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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
86/134

086 代償

宣伝で―す

一般で新連載『異世界ホール ―異世界と相互通行可能な穴が俺の町に現れた―』

http://ncode.syosetu.com/n3335ds/ を始めました

お時間ある時にでも是非

次の日、朝から風呂に入る

昨日カオリの筋トレに付き合ったからな

メイドちゃん達が3人がかりで俺を体を洗ってくれる

うひょひょ、そ、そこはだめ


「カオリ、疲れ残ってるかもしれないから再生の杖使っておくよ」

「うん、お願いするよ」


カオリの体全体に再生の杖を使う

これってなんだかインチキな気もするなあ

みんな疲れが溜まって行くだろうにカオリはリフレッシュな状態で試合に臨める


「ああ、眠気もスッキリだよ」

「万全な状態か?」

「バッチリ」


じゃあ試合会場へ行こうぜ


闘技場


「今日もよろしく、リオナと・・・あれ?」

「メイファンは具合を悪くしてしまいましてお休みです」

「本日はタリアが代わりをお勤めします」


・・・仮病かな

よっぽど嫌われちゃったかな


「ムスタングちゃんもよろしくね」

「ケーン」

「大人しいでしょ?」

「はい、昨日すっかり仲良くなりました」

「ケーン」


まあいいや、ゆっくり試合を見よう

カオリは今日は5試合か

明日は中休みだよな?

