085 応援初日
次の日、剣技大会観戦に行く
「なんちゅう部屋だ」
ユーメリアの闘技場のVIPルームはすこし高い場所に会った
20畳ほどの部屋になっている
ベランダに出れば試合が見れるし、奥に入ればゆったりソファでくつろげる
「今回は格安なんですよ?本大会では予選で50万、決勝トーナメントで200万は値段の付く部屋です」
「メイドちゃんまで付いて来るとはね」
VIPルームはメイドちゃん2人付き
いたれりつくせりだな
「私ここで待機しようかなー」
「係員が呼びに来るの大変だろ、控室行けよカオリ」
「ぶー」
「カオリ、そろそろ行かなくては」
「サテン、カオリの事をよろしくな」
「任せてください」
カオリ、サテン、メアリー、シオンは選手控室へ
「ムスタング大人しくしてるんだぞ」
「ケーン」
「では早速観戦しましょうぞ」
「ミヤビさんは残るんだね」
「話し相手くらい欲しいでござろう?」
「まあそうかも・・・紅茶でも貰おうかな」
「はい、すぐにご用意します」
「メイドちゃん、名前は?」
「リオナです」
「・・・メイファンです」
お、おや?
メイファン?
よく見るとアジア系だ
モジモジして顔を反らそうとしてるな
「メイファン、失礼ですよお客様に向かって」
「ご、ごめんなさいアル」
「その変な語尾もやめなさいといってるでしょう?」
「す、すみません」
絶対中国人だな
で、たぶんスイッチだ
あの国にも善人が・・・おっとそれは偏見だ
良く解らんけど俺の顔を見ようとしない
スイッチがメイドか・・・
まあ自由だけどさ
「メイファン?紅茶が出来上がりました、タカネ様の元にお持ちして」
「は、はい」
震える手でテーブルにカップを置くメイファン
まだ新米なのかな
動きがぎこちない
「でもタカネ様、不躾な質問かも知れませんが、せっかく前回20位になられたのにどうして返上されたのですか?」
リオナに聞かれた
ああ、俺の事知ってるんだ
「前回もメイファンと一緒にこちらの席で国外のVIP様と拝見させて頂きました」
・・・メイファンもか
じゃあ俺やミヤビさんの事もスイッチだと解ってるって事だろうか
「私には重すぎる肩書きだったんだよ、背負うには覚悟が足りてなかったんだと思う」
「ニンニン、20傑ともなれば、色んなしがらみが舞い込んでくるでござるからなあ」
「まあ、20傑様もいろいろあるんですね」
ミヤビさんが助け舟を出してくれた
ガシャン!
「まあメイファン何をしてるんですか?」
「ご、ごめんなさいアル」
「こんなにお湯をこぼしてしまって・・・お客様申し訳ありません、メイファン掃除道具を取りに行きますよ」
「は、はい」
2人は出てった
・・・・・・
「どう思う?ミヤビさん」
「明らかにタカネ殿に怯えておりますな」
「俺に?」
「時々男言葉になるから怖いのではないですかな?はっはっは」
おっとまたやっちまった
ミヤビさんも俺が元男だって知らない
しかし何で俺に怯えているんだろうか
「中国人に恨まれるような事したっけ」
「不思議ですな、なぜメイドのような仕事をしてるのかも」
「自分の素性を隠したいみたいだけど」
「だったら名前も変えておけばいいでござる」
「スイッチに会うなんて思ってなかっただけかも」
おっと戻って来た
理由は解んないけど可愛そうだしあまり刺激するのはやめよう
さて、じゃあ試合見るか
今回も3試合同時にやるんだな
―――カオリが一試合目負けた
「怪我したのか?!」
「た、タカネ、骨をやっちゃったかも」
「相手のクルセイド人、無茶苦茶な力だったでござる」
カオリの一試合目はいきなり優勝候補のクルセイド人だった
褐色の筋肉隆々の大男
体ほどの大きさの大剣を両手で縦横無尽に振り回し、盾で受けようとしたカオリの手首を折った
丈夫なスイッチ持ちの体なのに・・・
俺とミヤビさんはVIP席のベランダから飛び出し、試合場でうずくまっていたカオリに近づく
「タカネ、再生の杖を・・・」
「あ、ああ、やってみるか」
「乱入は困ります!すぐに試合場から出てください!」
「取りあえず試合場から出よう」
カオリを抱きかかえ、控室へ
腕だから抱きかかえる必要は無いのだが
でもカオリも大人しく身を任せる
