082 過去
次の日、宝石店に行って頼んであった5カラット魔法石のブレスレットを取って来る
「ほらカオリ、出来上がったぞ」
「あ、ありがとうタカネ・・・ちゃん」
うわあ気持ち悪い!
まだカオリの様子がおかしいな
チラチラ上目遣いで俺のご機嫌伺うなよ
「カオリ、冬眠明けのドラゴンが出たらしいら、討伐隊を募集してるら」
「え?うーん、行こうっかな」
「サテンも行こうと思ってます」
「んん?心配だなぁ、俺も見学に行こう」
「メアリーも見にいくらー」
ハンター組合に行く
サテンとカオリが討伐隊に参加
俺とクリスティとメアリーは見学
討伐隊の後を着いて行く
「カオリ様、ボーっとしてますが大丈夫でしょうか?」
「うーん、ちょっとショックを与えちゃったんだよな」
「精神不安定ら、難しい言葉を使ってみたら」
「うーん、困ったなぁ」
サテンもカオリも魔法石を付けてなかった
今日は心配だから付けて欲しかったけど・・・
あ、ドラゴンだ
街の近くに出たんだな
討伐隊が広がり、ドラゴンを囲む
今日は8人のパーティか
サテンが壁を出し、いきなりひっくり返す事に成功
ハンター達が一斉に飛びかかる
・・・カオリの動きが悪い
あ、他のハンターとぶつかった
危ない、ドラゴンが起き上がるぞ
危うく潰されそうになるカオリ
サテンが咄嗟に壁でガードした
「ひどいですね」
「いつものカオリじゃないら」
「・・・・・・」
ドラゴンがブレスを吐こうとする
その目の前にサテンが壁を出す
炎が跳ね返りドラゴンもびっくり後ずさる
サテンの成長が凄いな
カオリが足を引っ張ってるが、魔法使いが居るとこんなに安定するんだな
徐々にドラゴンを追い詰めていく
む、ドラゴンがサテンを狙ってるな
体を回転させ尻尾がサテンを襲う
それをまた壁でガード
今のはギリギリだった
危ない危ない
カオリが背中を攻撃する
弾かれる
狙う位置も悪いし力の入れ方も・・・
焦るカオリ
イカン、止めを狙うが早すぎる
手柄を焦りすぎだ
ドラゴンになぎ飛ばされる
け、怪我は無いか?
起き上がった、大丈夫か
はあ、これはマジで深刻だな
うーん、俺のせいだよな
どうしたもんか
そうこうしてるうちに討伐が終わった
ドラゴンを倒し、健闘を称え合うハンター達
その輪の中にカオリは入って行けない
回りが気を使って声を掛けるが、カオリは項垂れたままだ
「カオリ、こないだは俺が悪かったよ、元気出してくれ」
「う、ううん、私が調子に乗ってて」
「それはあるけど俺が言い過ぎたよ、変な国に行った後だったからイライラしてさ」
「ご、ごめんね?変な国に行かせて」
「い、いや、そうじゃなくてさ」
フォロー失敗
ボソッ「私が元気づけておきますよ」
「すまんなサテン、俺はこういうの向いてないかもしれない」
「タカネにはドラゴンを運んでもらえると有り難いんですが」
「ん?ああ、解った」
「目立つような事をさせてごめんなさい、でもみんな期待してるみたいで」
ああ、以前運ぶとこ見せちゃったからな
俺がついて来ちゃったんだししょうがないよ
ドラゴン引きずって首都ランバートへ
メアリーがドラゴンの上に乗りやっつけたぞーみたいな顔してる
駄目だぞメアリー
ハンター組合の前にドラゴンを置き、先に帰ろう
前もそうだったけど分け前期待してるみたいに思われるの嫌だからな
メアリー帰るぞ
ああ、この後ハンター業なの?
じゃあ俺とクリスティだけ帰る
家に帰ると内政官バルディさんが来てた
ジルは隠れてるか?
