小学生作文コンテスト テーマ 家族 特別賞『い世界で王さまになったお兄ちゃんへ』
ぼくのお兄ちゃんは、い世界にいます。一年前に突然いなくなったので、とてもびっくりして、お父さんやお母さん、けいさつの人といっしょうけんめい探したのですが見つかりませんでした。
だけど、ある日、お兄ちゃんがみんなの夢に出てきました。でてきたといっても、声がきこえるだけです。お兄ちゃんは元気で、い世界でがんばっているから、心ぱいしなくていいと言いました。みんな安心しました。
お兄ちゃんは、い世界で、王さまになっていました。なぜ、ぼくがそれを知っているかというと、ぼくもい世界に行ったからです。
お兄ちゃんが今どは、ぼくだけの夢にでてきました。
夢のお兄ちゃんは、アストラーたいというもので、心だけの存在だからむこうと、こっちに行ったり来たりできるそうです。
ぼくはお兄ちゃんの弟なので、心のかたちが似ているそうです。だからお兄ちゃんがむこうから、ぼくをよんでくれるといいました。
ぼくは、とても楽しみで、はやくよんでくれないかなと、わくわくして、うまくねむれませんでした。
でも、お兄ちゃんはなかなかよんでくれません。こちらの世界にいるとき、お兄ちゃんはサラリーマンでしたが、よく会社にちこくしていました。そういう、わるいところは、い世界の王さまになってもなおっていないんだなと、思いました。
ぼくがやくそくもわすれちゃうころに、お兄ちゃんがい世界によんでくれました。よくおぼえていませんが、ふわふわとして、たかいところからおちたと思って目をあけたらそこは、い世界でした。ひさしぶりに、お兄ちゃんに会えてうれしかったです。
い世界は、ゲームの世界みたいで、おしろや、高いたてものがありました。ちいさな家もあります。
住んでいる人たちも、少しかわっていて、とてもきれいだけど、ちょっと、こわかったです。
ぼくは、い世界では心だけのぼくなので、ふわふわと空にうかんでいました。それだと、きえちゃうので、お兄ちゃんがずっと、手をつないでいてくれました。
ゆうれい、みたいなものかな、と思いましたが、お兄ちゃんのお友だちには、ぼくがみえるようで、はなしかけてくれました。みんな、とても日本ごがうまかったです。
お兄ちゃんは、会社ではたらいているときよりも、楽しそうでした。
い世界は、こちらとちがって、ま法があります。お兄ちゃんは、ま法がとってもうまいみたいでした。
ぼくが、どうして勉強もしていないのに、ま法がうまいのかきいたら、「そうぞう力がこっちの世界では、大切なんだよ」とおしえてくれました。
お兄ちゃんにま法をみせて、とおねがいしたら、みせてくれました。アニメのじゅもんをとなえて、アニメと同じま法がおきました。だからぼくは、お兄ちゃんのそうぞう力じゃなくて、アニメの人のそうぞう力がすごいと思いました。
お兄ちゃんは、いつも、ゲームとマンガとアニメばっかりしていて、お母さんにおこられていましたが、こうやって役にたつこともあります。だから、ぼくも、おこらないでほしいです。
あと、お兄ちゃんはい世界の食べものにも、かくめいをおこしたとえばっていました。
かみの毛の長い女の人がお皿をもってきました。そこにあったのは、おすしです。い世界では、生で魚は食べません。でも、お兄ちゃんがおすしをみんなにおしえてあげました。とてもおいしいと言っていました。
ぼくは、どうせならカレーをおしえてあげればいいのにと思いましたが、お兄ちゃんはカップラーメンしかつくれないので、カレーはむずかしいんだと思います。
ほかにも、お兄ちゃんはたくさんのものを見せてくれたり、おしえてくれました。どうどうと話すお兄ちゃんは、かっこいいです。お友だちもみんなお兄ちゃんほめていました。はじめはこわいと思ったお友だちも、みんないい人でした。
こわいと、おもったのはみんな、わらわないからです。お兄ちゃんが一人だけ、たくさんの人に囲まれてわらっていました。
なんで、わらわないのかきいたら、い世界ではみんな、わらったり、おこったりしないそうです。でも、お兄ちゃんのお友だちはだんだんお兄ちゃんのマネをして少しわらうように、なってきたそうです。よかったです。
たくさんあそんで、もっとい世界にいたかったのですが、お兄ちゃんがそろそろ帰りなさい、といいました。あんまり、長くいるとよくないことがあるかもしれないといいました。ぼくは、がまんして帰ることにしました。また、よんでくれるとお兄ちゃんが約そくしてくれたからです。
お兄ちゃんが、頭を一度なでてくれました。
それから「さようなら」とお兄ちゃんの声がして、目をあけると、ぼくは、びょういんにいました。
お父さんとお母さんがおどろいていました。ぼくは、一ヶ月もねむっていたのです。
起きたぼくをみて、お父さんもお母さんも泣いていました。お兄ちゃんみたいにどこかにいってしまうと思ったと言いました。ぼくも、かなしくなりました。お兄ちゃんに言いたいことがあったのです。
い世界はとっても楽しくて、きれいなところですが、もぅ、そこには行かないようにしようと決めました。お父さんやお母さんが、かなしくなるからです。それに、お兄ちゃんみたいに、王さまはぼくにはできないと思うからです。
お兄ちゃんは、なんのれんしゅうもしなくて王さまになって、だれも知らないところでお友だちをたくさんつくって、やったこともないま法を使って、すごいです。
そして、かぞくと会えなくて、ひとりぼっちです。お父さんやお母さんに会いたくならないのでしょうか、王さまだから平気なのでしょうか、おとなだから平気なのでしょうか。ぼくには、わかりません。
でも、お兄ちゃんは家には帰らないといっていました。こっちにいるときとちがって、い世界では王さまで、お兄ちゃんがいないとこまる人がたくさんいる。だから、い世界で生きていくんだとぼくに、いいました。
ぼくは、また、かなしくなりました。い世界で王さまになるより前からぼくのお兄ちゃんだったのに、い世界にいってしまうのです。
お兄ちゃんはこっちの世界よりも、い世界のほうが、お兄ちゃんが必ようだと思っているのです。そんなことは、ありません。ちこくしたり、すぐにムダづかいをしたり、ダメなおとなですが、メダカにえさをやったり、ぼくのしゅくだいを手伝ってくれたりやさしいお兄ちゃんでした。
ぼくが、もっと、お兄ちゃんにありがとう、とちゃんと言っていたらお兄ちゃんは、い世界に行かなかったでしょうか。
でも、ぼくは、お兄ちゃんに今書いたことを言うことができませんでした。ぼくは、かんがえることが、いっぱいになると、うまくお話できなくなっちゃいます。
だから、この作文を書くことにしました。もし、お兄ちゃんが夢にでてきたり、こちらに帰ってきたりしたら、この作文をよみます。夜はまくらの下に作文をいれてあります。だから、いつお兄ちゃんがきても、だいじょうぶです。
ぼくは、お兄ちゃんに言いたいことがたくさんあります。今どはちゃんというのです。
お兄ちゃん、おかえりなさい、
いつもあそんでくれて、ありがとう。
大すきだよ、これからもずっといっしょにあそぼうね。
い世界になんていかないでね、
さよなら、なんていわないでね、
お兄ちゃんのおうちは、ここだよ。