099 大陸美人コンテスト前半
翌日、今日は大陸美人コンテストの初日
「タカネ様、先程外に行ったら綺麗な人が走ってました」
「ああ、最後の調整なのかな」
「クーリエも来年に向け走って来ます」
「お、おう、闘技場行く前には戻ってね」
朝から元気だな
早朝の町を走るのは気持ちいいよね
「サテン、朝は食べないの?」
「出場順がすぐだと困るので」
様子見るらしい
万全の状態で挑みたいのだろう
すっかりその道のプロみたいだ
「クリスティは良く食べるなー」
「朝の食事は一日の活力です、たくさん食べないといざと言う時動けません」
「ジルは?」
「顔を見せられないので別室で食べてます」
メイドさんが居るからか
慎重なのは悪い事では無い
どこに知り合いがいるか解らんもんだ
「タカネ様、帰国が伸びる事を手紙で出して来ます」
「ああ、助かるよ」
クリスティが手紙を出しにハンター組合へ行きすぐに戻って来た
クーリエも戻って来たし闘技場へ行こう
俺とサテンは控室へ
クリスティ、ジル、クーリエはVIPルームへ
あ、ムスタングもそっちへよろしく
贅沢な部屋を楽しんでくれ
選手控室にはメイドちゃんが居た
世話係だな
さてどうしよ、あ、サテンに賭けてこなきゃ
券売所へ行く
サテンのオッズは・・・
3倍か
・・・1番人気だな
2番人気は3.8倍
そんなに差は無いけど大陸大会でも1番人気かよ
クーリエはエリーゼに
クリスティはメアリーに
ジルはカオリに賭けを委託されてた
人の代わりに買ったら自分の分買えないじゃないか
3人共快く引き受けてたけど
取りあえずサテンに10万賭ける
「おいあれ出場者かな?」
「・・・あの子は確か剣技20位の補充大会にも出てたぞ、圧倒的な強さだった」
「あの美貌で強いのか?そそるなぁ」
そそるなよ
さっさとサテンの元へ帰るか
・・・1番人気の事は言った方が良いのかな?
言わない方がプレッシャーかからないだろうけど・・・
どうせ実況が言っちゃうと思うんだよな
直前に知るより先に知った方が良いだろう
「そんな訳で1番人気だった」
「そうですか、それよりタカネ、膝枕をしてください」
「お?剣技大会のお返しだな」
ソファに座るとドレスに着替えたサテンが甘えるように太腿に頭を乗せて来る
可愛い奴め、あまり緊張して無いようだ
ドレスがシワにならないようにしてやらないと
頑張るんだぞ
「あ、順番決まったの?」
「はい、タカネが居ない間にくじ引きがありました、サテンは3番目です」
「ええ?えらくはやいな」
「早く終わった方がゆっくり出来るじゃないですか」
まあサテンがそう言うなら
3番目に出て最後にまた全員が揃って出るんだって
ちなみに2日目は点数が低い人かららしい
審査員16人だっけ、どういう点数の付け方するんだろ
お、会場が賑やかになったぞ
始まったのかな?