おっと、俺は付きそいじゃないから控室には行けないのか
じゃあ廊下で治すぞ
係員が来た
「怪我をしたならヒーラーに見せてください、貴方達は部外者ですよね?」
「すいません、私もヒーラーなので・・・」
「・・・貴方、確か前回優勝の」
「すぐ終わりますんで」
再生の杖を持ち、カオリの手首へ
うーん、すごい腫れてるな、痛々しい
勝手が解らないがくっ付けと念じる
おお、黄色い光がカオリの手首を包んでいく
・・・腫れが引いて行くな
「どうだ?カオリ」
「・・・痛くなくなった」
「本当か?」
「は、腫れが引いた・・・」
「すごい杖でござるな」
「・・・・・・あ!早く出てください!ここは関係者以外立ち入り禁止です!」
係員に怒られた
今回は大目に見てもらったけど、次やったら闘技場出禁だって
VIPルームに戻るか
おっと、賭けの券売所を見つけた
そういや買ってなかったっけ
「ミヤビさんは買ったの?」
「賭けはやらないでござる」
「俺は義理でカオリに10万賭けておくか」
カオリは84倍だった
随分低い評価だな
「その姉ちゃんは今負けただろ?怪我もしたみたいだしな」
券売所のおっさんがそう教えてくれた
負けて倍率上がったのか
逆にクルセイド人は下がったらしい
まあいいや、カオリに10万
カオリが優勝してくれれば840万か
これで応援に身が入るぜ
VIPルームに向かう
「お二人とも、試合場に急に飛び出して危険では無いですか」
「ごめんリオナ、もうしないから」
「お連れ様の怪我は大丈夫だったんですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「それなら良かったです」
いやはや、慌てちゃった
反省反省
「なるほど、再生の杖でござるか」
「うん、カオリ達がダンジョンで見つけたんだ」
「骨折と腫れを治すとはすごいでござる」
そうか、腫れも普通は治せないのか
腰痛とかも回復魔法じゃ無理だったもんな
この杖なら治せるみたいだ
「しかし、会場で使わなくて良かったでござる、そんな物を使ったら目立つでござるよ」
「・・・十分目立っちゃった」
「何の為に20位を返上したのでござるか」
「ミヤビさんだって付いてきたじゃん」
「むう、忍びとして不用意でござった」
「お二人とも、大人しくご観覧ください」
「「はーい」」
やれやれ、しかしいきなり負けたか
カオリの精神的ダメージは大丈夫だろうか
「お、あれが拙者の弟子で我が国の代表でござるよ」
「な・・・なんだありゃ」
間違いなくスイッチだ
なぜなら星条旗の柄のビキニを着ているから
もろアメリカ人のカウボーイハット金髪エロスタイルの露出美女が出て来た
「聞くまでも無いけど」
「そうでござる、彼女は忍びなのに隠す事をしないでござる」
「アメリカ人っぽいね」
・・・武器は木刀か
構えが忍者と言うより侍に見えるが
試合が始まった
素早く動き、相手をかく乱するエロくノ一
おや、ビキニの間から何か出したな
手裏剣か?
相手に向かって3つ投げる
相手は避けようとするが、手裏剣が曲がった
相手の肩と腰に当たる
「曲がったね、木の手裏剣だから軽いのかな」
「いや、彼女は手裏剣を・・・なんでもないでござる」
ミヤビさんが思わず口走りそうになったな
能力なのかもしれない
俺の魔法みたいに追尾できるのかも
エロくノ一が更に手裏剣を3つ投げた
相手は盾で1つは弾いたが、残りの2つは当たったな
これで攻撃が4つ当たった
勝負ありだ
パチパチパチ
客席に投げキッスで答えるエロくノ一
「彼女名前は?」
「レベッカでござる」
「まだ粗削りだね」
「そうなのでござる、雑な部分を治せばもっと強くなれるのでござるが」
そこそこは強いがミヤビさんには遠く及ばない
あ、ユーメリアのオカマ王子だ
おお?結構テクニック重視なんだな
相手の攻撃をいなしながら、確実に攻撃を入れていく
3発入った
大技が一つも無い
ジャブだけで勝ったと言う感じ
む、隣で試合やってるヤツ強いな
黒ずくめのイケメン
会場から黄色い声が上がっている
一瞬で相手を倒し、クールに去って行く
うーん、あれはモテるだろうな
「彼はリビエラの代表でござる、拙者は彼が優勝候補だと思うでござる」
