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前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~(旧版)  作者: 砂風(すなかぜ)
第六章/平凡な非日常
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Episode154/普通になりたい同好会③

(219.)

 翌日は普通になりたい同好会の活動を午前に行い、午後から愛のある我が家に出向くことになっていた。

 また近場の河川敷のゴミ拾いと相成る。面倒に感じてしまう。

 これじゃもう普通になりたい同好会からゴミ拾い同好会に変えたほうがいいんじゃないだろうか?


「こういう地道な活動をしていくことで、我々は普通になるんだ」


 空先輩はそう力説するが、普通の人間が毎度のようにゴミ拾いをするだろうか?


 楠瀬と伊勢原はあの事件以来イチャイチャしながらゴミを丁寧に拾っているし、よくもまあ仲良くなったものだ。

 田井中先輩は相も変わらず、「水辺には悪霊が溜まりやすいんだ~」と仕事をこなしていない。


 空先輩が丁寧にゴミを拾う傍ら、柊は渋々といった様子でゴミを探している。

 私はというと、適当にゴミを見つけたら拾うだけだ。


 近場にヤンキーがバーベキューを嗜んでいるのが気になって仕方ない。

 四人組でよくもまあ楽しそうにはしゃいでいるものだ。

 こちらはゴミを延々に拾い続けているだけだというのに。


 そんなとき、田井中先輩が急にどこかを指差したかと思うと、悪霊がとりついている~っと叫びだした。指を指した向きは、ヤンキーがバーベキューをしている方角である。

 たしかに……ゴミをその辺りにポイ捨てしている。しかし、あれが、悪霊か?


 田井中先輩が指を差したせいで、ヤンキーがなんだなんだとこちらに歩み寄ってくる。


「おいおいおい、なにか文句あるんか!」

「ったく……はぁ」空先輩はため息をつくとつづけた。「ゴミを拾っている傍らでゴミを捨てるなと言いたいんだ」


 空先輩が反論、いや正論をぶちかました。


「ならさ、ゴミ拾いの仕事を増やしてやんよ、あひゃひゃ!」


 と、ヤンキーたちは焦げた肉やら使えなくなった網といったゴミをさらに不法投棄しやがった。


「は? はあ!?」


あ、やばい。柊がぶちギレてしまった。


「ならさ、ゴミを増やしやがるゴミも一緒に捨てないといけないよね? なぁ? ああ?」


 柊は額に青筋を浮かべて怒りを露にする。

 だが、相手は四人。柊ひとりで勝ち目があるかわからない。


 しかしヤンキーは単なる女の子と侮り、嘲笑するだけで次の行動に出た。


「ほらよ! ゴミ大好き人間にご褒美だぁ!」と空先輩に焦げた肉を投擲した。

 

 それが空先輩の衣服に命中。

 喧嘩はしない信条の空先輩も、さすがにキレたのか、鞄から特製のチェーンを取り出した。

 あわや一触即発。


 ふと周囲を見回すと、田井中先輩や伊勢原、楠瀬はいつの間にか離れてしまっている。

 薄情者め。


 相手は四人ーー私ひとりなら勝ち目はある。だが、果たして私に意図も容易く負けた二人ーー柊と空先輩ーーに勝ち目はあるのだろうか?


 やがて喧嘩がはじまる。

 先手は相手。その拳を避ける空先輩。

 そのままチェーンを下から上に振り上げる。相手の顔面から出血。


 逆に柊は先手必勝。ナイフを取り出し、相手の腕を削り切る。


「武器持ちなんて卑怯だぞ!」


 ヤンキーに言われるが、まるでお構い無し。


「私たちは“ゴミ”を片付けているだけだもんねー」


 柊はナイフを数回振り、相手に当てないながらも威嚇してみせる。


「こ、こいつらやべーぞ!」


 となったときに、背後から相手のリーダー格らしき大男が遅れて登場した。

 直観が告げる。二人では同士討ちがいいところだと。 


 私が大男の前に立ち、ナイフを取り出し握りしめ、大男の前に立つ。


「こんなガキに振り回されているのかよ? てめーらもあとでお仕置きな!」


 大男は私ではなく、柊のナイフをすり抜け柊の顔面を殴り付ける。


「ぐべっ!」


 柊は仰向けに倒れ、空先輩が駆け寄る。

 だが、その隙に大男の手にナイフを振り切り裂く。


「へー、やるじゃん」


 ついに大男の対象が私に向く。

 一気に殴り付けてくる。それも一回ではない。二回、三回、数回も!

 たしかに拳は早い。動作も早くなかなかナイフが当たらない。


 ーーだけど、ありすや刀子さん、舞香に比べれば大したことはない!


 相手のパンチやフックを華麗に避けながら、当てられそうな隙を見つけてナイフで徐々に切り裂いていく。


 大男も体力が失われてきたのか、ぜぇぜぇと息を吐く。


「てめー何者だ!?」


 問われ、迷いつつも答えることにした。


「普通になりたい同好会メンバー、兼、愛のある我が家の一員だ!」


 と正直に答えた。


 答えた瞬間、相手の動きが止まった。


「あ、愛のある我が家……?」

 

途端に大男は仲間を殴り飛ばす。


「この辺りで喧嘩を売っちゃいけねぇ奴らの筆頭じゃねぇか! マジで仕置きが必要だな! ああ!?」


 愛のある我が家の威光は、こんな不良にまで浸透しているのか。

 私は別の意味で驚いてしまった。


「すまなかった。この借りはいずれ返す」


 それだけ言うと、大男は仲間を引き連れその場を立ち去った。


 ……バーベキューのゴミを片付けていけよ。

 とは、誰も突っ込みを入れなかったのであった。


 愛のある我が家って? と疑問を抱く仲間もいたが気にしない。

 とにかく今は片付けがさきだ。


 それにしても、田井中先輩も柊も問題だ。

 やらなくてもいい戦いを誘発させたうえ、柊もやる気満々だ。

 どうにかして、この二人の問題を解決しなければ、普通になりたい同好会には程遠い。


 もうすぐ午後になる。愛のある我が家に行かなくては。


 私はメンバーに断りを入れ、愛のある我が家に向かうのであった。


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