ガチャ「サテンさん、準備をお願いします」
「タカネの脚・・・」
名残惜しそうに出て行った
じゃあ俺も関係者席に行くか
「タカネじゃないか」
「あれ?ハインツさん?」
「サテンが出るのか?カオリじゃないよな?」
「あはは、サテンだよ、ホメロスはひょっとして奥さんが出るの?」
「ああ、わが妻ソマリが優勝を狙う」
既婚でも出れるんだよな
しかし優勝とは大きく出たな
サテンに勝つとか聞き捨てなりませんぞ
「奥さんは何番目?」
「50番目だ」
「へえ、まだまだ先だね、他の女見てて良いの?」
「緊張してな、一人にしてくれと言われた」
「そっか」
お、サテンが出て来た
会場にどよめきが起こる
「さあ!エントリーナンバー3は今大会1番人気のピエトロのサテンです!なんという美貌!なんというスタイル!」
スタイルについては明日驚いてくれ
ドレスの下にとんでもねえもんが隠れているからな
「むむう、恐ろしく美しいな」
「でも自分の嫁さんが一番でしょ?」
「当然だ!私は大陸20傑は無理だが妻には入って欲しい」
「その場合夫婦間の力関係はどうなるの?」
「う、ううむ、献身的で良い妻なのだが逆転してしまうかも知れんな」
しょんぼりしちゃった
意地悪な事言っちゃったかな
お、サテンがアピールを終え優雅に戻って行く
俺も部屋に戻って出迎えるか
ハインツさんに手を振り控室へ
「綺麗だったよ、サテン」
「一度ドレスを脱ぎます、手伝ってください」
「ああ、シワになったら困るもんな」
ラストは16時頃らしい
それまでは気楽な恰好で過ごしてくれ
俺に膝枕を催促してくる
はいはい、ゆっくりお休み
「6時間くらいゆっくり出来るな」
「気持ち良くて寝てしまいそうです」
「さすがに寝るのはマズいでしょ」
「タカネの太腿のせいですよ?」
「むっちりしてる?俺の太腿」
「いいえ、細くてとても柔らかいです」
そんな脚なのに馬より早く走れて10t以上の物を引きずって持ってこられる
物理を無視した不思議な体だ
「今のうちに何か少しお腹に入れておいたら?」
「・・・そうですね、食べるなら今かも」
「メイドさん、何かあるかな?」
「どうせなのでVIPルームに行ってみますか?」
「そうだね、時間もあるし休むにも向こうの方が良いかも」
「いえ、ご飯食べたらすぐに戻りますよ、タカネと2人が良いので」
「あ、ああ」
今回はサテンが主役だからな
多少の我儘は聞こうじゃないか
関係者通路を抜け一般通路へ
階段を上り闘技場の高い場所にあるVIPルームへ
ドアをノックしたらリオナが出て来た
前回のVIPルームでも世話になったメイドちゃん
「サテンさん、ずば抜けて綺麗でしたよ!」
VIPルームに入った瞬間ジルが小躍りしてた
「こんなにレベルが高いなんて・・・クーリエが出て見たいなんて身の程知らずでした・・・」
大陸大会だからな
ピエトロ大会なら10傑に入る可能性あると思うけど
「今の所サテン様が一番でしょうか?どういう審査基準なのでしょう」
「謎だなクリスティ、聞いておけばよかったな」
「リオナが知ってますよ」
審査員は8か国から16人
内、女性は4人
審査一度に付き、100点満点で決めていく
1600点満点って事か
それを今日明日2回で3200点満点って事か
「これだと地方大会と違って差が付きにくいな」
「そうですね、票の取り合いとは違うんですね」
極端な事を言えば全員が3200点満点という事もあり得る訳だ
「男性審査員が多いならセクシーな水着にした方が良いでしょうか?」
「いや女性4人を侮っちゃ駄目だ、男性満点でも女が0点なら1200、四分の一の点数を失ってしまう」
女性の方が好き嫌いで露骨に差を付けて来る
更に徒党を組みやすいのが女だ
一人に嫌われると裏で全員に嫌われるかもしれない
「そんな変な人が審査員に選ばれるでしょうか?」
「解らん、だが初めての大会だからな、審査員も未熟な可能性が高いと思う」
「審査基準には気品も含まれます、あまりセクシーな物は好まれないかも知れません」
「そうは言ってもリオナ、普通の水着でもサテンだといやらしくなっちゃうんだよ」
「た、たしかに物凄いスタイルだとは思いますが・・・」
「タカネ、恥ずかしいのでやめてください」
水着は無難な物にしておけ
軽い食事を取りながらコンテストを見守る
「クーリエ見て見ろ、あのおっぱい」
「あそこまで行くと下品ですね、垂れていると思います」
「あの人目力がすごいな」
「メイクで誤魔化してますね、すっぴんは大したことないと思います」
「・・・・・・」
クーリエは結構僻みっぽいのかな
見ろサテン、これが女の怖さだぞ
「お、あの子可愛いな」
「4番人気のカミラちゃんですね、母国ではアイドルらしいですよ」
凄く若い、13歳くらいじゃないだろうか
天真爛漫な笑顔
あ、こけた
カオリと同じ手を使う狡猾さ
舌をぺローン
男は盛り上がるが女はシラケる
それじゃあ駄目なんだよ
それに水着審査は期待できそうにない
ん?ここでいったん休憩?