明後日予選終了で次の日が決勝だ


さっそくカオリが出て来た

危なげなく勝利するカオリ

こっちに投げキッスする余裕

くれぐれも油断はするなよ


・・・退屈だな

2日目で試合見るのに飽きて来た

正直凄い人は居ないと思う


「ミヤビさんが出れば優勝出来たんじゃないかな」

「まだ手の内を隠している者も居るかも知れないでござる」

「そうかも知れないけど、それでも余裕だと思う」


一日見続けて解った

強いのは黒ずくめのイケメンとクルセイド人

カオリはちょっとだけ劣るけどそこまで差は無い

だから優勝するのはこの3人のうちの誰かだろう

そして3人共ミヤビさんには勝てない

ミヤビさんはクリスティより全然強いからな

ユーメリアの王子はグンと劣って4番手


「ミヤビさんは以前20傑だったんだよね?どうして外れちゃったの?やっぱり力を制限してるから?」

「大会前に滝にうたれて修行してたら風邪を引いたでござる、当日は高熱の状態で出場したのでござるが・・・いや、言い訳はしないでござる」

「うーん、勿体ない」

「返上の方が勿体ないでござる」

「そーだった」


おや、ユーメリアの王子が負けたな

相手はそんなに強くなかったけど

ん?担架が出て来た

足を怪我した様だ


その反対側ではクルセイド人が相手をふっ飛ばした

あーあ、壁に当たって動けない

また担架が出て来る

大忙しだな


「荒れてるでござる」

「あのクルセイド人も熱くなると大振りになるね」

「隙が多くなるでござる」


こうなると優勝候補はミヤビさんの言う通り黒イケメンかな


コンコン


ん?だれかがノックした


メイドちゃんが出てくれる


「・・・タカネ様、大会関係者がお話があると」

「通して」


「我が国の王子が古傷を痛めてしまいまして・・・」

「はあ」

「昨日、骨折を治したと聞いたのですが」

「ああ、治して欲しいって事?」


昨日カオリの怪我を治したのを見て来たらしい


「うーん、良いけど観戦中だしあまり便利使いされるのも」

「100万アラン払うのでなんとか・・・」

「・・・金はいいや、でもあまり杖の事を口外して欲しくないんだよね」

「解りました、秘密は厳守します」


やれやれ、じゃあ昨日追い出された関係者エリアへ

治療室?そんなのあったんだ


「いでえぇ、いでぇよぉ、死んじゃうよぉ」

「王子、落ち着いてください、死にませんから」

「お、王女じゃっつってるだろうがぁ、いてえよぉ」


久し振りだな、オカマ王子


「左ひざの半月板です、以前割れてしまってから時々痛めるらしくて」

「半月板って軟骨でしたっけ」


腿とすねの間にある骨だっけ

半月板損傷ってやつか

軟骨ってどんどんすり減って行くから一度痛めるとクセになっちゃうんだろうな


「いでえよぉ」

「ちょっと暴れないでくれ」

「お、お前、前回優勝のぉ」

「暴れると美しい顔が台無しですよ?」

「!・・・・・・」


大人しくなった

じゃあ治すか

オカマ王子の膝を黄色い光が包んでいく


「あ!・・・あ・・・ああ・・・」

「王子、どうですか?」

「痛みが・・・無い」


腫れも引いて行く

ん?光が収まらないな

ちょっとだけ昨日より長く治すのに時間がかかる


「なんだか、試合前より膝がしっかりしてるような気がするわぁん」

「・・・軟骨再生したのかな」


王子が立ち上がってみる


「・・・懐かしい感覚だわぁん、古傷を負う前に戻った様な」

「すり減った部分も再生したのかも知れない」

「すごい杖ねぇ、売ってくれないかしらぁん?」

「それは駄目、私のでは無いし」

「あらぁ、残念ねぇん」


用も済んだし長居は無用

くれぐれも杖の事は内密にと再度言い残し、VIPルームに戻る


「タカネ殿、カオリ殿が勝ったでござる」

「2勝目か」

「客席にタカネ殿が居ないのを見て怒ってたでござるよ」

「あ、あらら」


カオリは機嫌損ねると面倒なんだよな

はあ、また胸をネチネチと揉まれる・・・


しばらくしてユーメリアの王子が出て来た

うん、なんとも無さそう

心配してかメイド達も様子を伺っている

やはり自国の代表の事は気になるのか

さて、試合はどうなるか



「動きが激変したでござるな」

「今まで膝を庇って戦ってたんだと思う」

「・・・優勝候補はユーメリアの王子に変えるでござる」


そこまでの評価か

だが確かに別人になった

堅実な戦い方だったのに大胆な飛び込みで勝っていた

王子が従来の戦い方を取り戻したようだ


「カオリのライバルを増やしちゃったかな」

「うう、我が国の代表が2敗目を・・・」

「あんな恰好で戦うと胸が動いて大変じゃないかな?」

「言っても聞かないでござる」

「アメリカ人ぽいね」


ミヤビさんの弟子は言っちゃ悪いが優勝は無理だ

大技で仕留めたがるし

隙だらけで防御はヘタクソ


「午前の部が終わったようでござる」

「ただいま昼食をお持ちします」


昼食中


「タカネ!なんでカオリの2試合目見てなかったの!」

「うーん、治療を頼まれたんだよ」

「タカネはカオリの応援の為にここまで来たんでしょ!」

「モグモグ、美味しいら」

「メアリー、当然のように食うな」

「タカネ!まだ話は終わってないよ!」


理不尽に怒られる可哀そうな俺

カオリも控室で休んでりゃいいのにこんなとこまで文句言いに来やがって


「はあ、で、カオリちゃんのライバルを作り上げてしまったと」

「はい、すみません」

「おかわりら」

「タカネはカオリの応援に来たのに敵に塩を送ったと」

「そうなりますね」

「おかわりら」


プンスカ怒るカオリを宥める