自分が居ない時に来られるとヒヤヒヤするなあ
「山の雪も大分解けて来た、そろそろ壁を解除して貰いたい」
「解りました」
「今年は雪崩の被害者が0だった、これもタカネ殿のお陰だよ」
「それは良かった」
「橋も未だに消えない、新しい橋も作ったのだが無駄だったかな」
俺が作った橋の横に人が通れるくらいのせまい橋作ってたんだよな
縄の吊り橋で渡るの怖そうだった
「冬前に急いで作ったからな、だが石や木で作るには谷が深すぎる」
となると吊り橋しかないんだな
取りあえず壁を消しに行くか
バルディさんは帰って行った
消すだけだから俺一人で行った方が早い
現場に行って壁を消す
日陰にもなってしまうから消すには丁度良い時期だと思う
おお、ここ雪崩起きてたみたいだな
大きく壁に寄りかかって雪が固まっていた
一応心配なので雪の塊を火の玉の魔法で破壊
それを延々7か所繰り返す
結局結構時間かかっちゃった
「タカネ様、遅かったですね」
「ああクリスティ、結構手間取ったよ、変わりは無いか?」
「サテン様とカオリ様が帰って来てカオリ様は部屋に閉じこもってしまいました」
「うーん・・・」
「サテン、カオリは相変わらずか?」
「はい、タカネに怒鳴られたのがよっぽどショックだったようです」
「そうか、それに関しては弁解のしようもない」
「いえ、それにしたって引きずりすぎのような」
「・・・何かトラウマでもあるのかな」
「トラウマですか、昔怒鳴られて怖い思いしたとかでしょうか」
どうなんだろうか
デリケートな部分だからほじくるのもな
取り越し苦労の可能性も高いし
だが少し話してみるか
部屋に入れてくれるかなぁ
コンコン「カオリ、入っていいか?」
「・・・いいよ」
ガチャ「カオリ、原因は俺だが今のままでは・・・」
「うん、どうしちゃったんだろね、自分が嫌になるよ」
「せっかくピエトロの代表になれたんだからさ」
「うん・・・このままじゃ不甲斐ない結果になっちゃうね」
「どうすればもとに戻る?それが解れば苦労しないのかも知れないけど」
「・・・急にポッカリ穴が開いちゃったみたいになったんだよね、代表になれて、順風満帆で満足しちゃってたのかも、そこでタカネに怒鳴られて調子に乗ってる自分に気が付いて・・・」
「頑張ってたのも知ってるぞ、少しでも強くなりたいって鍛錬を怠らなかったじゃないか、地方大会で圧倒的だったのも順当な物だと思うよ」
「それだってタカネの指輪のお陰だよ、それを忘れて私ったら図々しい事ばっかり」
「うーん、それはあるけどさ」
「タカネに甘えすぎてたんだろね、私、元の世界では遠慮や気づかいばかりしてたのに・・・」
「そうだったのか」
「見る影も無いでしょ?・・・聞いてくれる?」
カオリが語りだす
カオリは元の世界では体が弱かった
何時の頃からか入退院を繰り返すようになり家族は「またか」と思うようになる
入院しても母親が3日に一回来るだけ
それでもカオリは家族が来ない方が気が楽だった
足を運ばせるのも申し訳なく思うようになってた
家族に迷惑をかけてばかりで内向的で遠慮がちな性格になってしまったらしい
そんな入院中のある時、カオリの容態が急変してしまう
カオリには心当たりがあった
担当の看護婦さんが休み、いつもとは違う人
点滴の薬がいつもとは違う気がした
しかしカオリは言えなかった
忙しそうな空気を出す看護婦に声を掛けることが出来なかった
その後の記憶は無い
転移してしまったという事は死んでしまったのだろう
看護婦を恨んではいない
お陰で丈夫な体を手に入れる事が出来た
家族に迷惑をかける事が無くなったのだから
「・・・・・・」
「私は良かったと思ってる、人生やり直す事が出来たし、頼りになる仲間も出来たし」
