087 告白
昼食を取り、ホテルに戻ってカオリを鍛え上げる
何度か再生の杖を使って繰り返し繰り返し
「そろそろ夕方だ、カオリはパーティ行くんだろ?」
「タカネも行けば良いのに」
「20位返上したやつがどの面さげて・・・」
「はいはい、そうだったね」
部屋に戻り身ぎれいにしてカオリはパーティの準備をする
もう荷物全部こっちに持って来てるんだね
まあいいけどさ
「サテン、綺麗だよ」
「まあ、最近影の薄いサテンにやっと気づいてくれましたか?」
「そ、そんな事無いよ、サテンはいつも輝いてるよ」
「うふふ、冗談ですよ、カオリの大会ですから、カオリの世話を焼いてあげてください」
「ごめんな?今日は一緒に寝るか?」
「は、はい」
「メアリー、たらふく食って来いよ!」
「わかったら、王宮丸かじりら」
「オカマ王子には気を付けろよ?オカマって言うと怒るぞ」
「それは当たり前ら、メアリーはそこまでバカじゃないら」
「俺は去年怒らせちゃってさ」
「タカネは考えなしに動くところがあるら、もっとメアリーを見習うら」
「お、おう」
「シオン、そのドレス背中がセクシーだな」
「ちょっと出しすぎでしょうか?」
「お尻の辺りまで・・・良いと思うよ?」
「タカネ様、シオンも最近体を鍛え始めたんですよ?」
「そうなの?」
「せっかく指輪を頂いたので、軽い筋トレ程度ですが」
「そっか、それでしなやかな体つきになって来たんだな」
「うふふ、綺麗になると自信が付きますわ、ドレスもセクシーな物を着て見たくなりますわ」
「似合ってるよ?俺が男ならほっとかない」
「男に矯味はありませんわ」
「そうだったっけ」
「ミヤビさんはパーティ行くの?」
「弟子をほったらかしすぎですからな、流石にパーティは顔を出すでござる」
「頭巾は被ったままなんだね」
「忍びは正体をあかさない物でござる、ニンニン」
「ミヤビさん何歳なの?」
「それは内緒でござる」
「うーん、顔くらい見て見たいけど」
「仕方ないでござるな、タカネ殿は特別でござる」ガバッ
「!!!」
に、日本人形みたい
歳は20代半ばくらい
艶のある黒髪、前髪パッツン、ストレートロングヘアー
肌が白く小顔で少し童顔、おちょぼ口で可愛らしい
「か、かわいい」
「ははは、照れるでござる」
最初見た時変態としか思えなかったのに
頭巾の下にこんな美しい顔を隠していたとは
「素顔の事は内緒でござるぞ?」
「うん、解った、ギャップがすごいね」
「ギャップは大事でありんす、こうやって素顔でカモフラージュして行動する事もあるでやんす」
「言動が定まってないな」
苦笑いをしてミヤビさんが頭巾を被ってしまった
ああ、勿体ない・・・
こうして皆、パーティに行ってしまった
今日はムスタングと夕飯食べるか
「美味しいか?ムスタング」
「ケーン」
「大きくなったな、またそろそろ鞍を変えないと駄目かな?」
「ケーン」
・・・やっぱ話し相手欲しいな
「メイドちゃん、今年のユーメリアの王子は強いぞ?」
「そうなんですか?闘技場には一度も行った事が無くて」
「あんまり興味ない?それともチケットが高すぎるとか」
「はい、チケットがもっと安ければ見て見たい気持ちはあります」
「よーし、風呂場で丹念に洗ってくれたらチップをはずもう」
「い、いけませんわ、お部屋の代金で十分頂いてますから」
「まあいいからいいから」
風呂に入って3人のメイドちゃんに寄ってたかって洗って貰った
うーん、贅沢だ
え?そんなとこまで?
そ、そんなとこで挟んで洗ってくれるの?