「まあまあカオリ、昼食でも食べて落ち着いてください」モグモグ

「サテンまで・・・俺の分残しておいてよ」

「カオリちゃんは軽い物で良いよ、眠くなっちゃうし、そのサラダとスープ」

「ここで食べるんですね」

「なにかご不満でも?」

「いえ、カオリさんの大会ですから」


カオリを膝に乗せ、ご飯を食べさせてあげる事になった

なんでこんな事を・・・


「あーん」

「ス―プは危なくないか?熱いぞ」

「ふーふーして」

「ふーふー」

「あーん・・・おいひい」

「子供じゃないんだからよ」


「シオンはどうしたの?」

「閉じこもりっきりだと可愛そうだから、遊んで来ていいよって言った」

「俺にも自由をくれよ」

「タカネはカオリちゃんの応援に来たんでしょ?」

「うるせえ、負けちまえ」

「な!なんですってー!」

「重いんだよデブが!さっさと降りろ!」

「ガーン!」


カオリを無理矢理下ろした

呆然とし、我にかえると涙目になった


「ぐぐ、タカネめ、絶対に許さない・・・」

「一緒にタカネをやっつけるら、クーリエたんを取り戻すら」

「午後も頑張ってねー」

「この怒りを次の相手にすべてぶつけてやる」


めらめらと燃えるカオリ

可哀そうな次の相手

八つ当たりよくない


出て来た、がに股でどしどし歩いて来るカオリ

おい、次の相手が委縮してるぞ

どんだけ怖い顔してんだよ

試合が始まり速攻で相手をやっつける

おいおい、もう勝負ついてるよ

哀れな相手は10回くらい余計に攻撃されてた


結局この日はカオリは5勝

合計8勝1敗だ

明日は休みだしゆっくりしたいなあ


「タカネ!帰ったら特訓だからね!明日も!」

「えー」

「四の五の言わない!」


怒りをパワーに燃えるカオリ

ホテルに戻ってからたっぷり特訓をし、たっぷりマッサージをさせられた



翌日

今日は中休みだ

夕方ユーメリアの王宮主催のパーティがあるだけだが、俺には関係ない


「タカネ、さっさと中庭に来てよ」

「うーん、朝から元気だな」


はあ、今日も特訓か

カオリに機嫌は少しマシにはなってたが、まだちょっと怒ってるかも


「サテンはメアリーとシオンとで観光してきますね」

「行ってらっしゃい、ナンパには気を付けろよ」

「指輪付けていくので大丈夫ですよ」


・・・俺はカオリの御守りか

仕方ない、激しく特訓をする

疲れたろ?もう休めば?

再生の杖で復活するカオリ

これの繰り返し


「昼だぞ?ご飯食って来ようよ」

「もう?仕方ないなあ」


ふう、ずっと特訓じゃこっちが飽きるっての

町に出てレストランを探す

物価高いんだよなあ

軽いもんでいいから少しお腹に入れたい


「あれ?あの子・・・」

「・・・初日に闘技場に居たメイドの子だね」

「それに、連れだって居るのは」


少し路地に入った場所にメイファンが居た

・・・一緒に居るのは、確かヘンリーとハーネス

俺がユーメリアに来るとき盗賊達に襲われてた魔法使いと戦士だ

なんで首都に居るんだ?それもメイファンと一緒だなんて


「・・・なんだか様子が変だね」

「ああ、仲良さそうでは無いな」


メイファンはビビってる

ヘンリーは機嫌が悪そう

ハーネスは素知らぬ顔


「あっちの2人は誰なの?」

「ユーメリアに来る途中で盗賊から助けた、ヘンリーはスイッチの事知ってたんだよな」

「またタカネったら変な事に首突っ込んで」

「無視すりゃ良かったかな?あの2人は盗賊に惨殺されれば良かったとカオリは言うんだな?」

「そ、そんな事言ってないよ」

「そうだ、言ってなかったけどメイファンはスイッチだと思う」

「え?そうなの?」


あらら、ヘンリーがメイファンに詰め寄ってる

!・・・メイファンがお金を出した

ヘンリーがそれを毟り取り、数えるが・・・また怒りだした


「・・・足りないって言ってるみたいだね」

「うーん、どういう状況なのかな」

「メイドさん可哀そうだよ、あんなに怯えちゃって」

「うーん、どうしたもんか」

「助けないの?タカネが助けないならカオリが助けるけど」

「見た目はヘンリーが悪者だけどさ、状況を知らない俺達が安易にそう判断して良いのだろうか」

「それにしたって可愛そうだよ、もういい!カオリが行くからね!」

「あっ」


カオリが飛び出した

仕方ない、俺も出ていくか


「待った待った待ったぁあ!か弱い女子からお金を巻き上げるそこの不届き者!このカオリ様が成敗してくれる!」

「な、なんだお前は?!」

「あらら?見た顔が居るね」

「!・・・お前は!」


ヘンリーが俺の顔を見てまた睨みだした

・・・そうだな、理由くらい聞いておくか


「俺は何故助けたのに睨まれてんの?」

「お前はスイッチだろうが!お前達のせいで俺の村はッ!」

「どーゆーことだ?」

「五月蠅い卑怯者!人間離れした能力を安易に使って回りを不幸にするとも知らずにッ・・・」


ああ、なんとなく察しがついた

スイッチ持ちが何かやれば弊害が出る

ここ数カ月で俺が散々体験した事だ

ヘンリーはその被害者という事だろうか


「ここに居るこの女とその仲間はなぁ!2年前に俺の村を無茶苦茶にしやがったんだよ!」

「ひぃぃ、ごめんなさいアル」

「この女以外は逃げやがった!だからこの女に責任を取らせているんだ!」

「お、お給料はそれで全部アル、それで勘弁して欲しいアル」

「こんなもんじゃ何時になるか解らんだろうが!さっさと娼館行って稼いで来い!」

「そ、それだけは勘弁して欲しいアル、お願い、お願いアル」

「ま、待ってよ!いくらなんでも娼館はひどすぎない?」

「じゃあお前が代わりに金を稼いでくれるのか?!村人113人分の墓の代金を!」


墓?