「でも、不条理を感じずにはいられないよ」
「その分今は人より優遇されてるもの、幸福だと思わないと罰が当たるよ」
「・・・そうかもな」
「それでもタカネに対してはダイヤだからズルいって気持ちがあったんだと思う、だから負担かけてたと思う」
「俺も口では嫌がっても心の底から嫌だって訳じゃ」
「ううん、そういう負担の積み重ねがタカネを追い詰めていくんだと思う、それがホメロスを出る事になり、20傑を返上させる結果になったんだと思う」
「・・・全然知らない人からかけられる負担と、仲間からかけられる負担は違うよ」
「じゃあ、カオリはこれからもタカネに甘えても良いの?」
「構わないよ」
「家族ですらカオリを見捨てたのに?」
「構わないよ、国から迷惑をかけられるのは嫌だけど、カオリやサテンからかけられる迷惑くらいは受け止めるよ」
「・・・良いのかな」
「俺だってホメロスを出る結果になった時迷惑かけたと思ってるもの、お互い様だと思うよ」
「・・・・・・」
「まだなんか引っかかってるか?」
「ううん、早速なんだけどさ」
あ、やな予感がする
「せ、せっかく5カラットのブレスレットも作った事だし、トレーニングしようよ」
「・・・いいけど」
「出来れば裸で」
「なんでだよ」
「あ、甘えて良いって言ったじゃない!」
「必然性が無いだろうが!」
「汗かくんだから脱いでた方が合理的でしょ!」
「胸がボヨンボヨン動くんだから邪魔だよ!」
「うう、タカネのバカ、ウソツキ」チラッ
「ウソ泣きじゃねーか、様子伺うなよ」
「もう!言う事聞いてくれないならグレるからね」
「どんな脅しだよw」
「まあまあ、口では嫌って言っておきながらタカネもカオリちゃんの裸を堪能したいんでしょ?」
「うーん、そりゃ俺も元男だから女の裸見るの好きだけどさ」
「お風呂ではよく見えないでしょ?今ならカオリのいつもは見せない部分まで・・・」
「しょうがないな」
その後、カオリとトレーニングをした
肌と肌が密着した綿密なトレーニング
トレーニング後のマッサージも綿密にしてあげた
ネチネチと筋肉の疲れを揉みほぐしてあげる
カオリは身悶え、顔が上気し潤んだ目で俺を見つめて来る
ビクンビクンしてたけど頑張りすぎて攣っちゃったのかな
「サーテン♡」
「ま、まあカオリ、すっかり元気になって」
「明日からまた頑張らないと、大会もあるし」
「サテンも協力しますからね」
「本当?じゃあタカネと2人でカオリを後ろから前から・・・」
「おい、やめろ」
取りあえず元に戻ったからいいか
やれやれ、どうなるかと思った
「タカネ、正直なところどうかな?カオリは優勝できると思う?」
「そうだな、まずミヤビさんが来たらどうしたもんかな」
「動きがはやくて見失うんだっけ?」
「そう、俺は察知能力でなんとかなったけど・・・」
「カオリは盾で防ごうかと思ってるんだけど」
「クナイを6本防ぎきれれば勝機があるかもな」
「後、クルセイド人はどうなの?」
「あれは解んないな、振り下ろしの速さが凄かったけど・・・」
「あっさり終わらせちゃったもんね」
「まあ心配なのはこの2人くらいだよ、他は正直カオリほど強くないと思う」
「ユーメリアの王子も強かったよ、タカネは見てないんだっけ」
ああ、ミヤビさんに負けたんだっけ
俺は控室に居て見ていない
「他の人も油断しないよ」
「そうだな、新しい強敵が来るかもしれないしな」
「タカネ、特訓に付き合ってよ」
「解った」
トレーニングにも真剣に取り組むカオリ
優勝させてやりたいけどな
相手がある話だ、トレーニングに付き合ってやるくらいしか出来ない
「この、トロピカルレインボースラッシュが決まれば」
「そのダサい技名はやめようよ」
「カッコいいのに!」
頑張れよカオリ
応援してるからな