26人終わったらしい
全104人で行われるから四分の一が終わったか
「タカネ、そろそろ戻りましょう」
「解った」
「お二人とも、77番目の方は見ておいた方が良いですよ、2番人気のユングリットさん」
「77番目・・・3回目の休憩前くらいかな、ジル」
「元々大陸一の美人と言われていた方です、サテンさんはその方よりオッズが高いんですよ」
トロワの女神、ユングリット
トロワというのは国の名前
22歳で未婚らしい
国の女神とまで称されるその美貌は見る物全てに活力を与えると言う
「ふーん、覚えてたら見て見るよ」
サテンの手前、あまり興味の無い振りをした
だが正直すっごく見たい
なんとかサテンを説得して見ておかねば
控室に戻るとサテンが俺の太腿にゴロン
・・・見に行けるかなこれ
会場が少し騒がしくなった
「お、また始まったみたい」
「まだまだ時間がありますね、ゆっくりしましょう」
サテンが俺のまたぐらに頭を突っ込む
おい、スカートの中に頭突っ込むのはやり過ぎだぞ
俺だって乙女だから恥ずかしいんだぞ
変な匂いしない?ねえ大丈夫?
「メイドさん、これは瞑想中だから気にしないでね」
「は、はあ」
時間が過ぎて行った
そろそろユングリットさんの出番ではないだろうか
「サテン、2番人気の人見ておかないか?お前のライバルになる人だぞ」
「ほぇ?あ、はい、そろそろ起きて準備もしないと・・・」
髪も直せよ、涎も拭け
少し手直しして関係者席へ
丁度次か?良い時間に来たな
空気が変わる
静寂
なんだ?客席がなにかを感じ取ってるな
出て来た
午後の日差しに照らされる純白のドレス
一気に歓声が巻き起こる
艶のある白い髪、燃えるような真っ赤な目、類いまれなる美貌は勿論の事、スタイルも素晴らしいように見える
ドレスから出た肩が綺麗、あの肩を見れば解る、体の手入れに手を抜いてない
力強い足取りでステージを歩いて来る
手には装飾の剣を持ち、頭にはティアラ
宝飾品も嫌味の無い範囲内だ
しかし午後一番の太陽を味方に付け、神々しく輝きながら中央へ向かって行く
意志の強い目だ、彼女の強さを感じる
「・・・戦乙女だな」
「かっこいいですね、ブレずに真っすぐ歩くだけであんなにお客さんを魅了するとは」
中央で立ち止まり、スピーチ
剣を掲げ、観客を鼓舞している
「すごい一体感だな、生まれ持ったカリスマ性を感じる」
「美しい人が意思を持って気高く生きる姿は感銘を受けます」
おっとサテンも少し呑まれてるな
もっとエレガントな人が出て来ると思ってた
この世界では強さも必要という事か
恐らく会場は今日一番の盛り上がりだろう
サテンの時は順番も早かったから会場が温まってなかった
会場もまだ満員になってなかったもんな
くじ運には見放されたか・・・
「勝てるでしょうか?あの人に」
「美人コンテストだぞ、サテンが一番だ」
「タカネの身内びいきという見方はないですか?」
「おい、自信無くしちゃったの?」
「あのカッコよさはサテンには無いです」
うーん、困ったな
モチベーション低下は命取りだ
なんとかやる気を出させないと明日戦えない
「サテン、なんでもするからやる気出してくれよ」
「え?なんでもって言いました?」
「え?・・・あ、ああ、言ったかも」
あれ、やたら食いついて来た
「優勝したらキスをしてください」
「あ、ああ、そんなので良ければいくらでも」
「口と口で、大人のキスをしましょう」
「え?」
「なんでもすると言いましたよね?」
「はい」
「キスです、ほっぺとか曖昧な物じゃ無く、舌と舌を絡ませる濃厚な物です」
サテンの目に力が籠る
気のせいか背中からオーラが出ているようにも見える
い、良いけどさ
なんか気迫に後ずさりしてしまう
控室に帰り、サテンがドレスを着て髪を直す
最後に全員で顔見世する為の準備をする
メイクも集中して直す
あまり濃くないサテンの美しさを際立たせるだけのソフトなメイク
準備が終わり静かに出番を待つ
静かに精神を集中させるサテン
力抜いていけ
今日はひょっとしたら負けるかもしれないが勝負は明日だ
コンコン「サテンさん準備をお願いします」
サテンが連れて行かれる
じゃあ俺は関係者席に
うお、人が一杯だよ
なんとか隙間を見つけて・・・
おいてめえ、ケツ触ろうとしただろ?
