龍族の強さ
帰還すると言っていたがその前にやるべきことを思い出した
それは報告だ
せっかく通話する為の水晶を持っているのに使わないのは勿体ない
早速、水晶を起動しアキナさんに連絡を取る
『こちらレムだ。依頼のドラゴンは精霊種の龍族だった。
これから謝罪させる為に連れ帰るからよろしく頼む』
『いきなり連絡が来たから何かと思えば、予想外のことになってるわね。
分かったわ。こちらで受け入れの準備をしておくわ。
1時間程準備に時間が掛かるから少し待っててね』
流石アキナさんだ話が早くて助かる
「と言うわけだ。
1時間程空の旅を楽しんでから街へ行こう」
「これ、大変なことになりませんかね?」
デイジーが不安そうな顔をしているが
アキナさんに任せておけば万事大丈夫だろ
『ふむ、承った。
では少し空を案内しよう。我の背に乗ってくれ』
オロチさんの背に乗り込むと結界のような膜が張られた
どうやらこれで風圧から守ってくれるようだ
さっきからデイジーが小刻みに震えている
「どうした?トイレならさっさと済ませて来いよ」
「師匠は戦闘は完璧ですけど、デリカシーが足りなさすぎます!
ドラゴン・・・じゃなかった龍族さんの背に乗るのは騎士の憧れなんです!
感動してるんですよ!」
凄く怒られた
まぁ感動してるとこに水を差されたら怒るか
ここは素直に謝っておこう
『話は済んだか?では行くぞ』
オロチさんが翼を広げ、バサリと一仰ぎすると徐々に浮かび上がっていく
なんでも翼に魔力を通し飛行を可能にするらしい
これも魔力頼みなので魔力が少ない龍は飛べないそうだ
と言うことは
結構なサイズの龍を持ちながら飛べるオロチさんは相当な実力者ではなかろうか?
『確かに我は龍族の中では一番強いであろうが・・・お主ほどではない』
「それはどういうことだ?
オロチさんは龍で俺は人だ。
種族的有利も考えるとそこそこの勝負は出来そうだと思うんだが?」
オロチさんは少し身体を捩じり陽に反射するように身体を反らす
陽の下でオロチさんの黒い鱗がキラキラと艶めかしく輝いた
『ふむ・・・
龍は確かに強い。強靭な身体、堅牢な鱗、鋭い牙と爪
膨大な魔力と恵まれた存在だと言える。
しかし、だからと言って戦闘経験が豊富な訳ではない。
強者との戦い方も知る者は少ない。
本能でしか戦ったことがない者ばかりなのじゃ。
レム殿のように千年も戦いに明け暮れる
そんなことをしてたのは遠い先祖
それこそ神代の龍ぐらいではないか?
あれも数百年単位だったとは思うがの』
なるほど、それで俺との戦闘を避けたのか
ところで何故に鱗を見せつけたのか
これが分からない
『まぁだからと言って弱い訳ではない。
恐らく人族の中で龍を殺せるのは
十当主とお主くらいではないかの』
そしてスルー
しかし気になる言葉が・・・十当主?
俺の疑問を感じ取ってかデイジーが補足してくれた
「知らないんですか?!
この国では有名ですよ。
この国の平和の象徴!この国を興した英雄達が祖先を守るために
自らの光と魂を捧げ生み出した人器
剣、短剣、槍、斧、杖、銃、弓、刀
あとは少し特殊なんですが
当主の身に宿るタイプの人器と当主の得意な楽器に宿る物があるそうです」
『我もそこまで詳しくは知らなかったが
強いなんぞという言葉では足りないくらいの強さじゃ。
今までいくつもの国が同じ物を作り出そうとするも失敗して
自滅しておったな。
それくらい純粋な思いで作り出された物なのじゃろう』
「この話で武器が強いだけかって油断する方も多かったようなのですが
人器も人を選ぶそうで十当主の選出はいつもお祭り騒ぎですよ!
大体は当主の直系の方なんですが、貴族にありがちな勘違いをされる方も
稀にいるようでして偶に交代劇が起こっているようです。
劇になっているものもあるので観てみて下さい!」
デイジー目が凄くキラキラしてるぞ
しかしそこまでお勧めされると気になるな
帰ったらアキューとアクマと見に行くか
『ところでレム殿よ。
背で鯉口を切るのは怖いのでやめてもらえないか?』
どうやら先程、身を捩ったのは俺がいきなり刀を抜く動作に入ったかららしい
すまない・・・
試し斬りが出来なかった上にそんな強者の話を聞いたら
戦闘意欲が昂って仕方なかったんだ・・・
俺は素直に謝った
そんな漫才をしていると街が見えてきた
準備は終わってるようだ
では今度こそ帰還だ
ここまで読んで下さった方ありがとうございます。




