訓練と真実の欠片と武器選び
デイジーとの訓練は随分長いこと続いていた
俺も普段の1割程度の戦闘力から始めて今や3割程の力を引き出されている
1日でここまで成長することは予想外であったが嬉しい誤算というやつだな
彼女が必死に攻撃している様子を見て
俺は『闇』との戦いを思い出していた
あの頃は俺も『神』のクソ野郎に連れてこられたばかりで
命のやり取りと言うものを全く理解していなかった
下級の魔物から始まり、生れて初めて死を間近に感じた
徐々に慣れて行った俺はそこから急成長出来た
やはり人生には思い切りと言うのが大事だと痛感出来たな
そうあの頃の俺も今のデイジーのように・・・
ん?なにかおかしい・・・
俺と『闇』がやってたのは殺し合いだ
殺し合いで何故、訓練中のデイジーと姿が被る?
デイジーには悪いが戦いを守備主体にする
そうしている間に『闇』との戦いを思い出す
戦いは『闇』が己の身を削り
魔物を生み出してきた
あの時は初めての殺し合いで頭が回らなかったが
最初から本体が出て来ていたら確実に何も出来ずに殺されていた
それなのに奴がそれをしなかった理由は?
もちろん本体が動けないとか他の理由もあったかも知れない
だがそんな拘束具の類は身に着けていなかったようだった
もちろん魔法陣的なものもなかった
あそこには千年も居たし
千年見続けてきた
記憶違いということはないだろう
それに下級の魔物じゃなく
少し上のランクでも死んでいたし
数が多くても死んでいただろう
つまり俺は『闇』に育てられていた?
何故そんなことを
「師匠ぉお!もう無理であります!
動けないであります!」
身体の感覚に任せて戦闘していたせいで
止めを刺すところだった
守備主体とは言え、殺せるときに殺すのは戦いの鉄則だからな
そのせいで危うくデイジーの頭に剣が刺さるところだった
「おぉすまん。
考え事していた」
「謝罪に心が籠ってなさすぎでありますぅ!」
ひどい、ひどいと泣き喚くデイジー
「ところで訓練前の熱い演説の時と
口調が違うのはなんでだ?」
「それ今更聞きます?!
・・・あれはお父様に報告にくる兵士の方が
していたので、上官に対してはあの口調にするものなのかと」
なるほど?そんな話は初耳だが・・・
ヤスさんのところの衛兵もそんな口調はしてなかったはずだしな
「聞いたことないが・・・
デイジーの喋りやすい口調で大丈夫だぞ」
「助かります。
正直、いつ噛むか不安だったもので・・・」
「よし、泣き止んだな。
次は武器を仕入れに行くぞ」
デイジーの武器は悪くないが
武器を選ばなくなる強さに到達するにはやはり時間がかかる
鍛冶屋に寄る前にシルに情報を貰う
もちろん例の宿の情報もだ
知らなかったがギルドの裏手にあるらしい
俺、武器って拾いものしか使ってないな
俺もついでに自分用の武器買おうかな・・・
デイジーと鍛冶屋に寄る
「ギルドから紹介で寄らせてもらったんだが
誰かいるか?」
「なんじゃ、珍しいの!
ここを紹介されるとは、お主らよっぽどの高ランクなのか!」
出迎えてくれたのは
無駄にデカい声のじいさんだった
聞いてた通りドワーフ!って感じの見た目だな
「高ランクかはわからんが、シルに聞いたらここを勧められたぞ」
「あの嬢ちゃんの目なら大丈夫じゃろ!
で、どんな武器がお望みじゃ?」
デカい笑い声を響かせて聞いてきたが
全く決めてきてないことを言うと店内を見て
決めるよう言ってくれた
俺はどうするか
どんな武器でも達人レベルで使えると自負しているが
使いたい武器と言われると悩むな
一番、慣れた武器はもちろん剣だが
デイジーは何にしたんだろうか?
「デイジーはは決まったのか?」
「あっ師匠!これにしようかと思ってます」
デイジーが持ってきたのは剣と盾だった
なんて定番の騎士装備
「何故、これにしようと?」
「騎士と言えば、剣と盾は必要かと思いまして!
それに訓練も剣で行ってましたし」
「そうか・・・だが大楯はやめておけ。
体格的にだいぶ無理があるだろう。
集団戦では重装もいいが、遊撃メインで行くなら
バックラーのような物の方がいいだろう」
武具なんぞ使えればそれで良いのだが
俺の感性にビビッと来るものがあればいいんだが
と店内を歩いていると
魔具コーナーの所まで来てしまった
ぼぅっと見てるといつの間にか隣に鍛冶屋の親父が来ていた
「なんじゃお前さん魔法も使えるのか?
それなら武具よりこっちの方がいいじゃろうなぁ!」
なにが面白いのか常に笑っているな
嫌いじゃないが
「店主さん、ここはどんな武器なんだ?」
「店主なんて水臭いやつだな!
親父で構わんぞ!そうさなぁ・・・
これは魔法剣士向けのコーナーでの
魔力を通すことで本来の性能を発揮できる。
逆に魔力を通さないと並みの武具にも劣る性能しか発揮出来ん。
だがその本来の性能を発揮した魔具は強力じゃ!
その分、扱いも難しいがな!」
目をキラキラさせて武器を語る親父はとても楽しそうだった
やはりシルに聞いて良かった
こんな親父のいる店なら外れの武器はないだろう
「お主、武器は剣でいいのか?
それならこれなんてどうじゃ!
属性を纏うわけではないが、自己修復と浄化を発動出来る剣じゃ!
若者は地味なのは好かんがな!
これの長所は常に最高の切れ味を維持出来ることなのじゃ!
切れ味も鋼と同程度を誇る!優秀な剣なのじゃ!」
思わず圧倒されてしまった
親父の武器の説明に対する熱量は凄まじいな
その熱量に負け、思わず買いにそうになっていると
入り口から待ったの声が聞こえた
「お待ちなさいレム。
貴方、お財布持ち歩いてないでしょう?」
「主!探しましたぞ!」
アキューとアクマがこちらを呼んでいた
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