113人も死んだのか?

そんな事態をメイファンとその仲間たちが引き起こしてしまったと?


「少し詳しく聞かせてくれないか?」

「うるさい!スイッチが近づくな!」

「・・・ヘンリー落ち着け、私が話すよ」


ハーネスが説明してくれるそうだ


2年前、ヘンリーの村の近くに3匹のドラゴンが現れた

村人たちは刺激せずにどこかへ行ってくれるのを待った

だがたまたま村に立ち寄ったメイファン達ハンター一行はドラゴンを倒してくると言い出した

村人たちは止めた、ドラゴン達だってわざわざ村の中までは入って来ない、このまま周辺のエサが無くなればどこかに行くはずだ

だがハンター達はこう言った、『自分達はスイッチだから大丈夫だ』と

それにドラゴンなら十分すぎるくらい倒した事がある、3匹でも大丈夫だと

だがそうはならなかった


メイファンのパーティにはヒーラーが居たらしい

そのヒーラーが真っ先にやられてしまい、パーティの連携は崩壊した

傷ついても回復することが出来ない

その恐怖はあっと言う間にメイファン達を支配した

そして、何を思ったのかリーダーが村の方角に逃げだしたらしい

メイファンとあと2人もその跡を追った

こうしてメイファン達は村に3匹のドラゴンを連れてきてしまう事になる


ドラゴン達が村人達を襲う

村はあっと言う間に惨劇の舞台となった

そこで立ち止まったのはメイファン一人だけだったらしい

他の3人のパーティメンバーは村を通り過ぎ、どこへ行ったのか解らない


メイファンはなんとか村人を助けようと努力した

だが1匹のドラゴンの尻尾に薙ぎ払われてしまい、気を失ってしまう

茂みの中に飛ばされたメイファンは運が良かったのかそのままドラゴンに無視された

だが惨劇は続く

村人も30人くらいは逃げ延びた

しかし年寄り子供が多かった村は大半が逃げ遅れる

それを助けようとした者たちを含めて


「私の妻と子供も死んだんだ!ドラゴンに食いちぎられて・・・ううっ!」

「ドラゴンの炎で燃え盛る村に戻ってみると、生きていたのはメイファンだけだったそうだよ」

「・・・ごめんなさい、ごめんなさいアル」


・・・なにも言葉が出ない

カオリも言葉を失っている


「ハーネスはその村の出身じゃないのか?」

「ああ、私はその後流れて来た戦士だ、今は生き残った集落の用心棒をしている」

「メイファンはハンターをやめてどうしてメイドを?ハンターの方が儲かるだろ?」

「も、もう怖いアル、人が死ぬのをたくさん見ちゃったアル・・・」

「俺を見て怯えてたのは何でなの?」

「スイッチだと知られたくなかったアル、もうスイッチには関わりたくないアル」


・・・メイファンだけはドラゴン退治に反対だったそうだ

だが他の4人はそれを押し切って討伐に出かけた

その頃の4人は自分達は何でも出来ると浮かれてたらしい

メイファンも渋々付いて行く

そして1人死んで、3人は逃げてしまった


「普段は王宮で勤めているアル、闘技大会の時だけ闘技場に派遣されるアル」

「そこでスイッチの俺に会ってしまったと」

「選手控室のメイドは頑なに断っていたアル、VIPルームは王族や貴族様しか使わないアル、もう関わる事は無いと思っていたアル」

「俺がスイッチってどうして気づいたの?」

「前回大会を見たアル、スイッチとしか思えなかったアル」

「まあそうか、さてカオリ、これをどうやって片付けるんだ?」

「え・・・えええ、ど、どうしよう」

「・・・別に、お前達が墓の代金を払ってくれてもいいんだぞ」

「ヘンリー、さすがにそれは八つ当たりだろう、そのスイッチというのもにわかに信じがたいのだが、この2人は関係無いだろう」

「『俺達はスイッチだから大丈夫だ』、散々止めたのに、確かにあの時のリーダーがそう言ったんだ・・・せめて立派な墓でも作って供養してやらないと報われないじゃないか!」