チップをたっぷりはずんだった
皆が帰って来た
「パーティはどうだった?」
「ミヤビさんの弟子が酔っぱらって素っ裸になっちゃった」
「ええ?行きたかったなぁ」
「破門したいでござる」
そろそろ寝よう
サテン、おいで
「サテン、パーティーでナンパされなかったか?」
「ナンパはされましたが、カオリとミヤビさんが守ってくれました」
「荒くれ者共もあの2人が居れば安心だ」
「シオンも声を掛けられてましたよ」
「男から?」
「?・・・そうですけど」
「そうか」モミモミ
「わっ!た、タカネっ!」
以前なら心配でなんだかんだ言って付いて行ってたのにな
皆、頼りになるしもうそこまでしなくても良くなって来た
喜ぶべき事と同時に少し寂しい
「もう俺が居なくてもみんな大丈夫なんだな・・・」
「え?タカネ居なくなるんですか?許しませんよ」
「ん?いや、離れるつもりは無いよ」
「駄目ですからね、離しません」
サテンに思い切り抱きしめられながら寝た。
翌日
「カオリ、今日はメイファンに話聞くから俺が見て無くても怒るなよ」
「むー」
「明日はちゃんと見るからさ、決勝トーナメント進むんだよな?」
「当たり前でしょ?」
「じゃあ今日も頑張って」
さて、それでは闘技場に行くか
闘技場VIPルーム
本日の給仕はメイファンとタリア
今日はリオナがお休みらしい
「それではメイファン、話を聞かせて欲しい、タリア、申し訳ないが少し込み入った事情があるから外して貰っていいか?」
「え?・・・解りました」
他国のVIP客とメイドのメイファンにどのようなつながりがあるのか
気になるとは思うけど、メイファンは過去の事を知られたくは無いだろう
「拙者も席を外すでござるか?」
「申し訳ない、なるべ・・・
「構いませんアル、ミヤビ様も・・・スイッチアル」
「・・・そうだな、聞いて貰った方がいいかもな」
メイファンが語りだす
まず、メイファンは台湾人だ
現在23歳で8年前にこっちの世界へ飛ばされて来た
エメラルドの剣術特化のスイッチ持ち
「仲間だった奴らの事も聞かせてくれ」
リーダーのイゴール 男
ロシア人 現在26歳 ルビー万能型
ホセ 男
メキシコ人 現在26歳 エメラルド剣術特化
ゾイゾイ 男 黒人
モザンビーク人 現在24歳 エメラルド剣術特化
そして無くなったキンバリー 女
オーストラリア人 享年23歳 エメラルド魔術特化
「全員スイッチ持ちでパーティを組んでいたでござるか?」
「はいアル」
「2年前なにが起こったかミヤビさんに話していいか?」
「構いませんアル」
ミヤビさんに説明する
頭巾の中の眉間にシワが寄ってゆく
「自分達が逃げる為に村人を犠牲にしたでござるか?」
「解らないアル、リーダーが突然走り出したアル」
「だが、村で立ち止まったのはメイファンだけだった、他の3人は通り過ぎて行った」
「リーダーがどうして村の方角に走ったか解らないアル、メイファンもキンバリーが死んでパニックでよく考えられなかったアル」
「みんなパニックになってそうなったのか、リーダーは村人を犠牲にするつもりだったのか」
「・・・リーダーがこの世界に来たのは4年前アル、最初は謙虚で良いヤツだったアル」
「最初はって事は・・・」
「一人だけルビーのスイッチ持ちだったアル、次第に・・・」
力の差から調子に乗るようになってしまったか
他の4人を見下していたかもしれない
「・・・そして自分がリーダーをやると言い出したアル」
「なるほど・・・」
「強すぎる力は自分を過信してしまうものでござる」
「リーダーは自分がスイッチだとペラペラ言ってたそうだ」
「なんと愚かな」
「今は多分自分を隠すために言ってないと思うアル」
そんな事を仕出かしたなら言わなくなるか
自分の愚かさに気付いているだろうか
「まあ俺らもメイファンから見たらバレバレらしいけど」
「タカネ殿が拙者のクナイを弾くからでござる、真後ろに反応するからでござる」
「しょうがないでしょ」
「同じスイッチ持ちなのでそう思ってしまうアル、戦い方が独特アル」
「8年も居れば解るようになっちゃうのかな」
「拙者だって解るでござる、タカネ殿なんて一目で解ったでござる」
「ははは」
能力に頼りすぎな戦い方してるもんな
俺も見せびらかしてたんだな・・・
「・・・タカネ様は3人を捕まえると言ってたアルが大丈夫アルか?今も3人一緒に居るか解らないアルが・・・」
「ん?ああ負けるんじゃないかって事?」
