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Episode103/-微風瑠奈-

 宙を飛翔し、愛のある我が家に向かう少女が二人いた。

 ひとりは微風瑠奈。

 もうひとりは少し離れた位置から愛のある我が家のアジトまで飛行するルーナエアウラ。


 微風瑠奈は愛のある我が家の201号室の窓を風撃でバラバラに吹き飛ばし、中の様子を見る。


「……いない」


 結弦と結愛が最優先。朱音はまだ帰宅した気配がしない。

 二階のベランダから三階へと飛翔し、一気に結弦たちの住む部屋に突入した。


 入った瞬間、重力が強くなり地面に叩きつけられる。

 無理やり顔を前に向け、黒と男、栗落花がいるのを確認する。

 今まさに黒が結愛に鎌を刺そうとするところだった。

 瑠奈は倒れながら風撃を放ち鎌を黒の手から吹き飛ばす。


「やはり、来ると思っていたよ」


 黒は拳銃を取り出し、瑠奈に向けて放つ。

 が、銃弾はすべて弾け飛びバラバラになる。


「ふむ、厄介だな。今は手元に強力な拳銃を持ち得ていない」

「それが最後の足掻きか!」


 瑠奈は黒に向けて倒れ伏せながら風刃を放つ。栗落花の力により三人はどこかへ行ってしまう。


「くそ、四階か! ……アリーシャ!?」


 沙鳥も忘れていたのだろうか?

 四階にはアリーシャもいるのだ。

 瑠奈は慌てて階段を駆け上がり四階の一室へ駆け込む。


「おはようございますですー瑠奈さんはいつもどおりーー」

「ここには来ていない?」


「残念」背後から黒の声。「この部屋にも隠れていたのか、いやはや、アリーシャか。厄介だ。だが、微風瑠奈のおかげで」アリーシャと瑠奈は重力が再び重くなり倒れ伏す。「厄介は少なくて済む。本来なら幻覚を操るアリーシャとはやりあいたくなかったのだが」

「ほざけ! わたしの風の守りを突破できない癖に!」

「突破できない? いいや、もう用意したよ」


 瑠奈は背後から肩を撃たれた。


「がっ!?」

「赤、よくやった。異能力者には異能力の銃弾を」


 赤……?

 と瑠奈が無理やり背後を見ると、あのオッドアイの美少女が銃の形に手を構えていた。黒と赤の後ろには栗落花と正体不明の男もいる。

 まずい状況を作り上げてしまった。


「微風瑠奈の()()いて 風の精霊を喚起(かんき)する 契約(けいやく)(した)がい (いま) 此処(ここ)現界(げんかい)せよ シルフィード! ーー同体化!」


 シルフィードを召喚するなり同体化する。

 しかし、微風瑠奈にとって同体化とは力を底上げする程度の意味しか持たない。つまりーー。


「変わらないよ、なにも。赤、とどめだ」


 重力には逆らえない。

 微風瑠奈の誤算は、まさか赤というイレギュラーが来て、銃弾が風の盾を破るということ。

 背後を向いているのも不幸であった。せめて正面同士向き合っていれば風撃でどうにかなったものをーー。


 ーーわたしは、なんて無力だ。


「はい」


 ーーアリーシャを、大切なひとを守るちからさえない!


 そのとき、激しい音を立てながら窓ガラスが吹き飛んだ。バラバラと、跡形もなく。

 その風撃を放った者は、ルーナエアウラ。

 その風撃のさきには、ガラス片が飛び散り血がついている黒と赤。


「痛いですわ……!」


 ルーナエアウラが一気に突出してくる。


「待ってルーナエアウラ! 重力が!」

「で?」


 ルーナエアウラは気にせず内部に入る。

 普通に佇むルーナエアウラの周りには、微細な緑色の閃光が舞っている。

 既にシルフとの同体化を済ませた状態だ。


「なんだね、きみは?」

「ルーナエアウラ」

「そういうことを聞いたのではないのだが……」


 再び重力過重が瑠奈とアリーシャを襲う。

 しかし、ルーナエアウラは依然として立ったままだ。


「あなたたちが何を用いて異能力を発現しているのかはわからない。だけど」ルーナエアウラは風刃を重力の異能力を放つ男に向けて放つ。男は真っ二つに切り裂かれた。「わたしの風は切り裂くのではなく掻き消す! 不条理な力も全ては風の加護により撃ち抜かれない」


 赤の拳銃も弾け“消した”。

 と、黒たちに手を向け風撃を放つ。

 それが当たる寸前、栗落花の異能力により、黒、赤、栗落花の三人は姿を消した。

 残ったのは男の死体。そして、アリーシャと微風瑠奈と、ルーナエアウラ。ルーナエアウラの力により飛翔してきた結愛と結弦だった。


「あれ……」

「あれ、じゃないよ、まったくさ……これでも魔女序列一位なんだよ?」


 ルーナエアウラはアリーシャの容態を見ながら返事する。


「重力、あんたには効かないの?」

「あんたはやめて。わたしはルーナエアウラ、そっちは微風瑠奈。もう別人なんでしょ? そういうつもりでいるからさ」


 ルーナエアウラは寂しそうに呟く。


「ルーナエアウラには……概念系異能力の重力操作が効かなかったの?」

「重力操作? まあ、瑠奈の風は弾き飛ばすのに特化してるけど、わたしの風は掻き消すのに特化してるから、見えないものでも掻き消すことが可能。大気を操るわたしに対して重力なんてちょろいちょろい」

「わたしには……」


 ーー守る力がなかった。だから沙鳥は一人で任せてくれなかったのか?

 微風瑠奈は悔しそうな表情を浮かべる。


「わたしにも……それを教えて……」

「ーー瑠奈はわたしになりたいの? それとも」


 ーーわたしを越えたいの?

 とルーナエアウラは問う。

 微風瑠奈は歯噛みしたあと、笑みを浮かべる。


「いいや、わたしは微風瑠奈。ルーナエアウラじゃない。見てなよ、いまにあんたの力を越えて見せるから」

「その意気だね」


 ルーナエアウラと微風瑠奈は、ひとまず朱音の帰還を待つのであった。

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