「この2人が墓の代金を払ってくれれば、お前の怒りは収まるのか?」

「・・・・・・」


収まらないだろう

焼け石に水だ

どのみちやり切れない思いが残るだろう


お金を払ってやるくらいは簡単だ

いくらだか知らないけど俺に払えない金額じゃないだろう

だがそれでは根本は解決しない


「逃げたハンター達の事を国には言ったのか?メイファンはよく王宮に雇って貰えたな」

「言ったさ、だが取り合ってくれなかった、辺境の村の事まで目が行き届かないのが現状だからな、その女も罪には問われなかった」

「・・・ごめんなさいアル、一生かかってでも代償は支払い続けるアル」

「ちなみに、いくら必要なんだ?」

「・・・全員に立派な墓を作るつもりだ、その女が2年で120万払ったがまだ1000万以上足りない」

「うーん、手持ちが足りないけどカオリが優勝したら840万手に入るから何とかなるか」

「ちょ、ちょっとタカネ」

「これは本来俺が背負うべきものでは無い」

「え?」

「そうだぞ、ヘンリーの言う事を気にする事は無い」

「ふん、何も出来ないなら最初から出て来るな」

「私が背負うべき罪アル、忘れてくださいアル」

「でも俺もその逃げた奴らが許せないな」

「た、タカネ」

「どうするというんだ?」

「贖罪させる、メイファン一人に押し付けて知らん顔ってのが許せない」

「でもどうやって見つけるの?」

「簡単だよ、ハンター登録証は各国共通だ」

「あ・・・そっか」

「どこに行ったって使用履歴が残るだろ、個人情報ダダ漏れのこの世界で教えて貰えない訳が無い」

「・・・3人を捕まえて来てくれるのか?」

「ああ、それでヘンリーの気が済むとも思えないが」

「・・・それでも、それでもだ、妻と子の墓の前で土下座でもさせなければ気が済まない」

「解った、それは俺が責任を持ってやらせよう、泣いて許しを請うくらいでないと反省にならないだろう」

「・・・可能なのか?」

「メイファン、お前はそれでいいか?元々は仲間だし情もあるかもしれないが」

「3人を反省させるのは必要な事だと思うアル、でないと村人達の魂が浮かばれないアル」

「そうか、じゃあ明日はVIPルームの世話を頼むよ、色々話を聞きたいしな」

「わ、解りました、でも巻き込んでしまった事は申し訳ないアル・・・」


まあ仕方ないよ

最初にこの2人助けちゃったしな

これも何かの縁だったのだろう


「俺はタカネ、ピエトロのタカネだ、その前はホメロスに居た」

「・・・スイッチで間違いないんだな?」

「ああ、だが口外はやめて欲しい、スイッチが巻き起こす弊害に気付いたから大陸20位も返上したんだ」

「・・・呪われた力という事か」

「ヘンリーやめろ」

「いや、あながち間違っていないよ、歴代の魔王はおそらくすべてスイッチだ」

「な、なんだと?」

「だから俺は静かに暮らしたい、俺を魔王にしたくなければ今回の件が終わった後はそっとしておいてほしい」

「・・・解った」

「ヘンリー、私は何が何やら」

「スイッチの事は今後一切口にするなという事だ、ドラゴンに余計な刺激を加えたハンター達のようになりたくなければ」

「弊害を起こしてしまうという事か、理屈は解った」


2人は集落に帰るらしい

俺は大会が終わったら3人を探しに行こう

懺悔をさせる為に


「3人を連れてくるためにはペガサスの馬車も必要だな、カオリ、優勝しろよ」

「ええ?クリスティに頼めばいいでしょ?」

「まあお前が駄目ならいったんピエトロに帰ってそうするけど」

「だ、駄目って・・・駄目では無いよ、わ、解った、絶対優勝するもんね」

「頼んだぞ」


自分のやった事の後始末も出来ないようなやつに容赦は要らない

スイッチだと名乗った挙句の体たらくだ

100人以上死なせておいて今頃どんな生活をしてるのか?

それを忘れて幸せに生きてようもんなら・・・

笑う事すら許してはいけない気がする


罪は償わせる

俺は久しぶりに怒りに燃えた

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