077 杖
今日も朝からサテン達はダンジョンに向かう
おや、ダンジョンの前にハンターが居る
昨日アダマンタイトを見つけたもんだから、便乗ハンターが乗り込んで来たみたい
「地下6階の骸骨は何だありゃ」
ああ、スケルトンに会ったのか
「強すぎだろ、殺されなかったから良かったけど」
「へえ、じゃあ何度でも挑戦出来るのか?」
ハンターたちの声が聞こえてくる
・・・私達はどうなのだろう
昨日倒しきったけど、今日また1から戦わなければならないのだろうか
「5人で部屋に入ったら、骸骨が一斉にかかって来た」
それはルール違反だからね
「でも、地下6階までまったくモンスターが居なかったぞ、いつの間に・・・」
ハンターたちの声を尻目にダンジョンに入る
一気に地下6階へ
「ちょっと渋滞してるじゃない!」
カオリが悲鳴をあげる
地下6階の階段の部屋に20人ほどハンターがたむろしていた
「ひい」
声がした方を見る
スケルトンがハンターに剣を向けていた
あれは1体目のスケルトンだったような・・・
剣を引くスケルトン
腰が抜け、逃げ戻って来るハンター
「なんだよ、誰も勝てないじゃないか」
「強すぎだろ、どうなってんだ」
「殺されないだけマシだよ、いつか抜けて見せるからな」
・・・・・・
「お姉ちゃんたち、挑戦するのかい?」
「いえ、私達は・・・」
どうなるのだろう
あ、カオリが部屋に入ってしまった
スケルトンが道を開ける
・・・私達は通っていいのか
「おいおいどういうことだ?」
「あ、あの女について行けば・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
他のハンター達が部屋に入る
途端にスケルトン達に囲まれる
「ど、どうなってんだ!」
「私達は昨日突破したんです、皆さんは倒してないので駄目なんだと思います」
「え?えええ?」
スケルトン達に威圧されるハンター達を尻目にサテンとクリスティとジルもカオリの後を追う
「左右の部屋にはもう何もありません、私達はお先に地下7階を見て来ますね」
呆気にとられるハンター達
頑張ってね
地下7階
「でたー、ドラゴンだよー」
「この時期は冬眠するのでは無かったのですか?」
「例外も居るんじゃない?ダンジョンの中って一年中温度が一定だし」
降りてすぐの部屋にドラゴンが居た
それも2匹
「眠りの笛で、動きをニブらせる事は出来ますが」
「でも2匹だよ?行けるのかな」
「サテンはドラゴン初めてなんですが・・・」
「じ、ジルもです」
ジルはすごく震えてる
見た目がすごく怖いからだろう
「遠距離はブレスが当たらない場所からペチペチ撃ってくれればいいから」
「時々突進してくるので注意してください」
「後、尻尾が思ってるより長いから振りかぶったら注意ね」
「え?挑むことになってませんか?」
「え?行かないの?」
クリスティとカオリはやっつける派
サテンとジルはどうしようと悩みたい年頃
「こ、ここは慎重に」
「じゃあ1匹ずつにする?壁で閉じ込めてよ」
「カオリは何でそんなに強気なんですか?1匹しかやっつけた事無いクセに」
「い、1匹でもやっつけた事あるし!あれからどんどん強くなって指輪もあるんだから大丈夫だよ」
確かにそうかもしれないが・・・
あ、ドラゴンに気付かれた
「ヤバイ!ブレスを吐くよ!通路から出ないと!」
4人は慌てて通路を出る
戻れば階段の部屋だが炎がどこまで届くか解らない
逃げ場のない通路ではこちらが不利だ
間一髪、炎がサテンの脇を通る
熱い、こんなものに包まれたらひとたまりもないだろう
仕方ない、体勢を整え戦わなくては
え?ジルが腰抜けてる
取りあえず一匹をを壁で囲もうとする
でかい、サテンの出せる壁ではギリギリじゃないか?
