勇者パーティーとの戦闘
アキナさんに案内されギルドの訓練場に来た
王国の勇者くんも大人しく付いてきている
勇者の称号が思ったほど効果を発揮しなくて落ち込んでいるようだ
そもそも勇者ってなにする職業かも俺はよく知らないし仕方ない
「レム君、その顔は勇者って何?って顔してるわね。
もしかして勇者の存在知らなかった?」
苦笑い気味の笑みで仕方ないなぁと言った感じに説明してくれた
勇者って言うのは精霊の祝福を受けた存在だそうだ
五歳ほどで教会で洗礼を受け精霊の祝福が確認されると
教会の施設で英才教育を受けるそうだ
それって実質、洗脳じゃないのかと思わなくもないが
この世界では大変に名誉なことだそうで断る親はほとんどいないらしい
結局なにが凄いのかと言うと
勇者は精霊の祝福によって魔物との戦闘中に強化される
しかも普段は適正者が出てこない光の魔法を取得することが出来る
それだけだが、それでも十分戦力としては頼りになると言う事だ
じゃあなんでこのギルドではその威光が通用しないかと言うと
この世界のギルドはそれぞれのギルマスの方針でギルドを運営している
ギルマスがその街のギルド員の教育係みたいなものらしい
このギルドでは人徳が重視されるそうだ
え?俺は?心配そうな顔でアキナさんの顔を伺うと
アキューを助けたのと無暗に力を振るわない事が評価されたようだ
良かった、ちなみにこれも依頼にカウントしてくれるようだ良かった
そんな訳で勇者君は出だしがギルドの査定無視で
自分の言い分を勇者と言う称号で通そうとした為
他のギルド員の不評を買ったというわけだ
それだけであそこまで嫌われることはないと思うが
この態度だと他でも色々やらかしたんだろ
訓練場に到着した
ある程度の取り決めをして位置に着く
ルールは殺しは禁止、ただし俺だけ
勇者パーティーが手加減なんかしても俺が怪我するわけないからな
これを言ったら激怒されたが本当のことなんだから仕方ない
武器、魔法、アイテムの制限はなし
審判はアキナさんが務める
ここまで来たら後は開始の合図を待つだけ
「絶対後悔させてやるからな!
俺は今代の勇者の中でもトップクラスだ。
そんな俺に喧嘩を売ったら、どうなるか思い知らせてやる」
「・・・」
「ふん、今更怖気づいたのか?
だが遅い!遅すぎるぞ!
王国の勇者の力見せてやるぞ!」
なんでこいつは開始の合図を待つだけなのに
いきなり喋り始めるんだ?
大体、勇者は魔物に強いだけで人相手ならば
技量の問題だろうに、何故こうも大きく出れるのか
不思議で仕方ない
「開始」
アキナさんが静かに開始の宣言をする
「まだ俺が話てる途中だろうが!
大人しく待てないのか?
こんなすぐ終わる決闘なんだ。
少しでも長く生きていられるようと言う
俺の気遣いを無駄にしやがって!」
最早、聞くに堪えないな
幸い開始の合図はもう出ている
さっさと終わらせて依頼を見に行こう
魔力を纏い、狩人の少年に突撃する
そのままの速度で少年の目の前を殴りつける
直接はダメだ、殺してしまうからな
拳圧と風圧を狩人に叩きつける
狩人は訓練場の壁に激突して動かなくなった
「こいつ?!いつの間に・・・
早すぎて見えなかったぞ・・・」
勇者君は実力差を今更ながらに感じ取ったのか
顔を少し青くしている
「なんだ負けを認めてくれるのか?
