、これからの豊かな生活が今まで以上に大変になると予想されるから、それについて説明するからさ」

「わかった」


 瑠衣と碧が部屋に入ると同じタイミングで、三島、柊もちょうど自宅にやってきた。


「どもっす」

「なんなのよ? 用事があるって」

「それは部屋に入ってから説明するよ。少なくとも柊と瑠衣には特に重要な内容だからさ」


 三島と柊も部屋に連れて入った。

 さすがは私の手狭な部屋。五人も入ると人口密度が凄まじい。

 瑠衣は床に座るのを諦め、ベッドに腰を掛けてしまっている。


「で、話ってなに?」


 柊は普段どおり機嫌が悪そうに聞いてくる。

 まだ包帯が巻かれており、怪我が完治していないことが窺える。


「まあまずは覚醒剤から。碧と三島、それぞれに100gずつ渡すから、なくなったら互いに補てんしあって」

「わかった」「了解っす」


 ん?

 なんだか三島は妙にソワソワしているな……。


「三島、なんかあったの?」

「いや、こんなかわいい女の子ばかりに囲まれた経験がないので緊張してるんすよ……いやー、なんだか恥ずかしいっす」


 たしかに、いまの私の姿は女の子だし、碧も柊も瑠衣も容姿はかわいいほうだろう。そんななか男ひとりでいるのは、想像以上に緊張してしまうのだろう。


「豊かな生活のメンバーって、ここにいるので全員なんすか?」

「うん。正式には上部団体に愛のある我が家があるけど、豊かな生活のメンバーとしては、ここにいるので全員だよ」

「愛のある我が家! いや~、まさか自分が愛のある我が家に関わりのある集団に関われるなんて光栄っすよ!」


 三島はなにがうれしいのかよくわからないが、愛のある我が家って名前にはそこまでブランド力があるのだろうか?