手前の1匹を囲むように壁が出た
尻尾まで収まらないな、ドラゴンが前のめりのような恰好で壁が出来上がる
滑るようにドラゴンが壁の中へ
うわ暴れてる、壁壊れないかな、すごく怖い・・・
カオリとクリスティがもう一匹の元へ走って行った
「ジルさん、大丈夫ですか?」
「す、すみません、ドラゴンが炎を吐きましたが、酸素は大丈夫なのでしょうか?」
・・・忘れてた
あまりドラゴンに炎を吐かせ過ぎるのはマズいかも知れない
「カオリ!クリスティさん!炎で酸素が無くなります!気を付けて!」
おっともうドラゴンを追い詰めていた
クリスティの一撃一撃で大きく弱って行くのが解る
カオリも負けてない
背中に渾身の力で深手を負わせる
すでに時間の問題だ
サテンもフォローしよう
ドラゴンの右前脚と右後ろ脚の下から壁を出す
ひっくり返るドラゴン
腹を出したところをカオリとクリスティが攻撃
あっと言う間に息絶えた
「ふう、ナイスサテン」
「ドラゴンってひっくり返るとモロいんですね」
「もう一匹どうします?」
天井を塞ぎ忘れた
まだ生きている
「練習として・・・ッ!」
奥の通路からまたドラゴンが出て来た
炎を吐くドラゴン
カオリとクリスティが走る
仕方ない私達も走ろう
「ジルさん、立てますか?」
「は、はい、なんとか」
「射程距離ギリギリからで良いので攻撃してください」
「はい!」
2人共走る
だがジルはすぐに止まり、魔法の準備を始めた
サテンの方が射程距離が短いのだ、ジルよりも近づかなくては
前の二人がドラゴンに到達する
睨みあう
サテンの横を氷の魔法が飛んでいく
ドラゴンは避けた
だが隙が出来たのだろう、クリスティが攻撃
ドラゴンが唸りを上げる
サテンも射程距離に入った
またドラゴンの下から壁を出そうとする
あ、避けられた
すぐに壁をしまう
前の2人の邪魔になってはいけない
弓を構えるサテン
ドラゴンの目を狙う
一撃で当てた
もう片方も・・・
当てた!ついてるな
しかしドラゴンが暴れ出してしまった
なりふり構わず炎を吐くドラゴン
前の二人は止めようと必死に攻撃
さらに拍車をかけ炎を吐くドラゴン
こ、困ったなぁ
一瞬動きが止まった
サテンが壁を出す
転がるドラゴン
カオリとクリスティが腹を攻撃
「きゃあ!」
え?後ろから声がした
横の通路からドラゴンが出てきている!
ど、どうしよう
ジルが地面に手を突きながらこっちへ走って来た
と、取りあえず壁に閉じ込め・・・
ジルに向かって突進してくるドラゴン
駄目だ動きが早くて囲めない
取りあえず1枚の壁を出し、ドラゴンをぶつける
ドシーンと大きな音が洞窟内にこだまする
「ジルさん!大丈夫ですか」
「はあっはあっ、な、なんとか」
『大丈夫ー?』
カオリ達の方を見る
ドラゴンはやっつけたのか
じゃあすぐこっちに来てほしい
壁の横からドラゴンが顔を出した
炎を吐くドラゴン
や、やめて
今もなお、空気は減り続けてるのではないだろうか
いきなり呼吸困難になるのではないか
見えない恐怖がサテン達を襲う
カオリとクリスティが走って来た
サテン達を追い越しドラゴンに向かう
壁を消してやる
ドラゴンの全貌が見えた
躊躇せず襲い掛かるカオリとクリスティ
サテンも壁を出して転ばせようとするが、クリスティとカオリとのタイミングが合わない
タイミングを間違えると邪魔をするだけになってしまいそう
ああ、最初に壁に閉じ込めたドラゴンが出ようとしている
長い尻尾を立たせて出れるのかな
天井塞いでおくんだった
ここからじゃもう届かない
目の前のドラゴンに弓を放つ
脇に上手く刺さった
柔らかそうな場所を狙い、弓を撃ち続ける
ジルも氷の魔法を撃つ
当たってる、ドラゴンの動きが鈍ってる
カオリとクリスティは渾身の力で攻撃し続ける
む、ドラゴンの目に力が入った
怒りだ、2人共気を付けて
ドラゴンが体を振り回し、尻尾を大きく振るう
カオリがモロに当たった
転がるカオリ
しかし体勢を直しすぐにドラゴンに向かい走って行く
怪我は無かったようだ
クリスティが心臓を突いた
3匹目のドラゴンが息絶えていく
じゃあ、次のドラゴンをやっつけなくては
壁から出てしまったドラゴンを見てうんざりする
はあっ、はあっ
この呼吸の荒さは疲れによる物なのか、呼吸困難による物なのか
不気味な恐怖が今の4人を襲っている
ドラゴンがブレスを噴く体勢に入った
そうはさせるかとカオリとクリスティが走り出す
ジルも氷の魔法を撃つ
ドラゴンは魔法を避ける為にブレスを吐くのをやめた
カオリとクリスティが襲い掛かる
サテンも走るが動きが鈍い
疲れてるのか空気が薄いのか
はあっ、はあっ
射程距離に入って一呼吸
慎重にドラゴンの下から壁を出した
転がるドラゴン
前の2人が鬼の形相で飛びかかる
ドラゴンの腹をめった刺しだ
渾身の力で
すべての力を持ってして
息絶えるドラゴン
はあっ、はあっ、や、やったか
我に返り回りを見回す
もうドラゴンは出てこないか?