「リーダーはさっき言った通りルビーアル、魔法も使うアル」
「・・・俺も魔法なら使えるから心配しないで」
「やはりそうアルか?不思議な杖で王子様の傷を治したとは聞いたアルが・・・」
「おっと、静かに生きる為に20位返上したのに俺はまた余計な事を」
「ううむ、そう言えば・・・てっきり杖自体に治癒能力があるのかと思ったでござる」
「あれ?ミヤビさんも俺が魔法使えるって知らなかったっけ?」
「初耳でござる」
「うーん、自分の不用意な行動の数々・・・」
「あの強さで魔法も使える万能型・・・むむむ」
「み、ミヤビさん、お互い詮索はやめようよ」
「そうでござるな、タカネ殿には顔も見せたでござるがそんなに隠したいのなら」
「なんか棘があるような」
「仲良くなれたと思ってたでござるが、拙者の早とちりでござったか」
「罪悪感が湧くから」
「所詮忍びなど孤独な存在でござるな、信用されず本当の事も打ち明けて貰えない」
「解りました言いますから、でも2人共絶対口外はしないでください」
くそう
自ら墓穴を掘ってる気がしてならない
「なんとダイヤが存在したとは・・・」
「す、すごいアル・・・」
「すごいって言っても運なんだから、それに弊害が多すぎるから大陸20位を返上したんだよ」
「2人が明かしたのなら拙者も言わない訳にはいかないでござる、拙者はルビーの剣術特化でござる」
「ああやっぱり」
「バレていたでござるか」
「お二人ともすごいアル、この事は墓まで持って行くので安心して欲しいアル」
「頼むよ、俺も魔王になりたくはないからね」
ふう、言っちゃった
変なもんで開放感を感じる
心のどこかで自慢したいと言う気持ちもあるのかも知れない
「そんな訳で魔法も使えるからスイッチ持ちが3人でも心配しないで」
「油断は禁物でござる、拙者も手伝うでござる」
「わ、私も手伝うアル」
「うーん、気持ちは嬉しいけど俺一人ならムスタングで他国までひとっ跳びだから」
「やはり他国にいると思うでござるか?」
「あんだけのことやらかして国内に居るかな?」
「居ないと思うアル、噂は全然聞かないアル」
「しかし、捕まえてどうするのでござるか?」
「取りあえずペガサスの馬車で連れて来て村人の墓の前で土下座させる」
「その後は?」
「・・・ユーメリアに引き渡すかな、犯罪者として」
「それだとメイファン殿も罪に問われるのではないですかな?」
「うーん、そうなるのか」
「・・・私はしょうがないアル、罪を償うアル」
「情状酌量とかこの世界にあるのかな」
「それはユーメリアの法律しだいでござる」
「あったと思うアル」
どうしようかな
逃げた3人とメイファンの罪が一緒だとは思えない
しかし無罪と言うのもおかしいか?
「うーん、ユーメリアの王子に掛け合ってみるかな?」
「ピオリム王子にアルか?恐れ多いアル」
「骨折治してやったんだから一個くらい言う事聞いて貰おう」
「今は大会に集中させるでござる、終わってからの方が良いでござる」
「そうだね」
よし、これくらいでいいかな
もう昼か
タリアを呼び戻そう
「仲間外れは寂しいものですね・・・」
「ごめんごめん」
「昼食を準備します」
昼食中
「タカネは本当に見てないんだから」
「ああ、どうなったの?」
「2勝したよ、午後に後2戦ある」
「戦績は?」
「クルセイド人が全勝、1敗がカオリ、3敗が2人」
「あと1勝で予選突破か」
「午後は見ててよね」
「はいはい」
クルセイド人と黒イケメンは予選突破を決めたらしい
ピオリム王子も1敗をキープ、あと1勝で予選突破
「拙者の弟子も2敗キープでござる、なんとか2位で突破して欲しいでござる」
折角だし少しでも上に行って欲しいよな
午後の部
ミヤビさんの弟子がいきなり負ける
もう駄目なの?
いや、これで3敗が3人になったらしい
1敗が1人と3敗が3人の団子状態
まだ望みはある
カオリが勝った
これで予選突破
取りあえずおめでとう
投げキッスをこちらに飛ばして来た
ピオリム王子が勝った
予選突破だ
1位通過か2位通過か
最終戦まで解らない
黒イケメンだ
あいつは本当にクールだな
クスリとも笑わない
なんなく勝利
淡々と戻って行く
予選が終了した
「おめでとうカオリ」
「うん、じゃあ帰って特訓ね!」
「はいはい」
ホテルに戻ってカオリをしごく
明日の決勝は昼からだ
午前中も特訓するのかな
俺もハンター組合に行って逃げた3人の事調べたいんだけど
大会終わってからにしろ?
はいはい、解ったよ