 と、碧のほうをチラリと見ると、黒い袋から覚醒剤の結晶を取り出し手のひらに乗せ、いまにも口にしそうに瞳を爛々と輝かせていた。


「碧! 自分使用は厳禁だからね!?」

「わ、わかってるよ。大丈夫、自分ではやらないってば」


 さて、これで覚醒剤密売班への説明は終わった。

 いよいよ本題に入る。


「柊、瑠衣、これから私たちの仕事はさらに大変になると思う」

「え? いったいどうしてよ?」

「それはーー」


 私は一から説明をはじめた。

 まえまでは凶悪な犯罪者や異能力者は澄という愛のある我が家最強の人物がすべて対応して退治していた。

 しかし、何らかの問題が発生して澄がチームから抜けてしまった。

 それにより、今まで澄が対処していた凶悪な犯罪者を私たちが相手をすることになってしまった。とまで端的に説明を終えた。


「ちょ、ちょっとちょっと! 前回の麻薬密売組織を相手するときもギリギリだったのに、それ以上の相手を私たち三人でするって言うの? 無理に決まっているじゃない!」

「柊、とりあえず落ち着いて」私は一呼吸置きつづけた。「私も今のままの人物では無理だと思う。だからーー」


 そのときチャイムが鳴った。

 母親が応対したのか、部屋の扉が開く。

 そこには、用事を終えて来てくれた瑠奈の姿があった。


「やっほー! 碧、久しぶり!」

「瑠奈様だー! 私、約束どおりあれから覚醒剤やってませんからね!」

「えらいえらい! それでこそ私が見込んだ女の子だ!」


 いきなり現れた瑠奈に対して、柊や瑠衣は『いきなりなに?』と言いたげに困惑した表情を浮かべる。


「愛のある我が家の正規メンバーでありつつも、これから豊かな生活の討伐班の新メンバーになってくれる瑠奈だよ」

「微風瑠奈っていうんだ。みんな、よろしこ。あ、そこの野郎には興味ないからよろしくしない」

「えー! 酷いっすよ!」


 哀れ三島。瑠奈は男に対してはとことん厳しいのだ。致し方ない。


「つまり、今までは三人で活動していた悪人の討伐に、もうひとり加わるってことね? たしかにソイツは強いだろうけど……」


 以前、柊は瑠奈にナイフを当てようとして、意図も容易く弾かれたことがある。それを想起したのか、強さがどうこうとは文句を口にしなかった。


「ほかにも、ツテのある殺し屋ーーありすや静夜にもちからを借りることもあると思う。だから、今までとは違って大勢でひとりを倒しに行くことになる」


 今まで澄はひとりで凶悪な相手を倒してきたのだ。

 でも、我々ではひとりで対処できる相手ではないと容易に想像できる。

 だから、澄の代わりとして働くなら、こちらは数で圧倒するだけだ。


「これからよろしくね、かわいこちゃん」

「きゃあ!」


 瑠奈は柊の背後にまわるなり胸を両手で鷲掴みにした。

 柊はたまらず悲鳴を上げる。


「なによコイツ!? 変態なの!?」

「ははは……否定はできないなぁ」

「えー。酷いなぁ。豊花のおっぱい生で触っちゃうよ?」

「やめてくれ……」


 瑠奈のこの性格だけはどうにかならないのか……。


「まあそういうことで、これからは瑠奈も豊かな生活のメンバーになるから。みんな仲良くしてあげてね」

「私は仲良くできる未来が想像できないわ……」


 いきなり胸を鷲掴みにされた柊はドン引きしながらそう呟く。

 瑠衣は特別気にしていないのか、普通に頷いてくれた。

 碧なんかは、同じ組織で働けるのが大層うれしいのか、瑠奈の隣に陣取り瞳をキラキラさせている。

 ……碧は薬物密売班だから、直接の関わりは薄いんだけどなぁ。


「瑠奈との顔合わせも済んだことだし、予め説明しておくけど、柊たちは会ったことのないありすって殺し屋とかも場合によっては協力してくれるから、初対面でも上手く仲良くやってね。この仕事、チームワークが大切だから」

「わかったわよ……」

「ありす!? ありすも、豊かな生活に、入ってくれるの?」


 今度は瑠衣が嬉しそうな表情を浮かべる。


「いや、正式にチームに入る訳じゃないよ。ただ、時と場合によっては手伝ってくれるっていうだけだよ」

「それでも、ありすと働ける、うれしい」


 殺しの仕事仲間だと思うと、中々に嬉しがっているのにサイコパスみを感じてしまう。


 と、そのときスマホが鳴った。

 机からスマホを手に取り画面を見ると沙鳥からだとわかった。

 スマホを耳にあて通話をはじめる。


「もしもし、どうしたの沙鳥?」

『豊花さん、早速ですが依頼が舞い込んできました』


 ええ!?

 いきなり!?


「な、内容は?」

『相手は極悪非道な殺し屋。信条をもたず、趣味でターゲットを選び残酷な殺害方法でターゲットを殺害し、見せしめに死体を損壊させる狂った殺し屋……ともいえない殺人鬼です』

「ええ……相手の居場所は?」


 なんだそのサイコパス的な殺人鬼は。

 同じ人間だとは思いたくもない。


『相手はひとり。名前は三河慎太郎(みかわしんたろう)。性別は男、年齢は二十代後半です。殺しの腕は確かなようで、ありすさんと同格以上の実力だと想定しておいたほうがいいでしょう。居場所はまだ掴めていませんが、鏡子さんと香織さんのちからで現在探してもらっています』

「わかった……相手はひとりなんだよね?」

『そうなります。今回はべつに普段から澄さんに頼るほどでもない相手ですから、豊かな生活だけで対処できると思いますよ』

「わかった。居場所が判明したら教えてよ」


 それだけ伝えると、私は通話を切った。


「なに? さっそく依頼が入ったの?」


 柊は気になるのか、いの一番に訊いてきた。


「うん。相手は殺人鬼。極悪非道な奴らしいから、みんな気を引きしめて対処しよう」

「わかったわ。単なる殺人鬼に負ける気はしないわよ」


 柊は強気な口調でそう言うが……今回の相手はありすと同格クラスの実力の持ち主だ。みんなで協力しないと苦労する羽目になるだろう。

 ただ……。


「ん? なに? わたしに惚れちゃった? 残念、わたしには碧やアリス、朱音がいるもんね。でもどうしてもっていうなら彼女にしてあげてもいいよ?」

「……いやいやいや。そうじゃなくて」


 ただ、今回はこちらに瑠奈という対人間には兵器となりうる強力なメンバーがいる。油断しないかぎり大丈夫だろう。


 こうして、瑠奈とメンバーの顔合わせ、今後の説明、覚醒剤の分配を終え、皆は解散することになったのであった。

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