だったら助かるんだが」
「くっ一人倒したからっていい気になりやがって!」
まだ諦めないのか
中々、根性はあるじゃないか
無駄話が過ぎたようだ
魔法使いがいつの間にか詠唱を終えていた
「射貫け『ライトニング』」
幾つもの稲妻が俺に迫る
こんなもの『闇』との戦闘の時に比べると
子供の遊び程度だな
稲妻を手で掴んで束ねる
「「は?」」
「情報は集めておかないとダメだぞ。
このギルドで俺に魔法が効かないのは皆知ってるからな」
そのまま稲妻を鞭のように振り回す
普通、魔法は込めた魔力が切れれば消えるが
俺が捕まえてる間は俺から供給ができる
「非常識にもほどがある?!」
そう言ったのはどっちだったか
振り下ろした稲妻の轟音で分からなかった
土煙が立ち込める中から
勇者君が神々しく輝きながらこちらに向かってくる
これは精霊の祝福か?
「精霊の祝福は魔物にしか効果がないはずでは?」
「ははは!ビビったか?
これは俺が敵だと思った奴に効果があるんだよ!
つまり俺の敵は人類の敵だ!殲滅されるべき物なんだよぉ!」
これが勇者とか世も末なんじゃないか
俺は呆れた顔が隠せそうもないよ
しかも教会の秘密を暴露しちゃってるし
それはどうでもいいか
どうやら精霊の祝福って言うのは
体内に特殊なフィルターみたいなものがあるようだ
身体強化の効率を上げているのだろう
確かに倍くらい性能を上げているようだ
その分燃費も食っているようだがら、連発は出来なさそうだけど
「ちっ流石にばれてるか。
だがこれでも十分だ!」
流石にこれにダメージを通そうとすると殺しかねない
とりあえず回避に専念するか
「なんで当たらないんだ!
大人しく斬られろ!」
「当てられない方が悪いに決まってるだろ?」
『闇』との戦闘を思い出すな
散々避けられて攻撃を食らって弾き飛ばされ追撃を躱して・・・
大変だったなぁ・・・
少し呆けていたようだ
勇者君が顔に青筋を立てながら距離を取っていた
「舐めやがって・・・
これならてめぇも躱せねぇだろ?」
剣に祝福の力を溜め上段に構える
剣がボロボロと崩れ、光が刀身の代わりをしている
光魔法と精霊の祝福の混合技だろうか
街中で使っていいものではだろうに
どうなるか分かって使っているなら尚のこと質が悪い
「対処する時間は与えねぇ。
これで消し飛べ!
精光撃『エクスバスター』!!」
広域型かと思っていたら人一人分ほどサイズの光線だ
これなら躱せるのではと思ったがなるほど
防がないと街の住民が犠牲になるぞってことか
ますます勇者か怪しいな
ただこれくらいなら問題ない
『神』を殺し得た力
『闇』と戦い身に付けた力
「斬滅『魔神斬り』」
勇者が放った光線と俺の斬撃がぶつかる
光線を一度斬ったとしても普通は無駄だが
斬滅は違う
斬った物の構成を滅する
光線自体が形を保てず崩壊する
「これで満足か?
あとの言い訳はアキナさんの方にしてくれ」
「これで決着・・・と言うことでいいわね?」
「ぐぬぬ・・・」
アキナさんの方を見るとそれはもう怒っていた
髪が紅くなっている・・・?
いや違う
炎が髪の毛を象っている
まさに炎髪
手にも炎を纏っている
熱くないんだろうか?
勇者の顔を掴んで警告している
「私が言い出したことだし
今回は多めに見るわ・・・。
次、この街の人達を巻き込む攻撃をしたら・・・分かってるわね?」
底冷えするような声で言っていた
普段の様子からは想像もできないな
俺が防がなくても大丈夫だったんじゃないか?
「レム君、今回は助かったわ。
報酬は上乗せしておくから安心してね。
それと・・・確かに防げたけど
勇者は死んでいたわ。それも含めて良かったわね?勇者?」
美人が怒ると怖いな
ともかくこれで終わりでいいようだ
久しぶりにそこそこ動いたから疲れたな
主に精神的な疲れだが
勇者は反論する気力もないのか
アキナさんが怖くて言えないのか
黙り込んだまま動かない
「王都のギルドと教会にも抗議しないとね」
そう言って笑うアキナさんは少し怖かった
ここまで読んで下さった方ありがとうございます。