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Episode113/澄と襲撃

(159.)

 こうして訓練を行いつつ暮らして、ようやく日曜日の夕方がやってきた。

 そういえば、本当に澄ってどこに行ってしまったのだろう?


「……見てみます……?」

「あ、うん」


 鏡子も寝ているベッドに腰を下ろし、鏡子の目を借りた。




 そこには、想定外の光景が広まっていた。

 ザワザワと揺れる木葉と木々たち。その中心に澄は佇んでいた。

 目の前には、二人の男と、ひとりの少女。計三人が澄と対峙している。


『何奴じゃ?』

『おっと失礼』右端にいる金髪の男性はお辞儀をする。『異能力の世界、長月担当といえば聞こえは良いでしょうか?』

『私は霜月ーー』少女は澄をゆび指す。『あなたの意識と成り代わる者』

『で、俺が如月ね? すべてを吸い込むブラックホール』


 澄はため息を溢す。


『そろそろ戻ろうかと考えていたところに、身の程知らずがぞろぞろと』

『いえいえ、今回ばかりは私たちの勝ちですよ。貴女が愛のある我が家で最大の壁だった。だから貴女無くさず戦には勝てないのですよ』


 どんなちんけな異能力を持ってきたのかと、澄は欠伸しながら相手の出方を待っている。


『来るならさっさと来い』

『では私からーールクスルークス!』


 霜月は澄を指差しながら謎の言葉を呟く。

 しかし、辺りにはなにも起こらない。

 澄が素早く相手に軽く触れた。

 それにより、相手側から澄の姿を見ることが可能となる。

 澄は真顔のまま、いや、呆れた顔をしていた。


『あれ? あれ?』

『わしを直接対象とする異能力なんぞ効かぬぞ、たわけ』

『っ! 長月! 如月!』


 長月も澄を瞳で捉える。


『おお……おおお! この力が澄の力か! 凄い! 血の巡りが循環していく!』


 おそらく能力か肉体をコピーするタイプの異能力者なのだろう。

 こいつに関しては、たしかに澄にとって不利になりかねない。

 自分が相手ということになるのだから……。


『そいっ!』


 如月が小さなボールを澄に投げ飛ばす。ボールは宙で止まると、辺りの物質を凄まじい吸引力で吸い込んでいく。

 

『如月! もういい! 俺だけでなんとかなる! それを放置したら化け物より先にこっちが終わっちまう!』

『暴風程度の吸引力で辺りの物質を吸収かーー小型ブラックホールのような物か』


 澄が背を低くして瞬時に如月に接近、突きで脳天を貫いた。

 脳ミソだけ抜き出し、地面に放り捨てる。


『如月!? てめぇえええ!』

『邪魔は不要だな』


 吸収を終えた玉が地面に落下すると、それがとてつもない重さのただの玉になったのだと理解できる。

 澄はあえて重くなったそれを、霜月の顔面に蹴り飛ばした。


『ガッバッッ!?』


 霜月の顔面に球体がめり込むと、そのまま背後に力なく倒れた。見なくてもわかる。あれでは生きていられまい。


『二人の敵討ちだ! 俺さえいればテメーくらいわけねーんだ!』

『なるほど。わしに勝てそうな異能力を選抜したな? だが、宛は外れたな?』


 二人は近距離から殴り合い、蹴り飛ばし、足がクロスする。

 澄は相手の骨を無理やり折ろうとするが、長月の足の骨も澄と同程度の強度になっているため、易々と折れない。


『だから、俺だけで十分なんだよぉおおおッ!!』 


 澄と長月の戦いがはじまる。

 二人ともとにかく殴り、蹴り、穿つ。

 拳のぶつけ合いだ。しかし、次第に長月は疲弊していき、戦うのでいっぱいいっぱいとなってきた。

 もちろん、澄のほうは疲弊していない。


『遊ぶのはここまでにしておくとしよう』

『ああ!?』

『久しく自分に似合った相手が見つけられたと高揚していたのだが、その程度で息を上げるなど……もう飽きたわい』

『飽きただと!? 飽きただとぉおお!? 俺はまだ全然戦えるぞ! ああ!?』


 長月が威勢を張るのを意図も容易く無視しながら、澄は残酷にもその言葉を口にした。


『ーー血界』

『け?』


 辺りに朱殷の色が染まっていく。木々も、林も、葉っぱも、雑草も、岩も石も、空も雲も星も全部ーー血の色に変わってしまった。

 

『ーー? あ、あれ、な、なんで?』


 長月は震える手をカタカタさせながら、今まで体感してきた澄のパワーが体から抜け出してしまったことを自覚した。


『血壊ーー』

『ぁああまあはいあぃあまぃぅぃぃぃいいいッーー!?』


 長月は爆発し辺りに血肉が飛び散った。

 ふぅ、と一息つくと、澄はスマホを取り出し電話をはじめる。

 おそらく、沙鳥辺りに連絡するのだろう。


『ああ。長月、如月、霜月は全員処分した。ああ。わしもそろそろ、そちらに戻るとしよう』




 目で見る通信を切った。

 やはり澄は凄まじい。こちらの切り札的な存在になるだろう。


 これで残るは、睦月、水無月、文月、神無月、師走の五名のみ。



 知らないうちに、抗争も半分を切ったのだ。

 

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