大丈夫だ
皆に怪我は無いか?
見たところ大きな怪我は無い
「と、取りあえず戻りましょう!」
4人は地下6階へ戻った
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「サテン達無茶してないかなー」
「ダンジョンをガンガン進んで今頃ドラゴンと戦ってるら」
「んなバカな」
クリスティは1人でドラゴン倒せるけど時間かかるからな
いくら指輪があるとは言え・・・
カオリだって1回倒した事があるだけだ
それも12人でだったし
サテンはドラゴン倒した事無いし、4人でそんな無茶しないだろ
「みんな成長著しいから今頃ドラゴンを真っ二つらー」
「メアリーも頑張れ、ほれ腕立て100回な」
「ら、ら~」
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「はあっ、はあっ、み、皆さん大丈夫ですか?」
「よ・・・4連戦はきつかったね」
「笛を吹く暇が無くてすみません」
「しょ、しょうがないです」
階段を上り、地下6階に戻った
近くで剣の音がしてるな
誰かがスケルトンと戦ってるのか
クリスティ以外はバタンキューだ
床に寝転がり、息を整えてる
「ああ、疲れたよー」
「あっと言う間に体力が底をつきました・・・」
「どうしましょう?」
「クリスティの心配は空気なんですが」
「どうだったのかな?薄くなってた?」
「解りません、色々余裕がありませんでした」
もう一回戻って確かめるか?
・・・元気が無い
「クリスティが見て来ましょうか?ドラゴンの素材も剥ぎ取らないと」
「ああ、それがあったかー」
「一人では行かせられません」
もうちょっと休ませて
冷たい床が気持ちいい
息が落ち着くまで待ってほしい
結論から言うと地下7階はドラゴンだらけだった
15匹くらい1部屋にいる場所もあり、断念せざるを得なかった
クリスティですら無理だと判断したのだ
なんとか7部屋だけ回り、宝箱を一個だけゲットした
中には妙な杖が入っていた
「残念ですが諦めましょう」
「そうだね、カオリは満足したよ」
「クリスティもです」
「ジルはとっくに満足してました」
財宝も十分すぎるくらいに手に入った
どこまで続いてるか解らないダンジョンに飽きてきたというのもある
制覇出来なかったが満足だ
もっと強くなって、機会があったらまた来よう
さあ組合に行って杖を鑑定に出してみよう
「2億8千万です」
「・・・え?」
「2億8千万です」
受付のお姉さんは淡々という
ええ?2億8千万?
何がどうして
「再生の杖です、回復魔法が使えない者でも回復魔法が使えます、更に、従来の回復魔法では治せない骨折治療も出来ます」
「た、タカネでも無理な骨折治療を・・・?」
「伝説の杖ですよ、ダンジョンで一番の宝物かも知れません」
『・・・・・・』
ハンター組合を出る
「十分だね、うん」
「はい、十分です」
「満足です」
「早くタカネ様に会いたいです」
ついでにペガサスの馬車をクリスティに呼んで貰った
明日到着し、帰るのは明後日になるらしい
一日休んでピエトロに帰ろう
ドラゴンも倒せたし、皆の経験にもなった
とても有意義な旅だったとしよう