証拠は作るもの
あの用心棒の家に着いて
貴族の命令の伝令の手掛かり捜索中だ
と言っても捜索はついでで
実際は来客を告げる魔道具の設置だそうだ
ただし来客が分かるのは俺たちってだけ
こんなこと上手く行くのかって思ったけど
あちらさんの諜報能力を過大評価していたらしい
のこのことやってきて
家の主が不在に事情を察知したのか慌てて帰って行った
それを今、俺が追跡中ってわけだ
アキューの護衛にはヤスさんが就いてる
俺としてもヤスさんは信用出来ると思っている
勘だけど
まぁこれで証拠が出てこないと
向こうの動き待ちになる可能性が高いんだけど
もう面倒くさいから斬っちゃだめかね?
まぁどうしようもなくなったら斬ろう
俺、貴族とか関係ない立ち位置だしね
街が混乱すると思うけど
それはギルドとヤスさんに全部投げよう
そうしよう
ようやく目的地に到着したようだ
だいぶ街外れだが小屋が一軒建っていた
魔法の痕跡があるな
見た目からして土かな?
中を覗き見ると伝令の男が水晶に向かって喋りかけている
はたから見ると頭のおかしい奴にしか見えないな
通話相手は狙いの貴族のようだ
「緊急です!詰め所に潜入させていた男が捕まりました。
恐らく我々の存在にも気付いています」
「やはりたかが用心棒には荷が勝ち過ぎていたか・・・
ケチらずに闇ギルドに依頼すべきだったか?」
「山賊達が殺されたのが予想外でした。
ギルドに潜入していた奴らは上手く調査をごまかしたようですが・・・」
「過ぎたことはしようがあるまい。
証拠は残していないのだ。
我々が捕まることはないだろうが・・・
連中に何を言われるかわからんな。
ギルドマスターの娘を人質に出来れば楽だったのだが
仕方ない。
他家と協力しギルドマスターの首を変えるか」
おぉ真っ黒じゃないか
世話になったことだし
ギルドは気のいいやつばかりだ
カマセも酔いが覚めたら謝ってくれたしな
今のギルドが貴族の好きなようにされれば
あいつらも悲しむだろう
ここはさっさとやってしまうのがいいか
「お邪魔しますー」
小屋を切り倒しながら
ついでに男の首も刎ねる
「悪巧みはいけないなー。
俺、今のギルドが気に入ってるんだよ。
勝手にマスターの首を変えるとか言って欲しくないな」
「・・・尾行されていたのか。
気付けないとは愚図め。
まぁ問題はないな。
貴様一人でなにが出来る。
今の話を聞いて正義感から飛び出してきたのだろうが
証拠もない、証人も今貴様が殺した。
どこに私を罪に問う証拠があるんだ?」
「それなら問題ない。
お前らみたいな奴を全員殺せばいいんだよ。
人は簡単に死ぬからな」
「何を馬鹿なことを!
貴族が簡単に殺せると思うなよ!
そんなに簡単なら俺が親父を殺して
領主になってるんだよ!」
「おいおい、そんな興奮するなよ。
誰かに聞かれて大変なのはお前じゃないのか?
まぁそんなところも小物臭くて俺は好きだよ」
なんとも分かりやすく
怒ってくれてるな
「俺がそんな分かりやすい対策取ってないわけがないだろうが!
クソが!いちいち癪に障る!
ここに来たと言うことは貴様はアキューを助けた男だな。
隠しても無駄だ、報告は受けている。
俺がその街の領主になった暁には貴様らを散々嬲って
殺してやる!」
「対策ねぇ・・・。
話は変わるけどさぁ俺は不思議で仕方ないのよ」
本当になんでこの人種はこうなんだろうか
何故、常識に囚われるのか
自分たちが基本一般人に敵対行動を取ってる自覚がないのか
力を持った一般人・・・の認識を持った奴が現れるとは思わないのか
「この水晶、通話には結構な魔力が必要なんだってな。
魔石とやらに魔力を蓄えて動かしてるんだって?」
俺はこの魔道具のことアキナさんに聞いて知ってたんだよね
魔力が大量に必要それこそアキナさんクラスの人でも
動かした後に戦闘行為は出来ないほど消耗してしまう
くらいには必要だそうだ
動かした後はパスを維持するための魔力で済むから
何とか話は出来るそうだ
パスを繋げるところが一番消耗するらしい
「それがどうした!
ふん、もう十分だ。
貴様の顔は覚えた。
精々、首を洗って待っているがいい」
「そう慌てるなよ。
報告聞いたんなら俺の力知ってるんだろ?
水晶くらいなら何回でも起動できる」
ただし相手の居場所が分からないと
正確にパスを繋げないから
お互いに決まった場所で連絡を取り合うか
動いてる方から止まっている方へ連絡するしかない
「でさ、こっちの水晶は誰に繋がってると思う?」
それを見た奴の姿には笑いを堪えるので大変だった
顔を蒼白、歯は上手く噛み合わないのか
ガチガチとうるさい
「まさか貴様・・・!!」
「お察しの通り、あんたの親父様だよ」
証拠がないなら作ればいいのだ
正直、向こうが乗ってきてくれないと
無意味もいいところだったが
小物ならこんなもんか
普通は思いつくはずだけどな
俺はギルドで組員相手に一晩中組手をやらかして
そのまま動き回ってた
それだけの実力者を領主が意識しないわけがないだろう
仮に敵に回ればその被害は考えもつかない
自分で言うのもなんだけど
実際、街一つ程度なら壊滅させることなんぞ
朝飯前だ
で、アキナさんが会っておいた方がいいからって言うんで
挨拶しに行った
その際、俺なら簡単に起動できるから
くれってお願いした
結果は借金生活に突入したわけだけど
はぁ・・・女の子とイチャイチャする前に借金どうにかしないと
恰好つかないなぁ・・・
とそんな訳で待機してもらってた領主様に
今の会話を全部お伝えしたわけだ
「対策取ってたのってお前の周りだけだろ?
大方、地下室に防音壁、おまけに隠し扉の先で鍵は魔法陣
って感じかな。
こっちは簡易的な小屋一つ
水晶の単独起動はギルマスクラス
そんな人は街にアキナさんしかいない
でもアキナさんが街を離れることはしない
そう睨んでたんだろ?
でも今は俺がいる」
言い当てられたのか
顔が青から赤に変化していた
なんとも多彩なことだ
「愚かな・・・
息子よ、お前には失望した。
その街を上手く収めていれば
いずれはこの街の領主になれたものを・・・
レム君、私が許可しよう。
息子を・・いや、反逆者を捕えてくれ。
もちろん、生死は問わない」
俺は大きく頷く
領主の息子の方に向かう
「今から行くから」
さぁ全力で行こう
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