リビエラ?どっかで聞いたな
「知り合いなの?」
「直接は知らないでござる、でも彼は17位になった事があるでござる、怪我をしたので前回の本大会では不調でござったが」
ふうん、骨でも折ったのだろうか
今回は万全みたいだな
あ!カオリが出て来た
これが2試合目
大丈夫かな
速攻で勝って戻って行くカオリ
良かった、引きずってないようだ
結局カオリは初日3勝1敗だった
クルセイド人、黒イケメン、オカマ王子は全勝だったな
レベッカは1敗してしまった
後ホメロスの代表は知らない人だった
ワッツさんもハインツさんも辞退したのかな
3位4位のハインツパーティメンバーでもなかった
みんな辞退したのかも知れない
だからホメロス代表は0勝5敗、もう駄目だろうな
「今日はありがとうな、リオナ、メイファン」
「また明日もお待ちしております」
「・・・お、お疲れさまでした」
メイファンの様子は相変わらずおかしいが、指摘しても可愛そうだ
気付かないふりして帰ろう
「カオリ、お疲れさん」
「タカネ、特訓してよ」
「んん?疲れてないのか?」
「力が足りない事が解ったから疲れなんて気にしてられない、どのみちこのままだと優勝は出来ないと思う」
「・・・解った」
取りあえずホテルに戻る
中庭を借りて、カオリと実戦稽古
「盾に集中し過ぎだ、こっちのフェイントで盾がグラついてる」
「クルセイド人の攻撃を盾で受けるのは不可能かな?」
「でっかい剣だったからな、中心で受けても手首に衝撃来るんじゃないか?」
「すこしズレちゃったんだよね、それで手首砕かれちゃった」
「無理に受けなくても、避けれないほど早かったのか?」
「ううん、避けれない事は無いけど・・・でも弾くことが出来れば大きく隙が出来るでしょ?」
カオリはあくまで相手の攻撃を盾で受けたいようだ
・・・明日練習用の大剣買って来るかな
それで練習すれば少しは・・・
「タカネ、カオリ、夕食は食べないんですか?」
「食べるよサテン、カオリ、まだやりたいなら夕食の後にしよう」
「うん、寝かせないからね」
「深夜はさすがに迷惑だからやれないよ」
「タカネ遅いら、先に食べてるら」
「お前は当然のように居るな」
「拙者、向こうの部屋で食べて来るでござる」
「ミヤビさんもご飯食べる時くらい頭巾取ればいいのに」
「カオリ、10万賭けたからな、お前が勝つと840万だ」
「ええ?カオリそんなに倍率高いの?」
「メアリーが賭けた時は50倍くらいだったら」
「俺が買ったのは1回戦負けた後だったからな」
「むうう、それでも50倍かぁ」
「メアリーは1000アランしか賭けれなかったら、貧乏ら」
「シオンはエリーゼに頼まれてカオリ様に10万買いましたわ」
「おお、カオリに10万とは思い切ったな」
「どーゆー意味よ、タカネも私の優勝を信じて10万賭けてくれたんでしょう?」
「願掛けみたいなもんだよ」
本当は義理だけどね
優勝出来なくても気にすんなよ
「決勝トーナメントに出て、あのクルセイド人にリベンジするんだ」
「同じリーグだから決勝まで行かないともう当たらないんじゃないかな」
「ああ、そうなるのかな?向こうが負けないと良いけど」
カオリは勝つ気満々かよ
まだまだ強い奴はいたぞ
油断するなよ
ご飯を食べ、迷惑にならないギリギリの時間までカオリをしごく
見物客も出て来たな、宿泊客もヒマなのかな
集中を切らさず、真剣に取り組むカオリ
「カオリ、そろそろ風呂に入って寝よう」
「はぁ、はぁ、解った、もう遅いもんね」
部屋に戻り再生の杖を出す
「腫れが引くのならあるいは・・・」
カオリに再生の杖をかざす
「ああ・・・筋肉の疲れが取れていくよ」
「うーむ、すごいなこの杖」
カオリの疲れが完全に抜けた
「風呂上がりに筋トレもしたい」
「どうぞ」
「タカネも付き合うんだよ」
「はいはい」
せっかく疲れを抜いてあげたのに元気になったらこれだ
明日の朝また再生の杖を使ってやるか
あ!再生の杖があれば俺のマッサージが必要なくなるじゃん
でも筋トレの後カオリが求めて来たからしてあげた
ビクンビクン弓なりに仰け反っては跳ねまくるカオリの体
最終的に失神したので俺も寝た