こんなとこでも男ってやつは
腕を締め上げると人混みが空いた
前に行っていいの?なんか悪いね
総勢104名の各国各地域の代表が勢ぞろい
壮観だなー
あ、あの子可愛い
あの人も綺麗だなーその隣もなかなか・・・
控室に居て見逃した20傑候補がチラホラ
「さて、全員出揃いました!審査員の方は最終審査をお願いします!」
点数のつけ直しをするのかな
前半と後半でブレてくるもんな
審査員が代表の回りを歩き、再度吟味
あ、女の審査員同士で集まってる
自分で審査すればいいんだよ
なんで話し合う必要があるのか
自分で判断できないなら審査員なんて引き受けなきゃいいのに
ん?ここでいったん退場?
30分後に結果発表?
よし、控室に戻るか
「サテン、お疲れさま」
「ふう、やっと終わりましたね」
「明日もあるんだからな、もう一日頑張れよ」
「明日頑張ればキス・・・濃厚な・・・」
・・・それを糧に頑張ってくれるなら別に良いけどさ
結果が発表された
俺達はホテルに戻る
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「1位が満点とね」
「サテンさんは2位で20点差ですか」
1位のユングリットさんは1600点
2位のサテンは1580点だった
「本番は明日です、サテン様、頑張ってください!」
「はい、愛の為に頑張ります」
サテンはさほど落ち込んでない
想定していたのだろうか
俺は正直ショックだ
1位が明日も満点ならひっくり返せないではないか
ピーちゃんが来た
「え?女性審査委員が揃ってサテンを95点にしたの?」
「そうなのよぉん、ホントは言っちゃいけないんだけどねぇん」
「なんで点数をあわせる必要があるの?」
「・・・もっと自主性のある審査員を選ぶべきだったんでしょうけどぉん、時間が無かったからねぇん」
「そんなのもう組織票と一緒じゃん」
「今回の審査員は女性の立場が弱い国の者が多いからぁん、自分の意思が弱いのよぉん」
「・・・だったら強い女に憧れるね、戦乙女みたいな」
「ユングリットちゃんはそこまで計算したと思うわぁん」
うーむ、そうだったのか
いろんなバリエーション用意しておくべきだったかな
しかし3番手だったし審査員の傾向を読む暇なんてなかった
「大丈夫ですよタカネ、水着審査では差を付けて見せます」
「お、おう、自信あるの?サテン」
「ユングリットさんを間近で見て来ました、素晴らしいスタイルでしたがタカネ程ではありません」
「・・・って事は必然的に俺とスタイルが一緒のサテンの方が上って事になるな」
ドレスの上からそれを見抜いたのか?
しかし女の感を侮る事は出来ない
・・・サテンに自信があるのなら何も言うまい
俺は明日の結果を見届けるだけだ
「明日はラストがユングリットさん、ラス前がサテンか」
「ラストが有利な気がしますね」
「続けて出るなら差は浮彫です、先に出てユングリットさんを霞ませてあげますよ」
「おお、サテンがすごい自信だ」
「クリスティが間違ってました、お仕置きしてください」
クリスティのお尻にサテンのヒールが食い込む
嬉しそうに雄叫びを上げるクリスティ
サテンもいつもと違うな
静かに闘志をたぎらせているのだろうか
兎に角勝負は明日だ
俺はサテンの優勝を信じてるからな